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選ばれぬ王、選ばれし愛  作者: りむ
イラスト
37/39

2-6


唐側の申請により、反乱軍を討伐すべく私とエシン、そして突厥の軍と共に洛陽を目指す。


洛陽では、安禄山が新たに燕の皇帝を名乗り、新政府を立ち上げていた。


洛陽は長安の西側の方角にある都市で、長安の次に大きな都市である。

通常であれば、シルクロードの上で重要な貿易都市として栄え、様々な貿易品や文化が花開いていた場所である。


蜀に逃げた天宝帝は成都という山に囲まれた都市に落ち延び、天宝帝の第三子、皇太子である粛宗しゅくそうが父を皇帝の座から降ろし自らを正統な後継者として、新たな皇帝となった。


齢45の新たな皇帝はエシンに援軍を申し出たその人である。

天宝帝は粛宗の手により隠居、幽閉されこの後表舞台から降ろされる。


かつての唐の栄華はここで終わり、戦乱の時代へと変わっていく。


洛陽にはマーフヴァルドも居るはずである。

長安を打ち滅ぼそうとする勢力の中にいる。砂の国の者達を束ね軍として活動していた。


洛陽に近づくほど通る村々は焼かれ道に脇に死体が増えていく。


安禄山の軍は略奪や虐殺を行っていた。

この乱によりかなりの数の人達が減り、長安や洛陽はゴーストタウンとなっていた。


アルプに跨り、通る道や村の惨状に言葉を失う。


「酷い…民達を苦しめる必要があるの…?」

「安禄山に大義名分など無いに等しいだろう。連れている軍の人間達にたいした報酬を渡せないとなれば、略奪するしかないんだ。こんな事した所で、大切な民が居なければ長く続く訳がない!」


エシンは吐き捨てる様に言う

隣をエシンが馬に乗りながら並ぶ。


ただ自らの地位を強固にするために反乱起こした。

そこに国のためなど微塵も考えていない。


地獄のような光景に体が震える。

この光景を起こしている1人にあなたもいるの…?


考えたく無いことが頭によぎる。


一刻も早く民達のためにもこの争いを終わらせないと!

チェンシーは手綱を握る手を強く握った。


半日程後、チェンシー達は洛陽にたどり着く。


想像通り都は焼かれ、民達は焼け出されていた。その中を安禄山が率いている、多民族で形成された軍がいた。

漢人だけでなく、騎馬民族を中心に様々な民族がいた。

彼らは帝への忠誠心はなく、実戦経験に富んだ集団である。

そのため平和な世であった漢人の政府軍は彼らに勝てずにいた。


忠誠心が無いからこそ、略奪も平気で行うような者達である。


だが、新たに占拠した洛陽で宴でもしていた軍の者達は酒に酔い寝ているものもいる様子から統率が取れていない。


そこに隙を見たエシン達は一気に軍を推し進めた!


「一気に攻めるぞ!!安禄山を打ち倒す!」


突厥の統率のとれた動きは、彼らを翻弄し倒していく。


―おかしい、あまりにも弱い。


洛陽を落とせた者達にして、動きが悪い。

チェンシーは弓で応戦しながら考えた。


兵士たちの人種を見るに砂の国のもの達がいない。


強い違和感を感じながらアルプを走らせていると、


前方にある集団がいた。


甲冑を見に付け、突厥人達の攻撃を防いでいた。身なりからして、反乱軍の人間の中でも上位のものに見えた。


齢20代後半の男は酷く怯えた顔をしながら家臣達に守られている。


「あの者は…?みんな待って!」

チェンシーは突厥軍の者の攻撃をやめさせ近づいた。


「あなた、反乱軍の指揮者ね。今すぐ降伏し投降しなさい!」

弓を構えながら男の目を見る。


「…投降した所でお前達は俺達を殺すだろう!!帝に楯突いたんだからな!」


男は震えながら剣を構えている。


「もう見ての通り、洛陽は私達の手に落ちます。無駄な抵抗をやめれば命まで取りません」


チェンシーは弓を向けるのやめる。


出来るならば命まで取りたく無い。それにこの洛陽の状況を知りたいと考えていた。


「殿下……」

家臣の1人が男に声を掛けた。

周りは突厥人に囲まれていた。逃げる手段もない。


「くそ…ここまでか!」

男は剣を地面に捨てた。


「…では拘束して。身分を名乗りなさい。」

男と家臣達の手足を紐で拘束させる。


「…俺は安慶緒あんけいしょだ。…安禄山の息子だ」

男は項垂れながら名乗った。

「息子ですって!?」

あまりにも要人を守るには家臣の数が少ない。

よく見るとみな身なりがボロボロである。


そこにエシンが馬に乗りながら駆け寄る。


「チェンシー!あまり離れるな!…それよりこいつらは?」

エシンに事情を伝えた。


「先程、城の内部に潜入した所…安禄山の死体があった。俺達が攻め込む前の物だ。お前がやったのか?」

エシンが安慶緒に尋ねる。


「……そうだ。父はおかしくなっていた…!燕の皇帝になった後、急に目が見えなくなり暴力的になった…!」

安慶緒は青い顔で震えながら話す。


「俺に対して酷く暴力を振るったり、次代の王を俺にすると言っていたのに急に弟にすると言い出したり…!…民達を捕まえて拷問までかけて楽しみ出したんだ!このままではせっかく建てた燕もおかしくなると思い殺した!」


その後の統率が取れていない反乱軍のあり様が分かった。

この若い王では、この軍を統率出来ず崩壊し掛けていたのだろう。

そこに私達がやってきたのだ。


安禄山のまさかの死に驚く。

まさか身内に殺されているとは思っていなかった。


「でも何故急におかしくなったのかしら?」

「…砂の国の代表者と合流してからだ…」

「砂の国の代表者!もしかして金髪で青い瞳の人!?」

チェンシーは安慶緒に近づき尋ねる。


「そんな身なりだったと思う。とにかく恐ろしく殺気だっていた。」


「反乱軍の中に砂の国のもの達が居ないわ!彼らはどこに行ったの?」

「…長安だ。」


洛陽を捨て置き長安に向かった!

長安を滅ぼすつもりなんだわ!


「そんな…!」

「こっちはお前達を囮にしたって事か!すぐに向かおう!」

エシンが突厥軍の者達を集めだす。


どんなに急いでも馬で3日ほど掛かる。

間に合うのかわからない。

このままでは長安にいる人々が危ないと感じた。


「長安には、至徳帝(粛宗)がいる!急ぐぞ!コイツらは近くの都で拘束させる…連れて行け!」


エシンが家臣に伝え連行していった。


止めなければ!虐殺などさせない!

チェンシーは流行る気持ちを抑えられずにいた。




現実では、粛宗が頼ったのは突厥ではなく突厥を弱らしていた回鶻というのちのウイグル族となります。

この時、突厥はウイグル族に主権が変わっております。

後の唐は、外国勢力に頼ったり宦官を優遇した為その後続く皇帝は力を失い粛清の嵐となります……。

唐が滅んだ後、五代十国時代という非常に不安定な時代に繋がっていきます。

唐の時代は長く289年続きましたが、最後は血生臭い終わり方となります。




フィクションですので細かいことは無視でお願いします。


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