15 この計画は遂行できずに終わってしまう
「あなたには魔法使いの血が流れていると思うわ。莉央」
そう言うと今度は、花音のほうを見る。
「私は花音です。手に触れたものから情報を視ることができます。例えば、ここにある花びんを触ると、どんな人がお花をいけたのか、場合によってはこの花びんを作った職人の思いなども分かります」
「すごいわね。じゃあ、殺人があってその場に凶器が落ちていれば、それを触ると犯人が見えるってこと?」
「はっきりと犯人の顔が見える場合もあるかもしれませんが、その殺された場面が見えたりもするかと。いろいろあります」
「あなたは?」
ロザリオはそう言いうと、次におりかを見る。
「私は空間に絵を描くことができます」
「空間に絵?」
「説明が難しいので、今実際に描いてみます。ロザリオさま、部屋の一部だけ少しの時間でいいので結界を解除していただけますか」
おりかはそう言うと、持っていたバックから『ぶるーとす』を取り出した。
ロザリオが部屋の中央を指さし、その一部分だけ結界を消す。
するとおりかが部屋の中に階段を描きはじめた。
そして、その階段をのぼったりおりたりしてみせた。
「すごいわ。すごい! 初めて見たわ、こんな魔法みたいな能力。描いたものを実体化することができるのね」
「描いたものにもよりますが、数分から数時間で消えてしまいます。実体化できるのは、この『ぶるーとす』で描いたものだけです」
太陽が真上にあがる時間になってきたようで、部屋の中にさし込む光が短くなってきた。
そこにしばし沈黙が広がる。
ロザリオはなにかを考えながらじっと三人を見ている。
そして少しの間のあとに言った。
「この能力だけで、宮殿内にギャロファーを置けると? そして再び持ち帰れると? 無謀だわ」
「無謀ですか……」
花音ががっかりした口調でつぶやいたが、ひと呼吸おき続けた。
その口調は熱をおび、必死さが漂っていた。
「でも無謀でもなんでも、石、ギャロファーを私たちがなんとかしないと、世界は滅んでしまうんです。リフォアナもグラダナスさまも必死でした。なんとかしないと、アルデウス王国も滅んでしまうんですよ。
私だって最初はこんな話、嘘かと思いました。でも、実際にラウラレ界にもアルデウス王国にも来ているし。ラウラレ界の人たちが石には触れられないってなんなのですか……って感じです。ダメすぎです。それと、困った時にアルデウス王国に直接連絡できないっていうのもなんなのですか。このシステム」
「直接連絡できないのは不思議で、わたくしも国王に聞いたことがあるのです。そしたら、太古からの決まりでどうすることもできないって」
ロザリオが困ったようにこたえる。
花音はロザリオから目を背け、手をひざの上に置いて下をじっと見ている。
するとおりかが立ち上がって、ロザリオに聞いた。
「私たちの話を信じていただけますか」
「……信じるわ」
三人は顔を見合わせうなずき合う。
「ただ、どうやってこの計画を遂行するのか、考え直さないといけないわ。あなたたちやグラダナスさまが思っているより、宮殿の警備は厳しいし、渡り人への警戒も強いのよ。それに、この話、わたくしは信じるけれど、だからといって国王にこのことが知られてしまうのは、アルデウス王国とラウラレ界のこれまでの関係にひびが入る恐れがある。極秘で進めないと。あなたたち三人とわたくしとで進めないと……」
「協力してくれるのですか?」
おりかが両手でロザリオの手をとって聞いた。
ロザリオはおりかの問いには答えず言った。
「このままだと多分この計画は遂行できずに終わり、国が亡ぶわ。なんとしても成功させないと。それと……。ギャロファーはわたくしが定期的に運んでいるの。それが関係しているとなると、わたくしにも責任があるわ。盗まれるなんて、わたくし以外にこの国からラウラレ界へ忍び込んでいる者がいるとでもいうのかしら。そんなことあり得ないわ。そこも調べないと」
ロザリオの言葉を聞いていた三人は、こそこそと話をし始めお互いにうなずき合うと、おりかが言った。
「ロザリオさま、リフォアナと話をしていただけませんか。結界の中では無理なのですが、このライフでラウラレ界のリフォアナと話をすることができるのです」
ロザリオは一瞬驚いた表情になったが、「分かったわ」と言うとセイラを呼んだ。
「セイラ、地下の無限の間を開けて」
「かしこまりました」




