第65話 2人の従者
本日4話目の投稿です
「とは言え、俺は学園で悪事を働いた訳ではないがな」
突然ブレアと机を挟み反対側に現れたグラナートに、生徒5人は悲鳴を上げそうになる。
以前のような迷彩服ではなく、動きやすいラフな格好のグラナートは、同じように首にはめられたチョーカーを5人に見せつけた。
「俺もそこの男の同じ条件だ。違うのは、ここにいる全員の奴隷ということだけだな」
淡々と自分の雇用条件を告げるグラナートに、ハルは疑問をぶつける。
「それよりも、いつから……!?」
「そこの男がお前らに捕まった時からだが」
最初からいた、と表情を変えることなく言い放つグラナートに、5人はもう一度唖然とする。
ブレアは頭を掻きながらグラナートに言葉を投げる。
「お前、俺のをコピーしたな?」
「そうだが」
当然のように答えるグラナートに、ブレアは溜め息を吐く。
何にも動じないグラナートとブレアを見比べ、テレサは声を発した。
「そういえば、ブレアさんの魔術って……」
「俺? 俺が使ってるのは、潜伏!」
テレサに問われ、キメ顔を作りながら答えるブレアに、ティアナは頭痛を覚える。
言葉足らずなブレアに補足する様にグラナートとドレットは口を開いた。
「潜伏より、気配遮断か」
「この学園のセキュリティさえも潜り抜ける、大した代物だぞ」
淡々と告げる2人の大人に、テレサを除く生徒4人は表情に疲れを窺わせる。
まだ余力のあるテレサは、続けて問う。
「どうして、あの場にいたのですか?」
いつくるか、と身構えていた質問に、ブレアはテレサに向けて微笑みながら答えた。
「ドレット先生に頼まれたんだよ。ついて来いって」
「……余計なことを」
隠しておきたかった事実を躊躇いもなく暴露され、ドレットはテレサから顔を背ける。
ティアナはブレアの言葉に少し考え込んだ後、恐る恐る尋ねた。
「もしかしてだけど、最初からついて来てたの?」
「あぁ、面白そうだからお嬢さんについて行った」
ニヤリ、と口角を上げ、ティアナをからかうように笑うブレアに、ティアナは羞恥で肩を震わせる。
「しかし、もうちょい素直になった方がいいんじゃねぇか?」
「余計なお世話よ!」
ハルへの態度に対し、意見を述べるブレアに、ティアナは立ち上がり抗議する。
そんなティアナを眺めていたテレサは、ふと、声を漏らした。
「ティアナ、その髪飾り、どうしたの?」
今までに見たことの無いティアラを模した髪飾りを指さし、テレサは尋ねる。
その言葉にティアナ言い淀み、愉快そうにブレアが口を挟む。
「その髪飾りはお嬢さんが……」
「ブレア、ステイ」
余計なことを言われる前に、ティアナはブレアの口を閉ざす。
ティアナはなんとか誤魔化そうとして、テレサを見つめ、感じた違和感を指摘する。
「そういうテレサも、そのヘアピン……」
「え?」
緑の宝石が輝くヘアピンを手で隠し、テレサははぐらかすように笑う。
曖昧なやり取りをする2人を眺めたハルは、レイに視線を向け、腕に巻かれた赤いリボンに眼を留めた。
「レイ、そのリボン……」
「なんでしょうかお兄様!?」
飲んでいた紅茶で咽そうになりながら、レイはハルの言葉を遮る。
鬼気迫る妹の姿に、ハルは口を閉ざした。
そんなレイの反応を愛おしそうに見つめながら、アルフはドレットに視線を送った。
「そういえば、白衣のサイズ変わってねぇ?」
ニヤリ、と嗤うアルフの言葉に、ドレットは何1つ取り乱すことなく答える。
「ん? あぁ、新調したんだ」
1人だけ、流石と言うべき大人な態度を取るドレットに、5人は何も言うことが無くなり、黙って飲み物を手に取る。
「あら? アルフ、今日は紅茶なのね」
アルフの変化に気付いたテレサが、恐れることなくその違いを指摘すると、アルフはレイに視線を送った。
「レイが、紅茶の飲み方を教えてくれたんでな」
今度は動揺することなく耐えたレイを見て、アルフは笑いを堪える。
アルフの態度に機嫌を損ねたレイはハルを見て、首を傾げる。
「お兄様、今日はタルトを召し上がられるのですか?」
普段甘いものを一切食べないはずのハルの前に置かれたイチゴタルトを見て、レイは尋ねる。
その問いに、ハルは横目でティアナを見ながら平然と答えた。
「あぁ、ちょっとな」
歯がゆいやり取りを繰り広げる6人を眺めた後、ブレアは宙を仰いだ。
「あぁ、青春っていいなあ…」




