閑話 ギギラ/バベル
本日更新ラストです。
宜しくお願い致します。
アルカイダ国境線近くの小屋の中、俺はとある研究資料を読み漁っていた。
「…………だめだ。さっぱりわからねぇ」
頭のおかしい研究者の作成した資料は専門用語だらけで読めたものではなかった。
まるで太古の文献を復元しながら暗号を解読していく様な、そんな訳の分からない例えをしてしまう位には疲れ切っていた。
そんな中、小屋の扉から誰かが入ってきた音がした。
音のデカさからして十中八九バルガだろう。
「うぃ~す。来たぜー」
「いや遅ぇよ、何処ほっつき歩いてやがった。スクリューからここまでお前なら一瞬で来れただろ」
「いや偶にはゆっくり歩いて向かおうって気になってなぁ。ま、細かいことは気にすんなよ。禿るぞ」
ふぅ~~~~、と長い溜息一つ。
馬鹿と言い争っても時間の無駄だ。ただでさえこんな小屋で二日も待たされたんだ。用事だけでもさっさと済ませる。
「まさか腕まで鈍ってねえよな」
「当たり前だろ。俺を誰だと思ってんだ」
お前だから心配なんだ、とは言わずに心の中にしまっておく。
とはいえこいつに実力があるのは分かっている。控えめに言っても少々腕が鈍った程度では負ける姿が想像できない。
だが今回は万全でないと困る。
「今回は失敗できねえからな。俺の命も危うくなるかもしれねえんだから心配になって当然だ」
「今回は双剣の勇者の殺害だろ? しかも息子の方」
「実力的には楽勝だろうが、イレギュラーはつきものだ。気を付けろよ」
「あれ、お前この間なんか失敗してなかったっけ?」
……落ち着け、切れるな。冷静になれ。
こいつはいちいち他人を貶すようなことは言わないはずだ。きっとこの発言も天然ゆえのことに違いない。
天然の煽りが一番ムカつく気もするが、口に出すようなことじゃあない。
「そのこともあって気使ってんだ。そのイレギュラーがアルカイダに向かった可能性もなくは無い」
「了解了解っと。まぁ今の俺は機嫌がいいからな、ちゃんと聞いてたから安心しろ」
「……ハァ。それで珍しく機嫌がいいお前に何があったんだ」
「いや、アナスタシアにそっくりな奴がいた。結局別人だったんだが、思いのほか強くてな。振られてしまったが、久々に心が躍ったよ」
アナスタシア。
またその名前を聞くことになるとは思わなかった。
二年前に死亡した、目の前の男によって殺されたのがアナスタシアであり、《進化》の勇者の娘だ。
死体を回収してアンデットにしたのはバベルには知らせていない。そういう指示だったし、伝える必要もない。
だがしかし、このタイミングは偶然か?
ツクモ__ドクターが死んで、アナスタシアの死体は行方不明となっていた。
確か”氷獄龍”の細胞が使われていた素体だったはず。
俺自身あの素体は失敗作とされていた資料を目にしたことがあるため、良くて再利用、最悪廃棄されているものだと考えていた。
ドクターの研究資料を回収するため各地の研究施設を回ったがそれらしきものは見当たらなかった。
そんなイレギュラーの塊のような存在が、スクリューの街付近にいたかもしれない。
そういえばハイテ村の一件、近くに研究施設が一つあった。
もしそこに奴がいたとしたら。
そのままハイテ村に向かい、アンデットの群れを倒したのだろうか。
……取り敢えず土蜘蛛の奴に目ぼしいやつを殺して回るよう言っておいた。
殺せるようならそれでよし。
もしあのレベルの奴がやられるようなら……
「どうした? また考え事か?」
「なんでもない。やることが増えただけだ。このままアルカイダの戦闘区域付近まで送る。準備はいいか」
「いつでもこいや」
……溜息が止まらない。
どうしてこうなってしまったのだろうか。狂ったのはドクターが死んだからか、元から破綻していたのか。
いつになったら私の願いは叶うのか。今はもう神ですら信用ならない。
「全人類が幸福に包まれねぇーかなーー」
「おお、珍しい。お前がそんな楽しそうなこと言うとは雪でも降るんじゃねえのか?」
「だからイレギュラーの話はやめろや」
くだらない。
本当にくだらない関係だ。
俺もこいつも、お互いの目的なんて知りやしない。
他人の願いには興味がない、自分本位の最低な人間同士。
「行くぞ」
ランタンの灯を消し、スキルを発動した。
山小屋の一室は闇に包まれ、最低な人間二人も闇に溶けて消えた。
二章終了です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
引き続き書いていきますが、また少し時間空きます!すみません!
良ければ評価、ブクマ等お願いします。
既に評価、ブクマ等してくださった方々、ここまで読んでくれた方々に感謝です。
ちょっと展開が駆け足で物足りなかったかもしれませんが!それでは!




