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第63話 チェック

今日二話目の投稿です

 男は真っ直ぐアルフを見下ろし、己の名を告げた。


「グラナート……?」

「そうだ」


 アルフが繰り返すその名に、グラナートはゆっくりと頷いて見せる。

 

(グラナート、コイツが危険であることはよく分かった。時間操作の有効時間は恐らく10秒程度。だが、その時間内で心臓を狙われでもしたら、俺は確実に死ぬ……!)


 息を整えながら立ち上がるアルフを見つめ、グラナートはゆっくりとアルフへと歩み寄る。

 確実に仕留めようと手を伸ばしたその時、1つの声が響き渡った。


「癒しの女神、パナケイア!」


 突如、VIPルーム全体を優しい光が包み込む。

 ティアナの声に、グラナートは振り返り、眉間に皺を寄せる。


「バカが、俺ごと回復してどうする。それに手下共だって……」


 グラナートは自分の言葉に違和感を感じ、辺りを見回す。

 誰一人として体を起こそうとしない手下達を見て、グラナートはティアナを睨む。


「バカは貴方よ。私の魔術は万能じゃない。だから、意識のある者の傷を少しだけ癒す。それこそ、動けるようになる程度にね!」


 ティアナの言葉と同時に、アルフはグラナートへ飛び掛かる。

 注意を逸らしていたグラナートはアルフの拳を頬に掠らせた。


「チィッ!」


 しかし、アルフはそのまま動きを止め、グラナートはもう一度アルフの脇腹へ蹴りを入れ、壁際へ蹴り飛ばす。


「コイツ……!」


 グラナートはティアナに向き直り、コピーしたハルの魔術を発動しようとした。

 そこへ、倒れていたはずのハルの声が重なった。


「「蔦ァ!」」


 グラナートは真っ直ぐにティアナへと蔦を飛ばし、ハルはティアナの足元から壁を作るように蔦を発生させる。


「貴様ッ!」

「コピーの分際で、オリジナルに勝てると思うなよ!」


 壁に寄りかかりながら立ち上がるハルの姿に、グラナートは舌打ちをする。

 今度はハルを睨みつけるグラナートの背中から、もう1人の声が響いた。


「あぁ、その通りだ」


 すかさずグラナートが振り返るが、そこには誰もおらず、ティアナ達3人の姿もない。


「……!?」


 フロアへと続く開け放たれた扉へ振り向くと、息を切らしながら、女子3人の前にしゃがみ込むドレットの姿があった。


「貴様、何故動ける……!?」

「ティアナの魔術だよ、アホ」


 苦しそうに顔を歪めながらも、少しだけ口角を上げるドレットに、グラナートは眉間に皺を寄せた。


「先生……!」

「大丈夫だ」


 心配そうに声を上げるテレサに、ドレットは優しく微笑む。

 冷や汗が顔を伝うドレットの姿は、脆く、今にも崩れてしまいそうであった。


「クッ……!」


 戦況を逆転されかけている今の状況に、グラナートは唇を噛む。

 しかし、すぐに表情を消し、真っ直ぐにドレットを見つめた。


「お前等は俺に攻撃したところで、自分から死ににくるようなものだと、理解しているだろ?」


 背筋を伸ばした、綺麗な姿勢で立つグラナードに死角はなく、迂闊に攻撃すれば返り討ちにあうのだとはっきりと理解できた。

 その上、グラナートの持つ魔術、時間操作が全員の動きを慎重にさせる。


「先生、あの人の永続魔術発動条件は……」

「恐らく、自分に対して敵意のある攻撃をされた時、なんだろうな」


 身を以てグラナートの魔術を経験したドレット達3人は、直感で発動条件を感じ取る。

 術者自身に敵意のある攻撃を向けた時、自分の全ての機能が止まり、そのまま死亡する可能性も十分あった。


「何のことはない。1人ずつ、また潰していけばいいだけだ」


 グラナートは視線をティアナへと向け、ゆっくりと右手を向ける。


「確実に、仕留める」

「いいや、仕留められるのはお前だ」


 力を込めて言うグラナートに、ドレットは口角を上げて笑う。

 その表情に、グラナートは眼を見開き、突然振り返った。


「誰だ!?」

「……バレちったか」


 振り返り、見えない敵に手を向けたグラナートは、耳に届いた謎の声の正体を把握するよりも先に、その場へ倒れ込んだ。

 安心したようにへたり込むドレットは、ティアナ達3人に体を支えられる。


「遅いぞー」

「人使い荒すぎんだよ」


 見えない何者かへ、ドレットはいつもの間延びした声を投げた。

 ドレット以外の全員が状況を飲み込めない中、その男は姿を現す。


「あ!?」

「お前!!」


 片目の隠れた髪型に、ハルとティアナは声を上げる。

 右手にスタンガン、左手に注射器を三本持ったその男は、ティアナ達へ向き直り、ニヤリ、と嗤って見せた。


「よお、ガキ共」




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