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第69話 桜月のパーティ

本日4話目の投稿です


「レイ、迎えに……」


 食堂へ現れたハルとティアナは、並んで座るアルフとレイに、驚愕したように眼を丸くする。


「なんでお前が……」

「まあ、そんなことは置いといて。2人もほら早く」


 突然後ろに現れたブレアに背中を押され、2人は自分の席に腰を下ろす。

 レイの隣にアルフが座り、アルフの隣にグラナートが座っている。

 状況に理解が追いつかない2人は顔を見合わせる。


「ほらガキ共、飯だぞー!」


 一度食堂へ戻ったブレアは、両手にパスタを盛った大皿を一枚ずつ持ち、テラス席へと運んで来た。

 食欲を刺激するその匂いに、4人は顔を見合わせる。


「何も食べていないだろう?」

「気を利かせたお兄さんからの贈り物だぜ」


 大皿を並べ、小皿を配るブレアとグラナートに、4人は眼を見開いた。

 つい最近まで敵として立ち振る舞っていた2人をどこまで信用していいのか分からない4人は、だが彼らの首に光るチョーカーを見て、言葉として声に出すことを止める。


「……」


 なかなか食べ始めない四4に痺れを切らしたブレアは、自ら両方の大皿からパスタを盛り分け、平らげて見せた。


「なんも入れてねぇから。安心してお食べ」


 体を張った言葉に、4人は再度顔を見合わせ、目の前のパスタへ視線を移す。

 少量を小皿にとりわけ、4人は同時に口へパスタを運んだ。

 途端、


「「「「!!」」」」


 4人は同時に顔を上げ、ブレアへ視線を送る。

 大げさな彼らの反応に、ブレアはニヤリ、と口角を上げた。


「美味いだろ?」


 その自慢げな顔に、4人は認めたくない気持ちと、たらふく食べたい気持ちを天秤にかける。

 結局食欲に負け、4人は手を止めることなく食べ始めた。


「健康な証拠だ」

「全部食べろよ」


 元気を取り戻したハルとレイを見て、大人2人は安心したように笑いながら、自分達もパスタを横からつまむ。

 桜の散る月夜に、6人は他に誰もいない学園で、秘密のパーティを楽しむ。

 その姿は他の誰が見ても和む程に、温かいものだった。


「ほら、マカロンもあるぞ」

「!?」


 パスタを上品に食べていたレイへ、ブレアはマカロンを差し出す。

 レイは食べる手を止め、パスタとマカロンを見比べた。


「誰もとらねぇから、ゆっくり食べろ」


 その姿に笑いが込み上げたアルフは、優しくレイを撫でながら、普段より少し笑いを含んだ声でレイに告げる。

 その言葉に、少し頬を膨らませてから、レイはパスタを食べる手を再開した。

 食事を進める生徒達を眺めていたグラナートの視界に、ふと見覚えのある人物が映り込んだ。


「お前らなぁ……」

「ゲッ!」


 楽しそうに食事をとる6人の間に、ドレットの声が響き渡る。

 見回りに来たのであろうその姿に、ブレアは視線を逸らし、ドレットの眼から逃げようとする。


「先生、テレサは?」

「さすがに返したよ。……と言いたいところだが」


 ドレットに、ティアナは親友の安否を尋ねる。

 その質問に、ドレットが溜め息を吐くと同時、彼の後ろからテレサが顔を出した。


「2人のことが心配で、戻ってきちゃった」


 ティアナへと手を振りながら舌を少しだけ出して見せるテレサの姿に、6人は顔を見合わせて笑い合う。

 後から来た2人も合わせ8人で食事を開始し、夜は深まっていく。


「さすが思春期! あれだけの量を食切るとは」

「半分くらい、ドレット先生なんですけどね」


 生徒の前で飲酒するわけにもいかず、物足りなさそうにティーカップを傾けるドレット。

 感嘆の声を上げるブレアに答えたテレサ。

 未だに大食いであることを受け止めきれない7人は、ドレットに視線を集中させる。


「なんだ?」

「あんな死体みたいな顔してる癖に」


 7人の視線に、ドレットは迷惑そうに眉間に皺を寄せた。

 正直に感想を漏らしたブレアの額に、ドレットが投げ、移動させたフォークが突き刺さる。


「いってぇ!」

「分かるわー」


 かつて同じ痛みを受けたハルが、ブレアの悲鳴に頷く。

 取るに足らない会話を繰り広げる中で、レイは小さく決意したように頷く。

 自分用に作られたマカロンを1つだけ残し、レイは手を止めた。


「お話します」


 突然声を上げたレイに、ピタリ、と会話は止まり、今度は彼女へと視線が集中する。


「レイ?」

「お話します。私とお兄様の事。私と、母の事を」


 レイからは絶対に出ないだろうと誰もが予想したその内容に、7人は唖然とする。

 そんな周りの反応を見て、レイは優しく微笑む。


「みなさんには、知っておいて欲しいんです」


 これからの1週間の為に、と告げるレイに、ハルは真っ直ぐと視線を向ける。


「よろしいですか? お兄様」


 ハルからの視線に、顔を背けることなく眼を合わせるレイ。

 妹の決意がにじむその瞳に、ハルは優しく微笑んだ。


「お前がいいなら、いいよ」

「ありがとうございます」


 ハルからの言葉に、レイは落ち着きを払った笑みを見せ、1つ、深呼吸をしてから語り始めた。


「今から、10年以上前の話です」




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