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想定外

お久しぶりです。

久々に投稿させて頂きます。


 まあ予感はしていた。そろそろ本格的に乗り込んでくる頃だとは思っていたが、いざそういう報せが入るとキツいなと思う他ない。


「こりゃあっちは散々なことになりそうだなぁ? ……せっかく立てた作戦も散々だが。ともかくこれで俺達がここを守れば? あんたらは完全敗北だぜ? おぉ?」


「クソが……」


 しかし実際、カイアの居ないこちらもこちらで数で圧されて侵攻作戦は難航しているように感じられた。具体的な打開策が浮かばなければどうしようもない。情報がこっちの強みではなかったのか、今すぐロタ辺りに連絡を取らなければ。


「まあそういうワケだからなぁ。残念だがあんたとの勝負はお預けで、俺は殲滅を重視することにするぜ」


「逃すか……!」


「おぉっと動くなよ? こいつがお前を貫くぜ」


「どっちかって言えば焼くっすけどね」


「うるせぇな、言ってみたかっただけだってのよ……」


 はぁぁ、と大きなため息を吐いて奴は翻り退いていく。助かったといえば助かったが、このままではあちらもこちらも壊滅しかねない。とりあえず団長と合流せねば。

 私は各種ポーションを使い、体勢をなるべく万全にしてからどこか風の荒れ狂うその中心を目指して進む。


「団長……!」


 相変わらず団長は例の技を連発しているようで、MPが切れたら味方が援護してポーション使う隙を作ってはまた攻撃しているらしく完全にサイクルシステムが出来上がっていた。


「クアイか、ごめんなちょっと今手も目も離せないんだ」


「わかってます……それより……カイアが……」


「聞いてるよ。早くこっちをなんとかして応援に駆けつけたい所だが……っ、まだか」


 後ろからではわからないが口調からしてだいぶ苦い顔をしていることだろう。策略的にも部下を心配する気持ち的にも早く片付けたい、そういう思いがひしひしと伝わってくる。

 だが最後にぼそっと聞こえた、『まだか』とはなんだろうか。すると団長は私が疑問に思って黙っているのを察してか、ソレについて話し始める。


「いやな、また彼らだよ。どっからどうやってるかはわからないが拠点内部の様子や構造の解析が完了したらしくてな、さっき腕の立つ奴ら二人に潜り込ませた所だ」


 それはまたあのロタ達の支援だった。

 少し遅いかなと思うぐらいのタイミングではあったが、だいたいこういうのが知れること自体普通でないのだからそう考えれば都合の良過ぎることこの上ない。ありがたい限りである。


「そんなだからクアイ、もうちょっと頑張ってくれ」


 ローゴゥとのタイマンで気力やらポーションやらを持ってかれたが、まだまだこんなんじゃへこたれていられない。


「あとそうだ、ここがある程度片付いたと思ったらもう片方の状況次第で応援を回すからそのつもりで頼む」


「ん……」


 そう言って団長は例の攻撃サイクルに再度集中し始めた。私はそこいらの味方の背後を突く兵を殴り飛ばして、冷えかけていた身体が再び暖かくなっていくのを感じつつ敵兵狩りを再開するのだった。


 しかし事態は予想とはまた少し違った方向へ急変することとなる。


 暫く一心不乱に雑魚共を蹴散らし、兵達がカイアの動向を囁くのを耳にする度に焦っていた所だ。グォォォォ、と何か分厚い壁越しに聞く鈍い爆発音のような轟音が辺りに響いた。その音に誰もが一旦戦闘を止めてその出処を聴き探る。


「やった、のか……?」


 そんな中、私は直感的に団長の送った二人が奴らの拠点を攻略して見事に石像を破壊したのだと、見遣らずともこの音はそれによる拠点の組み換えから来るものだと理解した。瞬間、どっと来る疲れや緊張からの解放で気が緩みそうになるが寸での所で抑えてちょっとの達成感だけ味わい、即座に次のことを考え始めようとする。

 だが私はその前に、辺りの様子がおかしいことに気づいた。


「いやいや、おいおいこりゃ」


「どうなってんだよ?」


 敵兵だけならまだしも、一部の味方まで狼狽える様子に違和感を覚えたのだ。団長の指示を知らない奴らでも拠点制圧が完了したのであれば満場一致で歓声を上げるでもするハズだ。それをしないということは?


「は……」


 嫌な予感がして徐ろに振り向けばそのワケが理解できた。拠点のあった場所には瓦礫の山が積み上がり、既にそれぞれエフェクトとなって散り始めていた。


「自壊、か……」


 自壊は持ち主らによって手を掛けられた拠点の最期の仕事である。私とてこの目で見たのは片手で数える程度だが、その迫力さ故に何があったのかはすぐに理解できた。


「でも……どうして……?」


 最期の仕事と言うからには当然ながら大きな意味合いがあるもので、多くの場合は『拠点を奪われるぐらいなら全て失くしてしまおう』といった意図から行われる。


 しかしこの状況だ。相手方も特に圧されていたワケでもなく、寧ろ私達が若干劣勢であったのに自壊に至ったのは疑問だった。では団長が送った二人はどうだと問いたくなるだろうが、腕が立つと言えど内部構造を知り得た程度で相手をそこまで気持ち的に追い込めるだろうか?


 二人がひっそりと隙を突いて石像を破壊するならわかるが、敵が二人を認めた上で守りきれないと判断し自ら破壊するような状況など普通なら考えられない。

 実力のある二人でも配置されているであろう警備兵の数で圧されればだいぶ辛くなる。皆が皆、団長やユズのようにぶっ壊れではないのだから、多数が少数に押し負けて『このままでは拠点が奪われる……ならば!』というように判断せざるを得ない状況に陥るのは稀有なのだ。


 長くなったが、要はあちらが多数で押し切って撃退するかこちらが隙を突いて拠点を奪うか、その二つのどちらかしか普通は有り得ないのである。

 そうでないのは、潜入に気づけたにもかかわらず慢心が原因で石像の部屋に割かれていた人員が不足していて守りきれないと即座に判断したとか色々考えられるがどれも違う気がした。何故だかよくわからないが何かが引っかかるのだ。


「おい、おいクアイ」


「んひゃっ……ん、団長……」


 思考の沼に浸かっていると、ふとすぐ目の前から声を掛けられた。随分と深みに嵌っていたものだから柄でもない声が出てしまった。正直かなり恥ずかしい。

 が、至極真面目な表情の団長を見て気を取り直す。


「お前のことだからなんでこんなことになったんだか考えてんだろ? でもまだ戦いは続いてるんだ。原因を探るのはいいがとりあえずそれは後だ」


 そうだった。相手の拠点は消えたものの、こちらとしても奪うことはできなかったのだから大きくアドを取れたワケではないのだ。まったく、こんなことをしている場合じゃないのに私の悪い癖ったらもう……。


 そうやって伏し目がちになりながらも残存兵の片付けに急ぐ。

 この前と違って、拠点はどういう意図があってか無くなってしまったので敵兵を捕らえるにしてもそう多くは捕まえられない。この後副団長達の方に加勢するから人員が避けないというのもある。なのでやることは変わらず、混乱する敵を倒して倒して倒しまくって手っ取り早くあちらに向かえるようにするのみ。

 さっさとここをどうにかして支援に向かわなければ、今も圧倒的戦力で押しているであろうカイアに副団長達は蹂躙され、そのままの勢いで本拠点に攻め込まれかねないからな。


「はぁ……そろそろ……っ!」


 残当狩りも程々に、頃合いかと思えた所でピコンと戦場に似合わない軽快な通知音が鳴った。団長からのメッセージだ。


「やっと……?」


 応援に向かえる。そう思って次の作戦内容を読み上げる……が、そこに記されていたのはまた別の、更なる緊急性を含んだものだった。

 要約すれば、「カイア対応部隊は撤退必至だから総員本拠点で防衛に回れ」とのこと。


「ヤツにはそこまでの……」


 これはつまり、副団長やユズハープ、その他猛者達を含んだ大部隊でもカイアやその物量部隊には真っ向からじゃ適わない、少なくともまともな対策を取らねばどうしようもないということで、今後の行動に大きな影響を与えることになる。口惜しくもあの浮遊砲台使いの言う通り、散々なことになってしまった。


 ここから団長はどうするつもりなんだろうか。言い知れぬ不安に苛まれながら、急ぎ帰還する味方部隊の流れに乗る。

 副団長の方に間に合わないどころか本拠点の防衛にも……ということにはしたくないと焦る気持ちから、誰よりも早く帰還しようとステータス以上の力を出すつもりで拠点へと走り出す。


 暫く定期的に投稿します。

 一応、次章(幕間?)も次々章も並行して書いており、またそれとは別で、もしできたらちょっとした話を投稿してみたいなと思っています。

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