第87話 嫉妬
本日二話目の投稿です
いきなりどこかへ消えたレイが戻ってきたことで、お茶会メンバーの視線は彼女に集中する。
息を切らして席に着く彼女に、ハルは頬杖を突きながら尋ねる。
「どこ行ってたんだ?」
「少々、戯れを」
答えにならない答えを返すレイに、ハルはそれ以上踏む込もうとせず潔く引き下がる。
「そう」
「はい」
どこか嬉しそうに笑うレイに、ティアナは不思議そうに首を傾げる。
アルフは興味な下げに振る舞いながらも、視線だけはレイに注がれていた。
「ブレアさんは?」
レイは周囲を見回しながら、4人に尋ねる。
グラナートに続き、ブレアに用事があると告げるレイに、アルフは怪訝そうな顔をし、ハルはピクリ、と肩を揺らす。
「さっき食堂へ戻ったばかりよ?」
男2人の反応を気にすることなく、テレサは食堂を指さしながらレイへと笑いかける。
雰囲気が随分柔らかくなったレイに、ティアナとテレサは安堵したように笑う。
「ハル達押さえとくから、行ってきたら?」
「なんで俺が邪魔する前提なんだよ」
ハルの肩を叩くティアナに、ハルは紅茶を零しそうになりながら吠える。
言い争いを始める2人を見つめるレイの肩を、テレサは優しく叩く。
「ほら、今のうちに」
「はい、ありがとうございます」
顔全体を使って嬉しさを表現するレイに、テレサは釣られて微笑む。
食堂へと消えるレイの方へ視線を投げながら、ハルは首を傾げた。
「あいつ、自分から人に関わるタイプだったか?」
妹の変化に気付いたハルに、ティアナは少し感心したように笑う。
「レイだって、成長するのよ」
ハルの肩を叩きながら、ティアナはレイの方へ視線を向け直す。
ガラス越しのレイは、まだ幼さを残すただの女の子のように見えた。
(あの子だって、まだ1年だものね。お兄様離れするにはちょうどいいんじゃないの?)
「アルフ」
「あ?」
機嫌を損ね、コーヒーを無心で飲み干したアルフに、ティアナは軽率に声をかける。
不機嫌さを隠そうともしないアルフの態度に、他3人は顔を見合わせて笑い、アルフは更に機嫌を損ねる。
「レイがいないからって、そんなに怒らないでよ」
「そんなんじゃねぇよ」
コーヒーを継ぎ足しながら、アルフは低い声でティアナを威嚇する。
(アルフって、こんなに分かりやすかったんだ。見た目で圧倒されちゃうけど、要するにヤキモチね)
「レイがほかの男のところ行くのが嫌なんでしょ?」
「ぶはっ!?」
ティアナが悪戯っぽくアルフに投げかけた言葉に、予想の斜め上を行かれたハルが咽始める。
何故かアルフではなくハルが咽たことに、ティアナとテレサは眼を見合わせて笑った。
「……はぁ?」
無自覚なのか、訝しげに顔を歪め、アルフは3人から視線を逸らす。
咳込みながら嗤うハルに、アルフは殴り掛かり、ハルはすかさず蔦で反撃をする。
「子どもね」
「賑やかでいいじゃない」
呆れたように呟くティアナに、嬉しそうに微笑むながらテレサが声を返す。
女子2人は座りながら器用に殴り合う男2人を楽しそうに眺めた後、レイへと視線を向ける。
ガラス越しのレイは、やはり嬉しそうに微笑んでいた。




