白き優しさと歪みの血
桜河「・・・さてと、それじゃあ、いってらっしゃい」
「自分のしたい事、ぜーんぶやり遂げちゃって!」
キリマ「・・・はい!」
・・・・・・
他に誰も存在できないはずの、赤い空間。
だがそこに、1つの存在が現れる。
重複自我でなくとも、その元の存在だからこそ、それは現れた。
キリマ「……ホント、奇跡的だよね」
「でもさ、進んじゃったからには、もう戻らないって決めてるんだ」
「……初めましてかな?もう1人の私」
「いや……ベナープナクス」
ベナープナクスは、キリマの存在に驚きを隠せなかった。
ベナープナクス「・・・は?もう1人の・・・私?」
キリマ「・・・まあ、貴方は覚えてるかどうかわかんないけど・・・」
「…私はね、貴方を止めるって約束してるんだ」
「勿論、私にはどういう記憶が貴方にあるかなんてわからないんだけど…」
「でも、これだけは言える…」
「貴方のその力の使い方、絶対に間違ってるから」
ベナープナクス「・・・くだらない」
「貴方が何を言っているのか理解できない」
「・・・もし、仮に貴方が私のもう1人だとしても」
「分かるでしょ?救えない力なんて存在価値がない!」
キリマ「そんな事は・・・ないよ」
「それに…貴方は…復讐を抱いていい存在じゃない…」
「これ以上、貴方に誰も殺させない!」
「弱い存在が許せないなら、私に勝ってみせなさいってね!」
ベナープナクス「・・・ぷっ、あっはははははっ!!!」
「貴方如きが、私に勝つ?」
「身の程知らずも良いところ、出来るものなら来ればいい」
「己の無意味さを知るといい!」
「どれだけ力を持っていようと、愚かで、無力」
「意味のない力なんて、存在するだけ無駄にすぎない」
「ただ1つ、守護者の不在を除いて」
「我が身は、根幹たる犠戦の如く・・・怒涛の全衛者の命」
「ベナープナクス、そう・・・私の言葉は、ベナープナクス」
キリマ「っと・・・!」
キリマは攻撃をよけ、空中から狙いを定める。
「私は貴方と、同じなんだからね!」
ベナープナクス「・・・同じ、か」
「でも、それでも救えなかった!」
「そんなものはもう、不要に近い!」
「私が直々に、切り落としたっていいの!」
キリマは剣先を受け止め、受け流しの要領で相手の首筋に指を一突き入れる。
キリマ「違うよ!あなたはきっと、結果しか見れていない!」
「それにあの子は、そんなアナタなんか見たくないはずだよ!」
ベナープナクス「ぐっ・・・ううっ・・・!」
「うるさいっ・・・!何が分かる!?」
「救えなかった結果は変わる事などない!」
「勝手に代弁をするなよっ・・・!偽物如きが・・・!」
キリマ「…どちらから見ても、偽物だとは思うけどね」
「でも私は…死ぬわけにはいかないよ」
「私が死んだら、貴方を救う人が誰もいなくなるのと同じ」
「結果だけが全てじゃない!未来を見る事が、一番大切なんだから!」
ベナープナクス「・・・私を救う・・・?貴方に?」
「それに、貴方以外に私を救う存在がいない・・・?」
「知れた事・・・別に貴方に救ってもらおうとは思わない!」
「真に力を持つ存在こそが、全てを救う証になるんだっ!」
「貴方はここで・・・殺す!」
キリマ「…そんな事、させない!」
「ここで全部・・・出し切るから!」
「それに・・・その血に汚れた剣も似合わないよ!没収!」
剣先を指で掴み上げ、相手が動く前に剣を投げ捨て去った。
ベナープナクス「なっ・・・!?」
「チッ・・・無駄なことを・・・!」
「そこまで言うなら、私自身が貴方を葬るまで・・・!」
「そして、お前の言う救いを全て・・・否定する!」
キリマ「…私が貴方を救えなくても、貴方は救われるべき存在」
「もう貴方のせいで、失われた世界や命は戻らないけど…」
「でも、貴方は良い心までは失わなかった…ここに私がいる事が、何よりの証拠」
「欠けたまま後悔するのは…良くない」
ベナープナクス「戯言を・・・!」
「後悔など、とっくに・・・!」
キリマ「だから私が思う、貴方を本当の意味で救う方法・・・」
「それは、決して貴方を消させない・・・」
「そして、私と元通り1つになる事・・・だよ」
ベナープナクス「・・・なん、だと・・・?」
「それで何になる・・・!私は・・・!」
キリマ「元に戻って、例え私が消えていても、貴方は苦しみから解放される」
「だから信じて、私達は元は同じ・・・他の人も同じ、1人の人間だよ!」
ベナープナクス「_______」
ベナープナクスが膝から崩れ落ちた。
「私は…こんな、私は…」
「お前は…意味を…見出してくれるのか…?」
キリマ「勿論!」
「例え1人でも2人でも、私が守ってあげるから!」
ベナープナクス「・・・そう、か・・・」
「お前は・・・本当に・・・」
「あの時の私に・・・そっくりだ・・・」




