閑話 ギギラ/クロウ
閑話入ります。
誤字脱字、誤用などありましたら申し訳ありません。
宜しくお願い致します。
大陸の端、文字通りの最果てに近い場所に位置する小さな村。
なくなっても誰も気づかないような規模の村の様子を観察する。
村人たちはいたって普通、子供たちが駆け回る光景は正しく平和そのものだ。
とてもアンデットの軍勢に襲われた村とは思えない。
イラつきに舌打ち一つ。
奴らは恐らく直前でひよったに違いない。
臆病者どもに発破をかけるため、俺は魔法を発動する。
目を閉じて、行きたい場所を思い浮かべるだけでいい。それだけで目の前の景色は変わり、転移が完了する。
《転移魔法》それが俺のスキル、願いの形。
降り立ったのは崖下の洞窟、小悪党の住処。
面倒だが洞窟を歩いて進む。
だが野盗達は誰もいない。呼んでも誰も答えない。
俺の声だけがむなしく洞窟内に反響するだけだった。
「持ち逃げされたか……?」
奴らに渡した三種の魔道具。どれも効果は一級品で買い手はいくらでもいる。
だが奴らは俺の能力を知っている。知っていて逃げられると考えたのか?
それとも裏切り者でも出て追っている最中なのか。
「ん……?」
洞窟の最奥部、少し狭いだけだった空間。そこは以前に訪れた時と違っていた。
「血痕……」
ハエが鬱陶しいが仕方ない、壁に取り付けられた手錠を検分する。
手錠は元々古いものを使っていたのだろう、潮風にさらされていたのか少し錆びている。
そして手錠には手首付近の肉だろうか、輪の内側に肉片がこびり付いている。
肉の腐り具合からして三日前、丁度俺が去ったあとに、何者かがここに運び込まれ拘束されていたのだろう。
奴らは何者かをここに拘束した。ことを起こしたということは魔道具を持ち逃げする気は無かったのか?
逃げるだけなら殺したとしても海に投げ捨ててしまえばそれで終わり。
洞窟の最奥まで運び拘束しておく意味はない。
第一野盗が逃げているところを村人が目撃したとしても何の問題もない。
「……」
再び目を閉じ転移を発動する。
転移先はバルガに魔道具を渡した森の開けた場所。
保険の魔道具を他の奴らに隠れて受け取るため、バルガに指定された場所だ。
「ここにもまた血痕かよ。……洞窟に拘束されていた奴の血痕か? この出血量じゃ助からねぇ、とすると……ここで殺されたやつはアンデット化した状態であの場所に繋がれていた?」
アンデットを拘束しておく理由……、村の襲撃時に利用したのか?
いや、魔道具の実験か? アンデット除けの魔道具の効果を試したかったのかもしれない。
転移で森の入り口まで移動し、何か痕跡が残っていないか周囲を探る。
あまり期待していなかった俺の予想に反して、目の前には大きな痕跡が残っていた。
「地面が、割れている……?」
地面の亀裂を辿ると、そこには大規模な破壊痕が見て取れた。
わかりづらいが注意深く草原を観察すると、血痕が広範囲にわたって落ちていることが分かる。
そして決定的だったのが、地面に落ちている金属の破片だ。
その金属片はバルガに渡した、アンデットを召喚する魔道具の破片だった。
「確定か」
いる。
此方が用意した斥候用と本丸用、合計二万と五百体のアンデットを全滅させた手練れが確実にいる。
それも村に一切の被害を出さずに、野盗ごと全滅させた化け物が。
「まじかぁ……しかも死体の一つも残ってないのはどういうこった? 大損じゃねぇか」
……仕方ない、撤収だ。
正直アンデット達を全滅させた奴の正体を探りたいが、村に潜入して罠にでも掛かったら面倒くさい。それに強者がいるのなら別の国へ移ればいい、俺のスキルならどんな手練れでも追いつけない。
「残念、次に期待しよう」
俺は目を閉じ、次の目的地へ飛んだ。
*
「……行ったか」
ブラックドッグさんが村を出た翌日、俺は森に狩りに出ていた。
色々なことが起こったばかりなので、狩りの基礎を復習するために森の入り口付近で、罠を使用して狩りを行っていた。
草陰に身を潜めていると、忘れもしない、あの時バルガと密会していた仮面の男が急に現れた。
父さんが死ぬ原因を作った奴らの一人。
正直今すぐ突貫して、悪趣味な仮面ごとぶん殴ってやりたい。
だけどもし相手がこのまま去ろうとしていたら、俺が手を出すことによって村の皆にも被害が及ぶかもしれない。
狩りの時と同様、気配を消し、じっと待つ。
男は先日のブラックドックさんが残した戦闘の痕跡を確認し、何か考えているようだったが、暫くすると項垂れて何処かへ消えてしまった。
俺は狩りを中断して村へ戻る。
そしてそのまま平静を装って村長の元へ、丁度サラクさんもいたので、さっきの仮面の男について伝える。
「来やがったか」
「あきらめて帰っていった様子でしたけど、気を抜かない方がいいと思います」
「そうだな、敵は一瞬で移動できる術を持つ。警戒するに越した事は無いだろう」
「一応村の皆に、怪しいやつにあの人の情報を出さねぇように言っとくよ。それと無暗に手を出す前に戦える奴に報告が行くようにしておこう」
話が終わり、これからすべきことについて考えながら家に帰る。
仮面の男の問題が片付けばようやく、長かった戦いが終わる。
そしていつもの日常がやって来る。
そう考えると、これは終わりではなく始まりであるとも考えられる。
またいつか。
あの人は去り際にそう言っていた。
もう会うことは無いかもしれない。だが、だからと言ってこのままの自分ではいられない。
駆け付けると啖呵を切っておいて、情けない弱い自分のままではいられない。
「強くなる」
猟師としても、戦士としても。
村の皆を守れる位、そしてあの人の力になれるように。
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