第57話 お使い
「で? お使いは?」
数時間後、最初の集合場所へもう一度集まった6人は、ドレットへ指定された物を手渡す。
「いいじゃねぇか別に」
「申し訳ありません……」
お使いをすっかり忘れてデートを楽しんでいたアルフとレイは、ドレットからの尋問を受けていた。
「あら? 思いのほか楽しんでいたのね」
「そういう訳じゃ……」
テレサの言葉に、レイは視線を逸らしながら頬を染める。
初々しい反応に、テレサは満足そうに笑う。
「しょーがねぇから、全員で行くぞ」
「はぁ!?」
ドレットは大きく溜め息を吐きながら全員に通達するが、ハルは抗議の声を上げる。
「この後何するでもなく、6人で遊ぶつもりだったんだろ。なら別に変らないからなー」
テレサに視線を送りながら、ドレットはハルを黙らせる。
他に反発する者もおらず、6人は目的の店を探して歩き出した。
「そういえば、服変わってない?」
ふとティアナは、レイのワンピースを見て首を傾げる。
ティアナからの質問に、レイは顔を背ける。
「い、いろいろあったんですよ」
「おいテメェ、妹に何しやがった」
レイの反応を見て、ハルは即座にアルフに掴みかかる。
歩きながら、2人は器用に喧嘩を始めた。
「あ? 何もしてねぇよボケが」
「お前等それ以上喧嘩すんなら単位没収するぞ」
ドレットの力ない声に、ハルとアルフは納得いかないまま、間に距離を置く。
「そういえば、お使いの内容ってなんですか?」
テレサは、ドレットの隣へ歩み寄り、顔を覗き込むようにして尋ねる。
そんな教え子を横目で見た後、足を止め、ドレットは正面の店を指さす。
「アクセサリーの調達」
目の前のジュエリーショップを見つめ、男性2人は首を傾げ、女性3人は眼を見開く。
「こ、ここって超有名ブランドじゃないですか!!」
ティアナがドレットへ慌てて確認する。
当たり前だ、とでも言うように首を縦に振るドレットに、ティアナは言い返す言葉を探す。
「でも、誰に……?」
レイは、目の前の女性向けブランドを見つめながら、ドレットに静かに尋ねる。
レイの反応にドレットは首を傾げながら口を開く。
「言ってなかったか? お前の母親だ」
「「え!?」」
ドレットの言葉に、ハルとレイは眼を見開く。
ハルはドレットに歩み寄り、問い詰め始めた。
「どういうことだ!?」
「まあ、後でいいだろ」
ハルを宥めながら、ドレットは先陣を切って店へ踏み入っていく。
その姿を見て、5人は静かに後を追う。
6人が店内でアクセサリーを物色し始めた、その時。
「動くな!!」
突然、武装した迷彩服の男達が店内へ流れ込んできた。
その手には銃を握りしめており、服の上からでもアルフ同様、鍛えられていることが分かった。
「何!?」
その姿に、ティアナは驚愕の声を上げ、後ずさる。
ドレット達3人は、それぞれティアナ達を隠すように前に立つが、その行動が武装集団のリーダー格であろう男に眼を付けられた。
「そこの女共……、上物だな」
武装した男が3人ほど後ろから近づき、ティアナ達を捕縛する。
「ティアナ!」
「連れて行け!」
(マズい……! ティアナには王族としての掟がある! 俺よりも先にティアナの純潔を1つでも散らされたら、ティアナが俺の手の中から離れていく……!)
ハルは、ティアナへと手を伸ばすが、武装した1人の男によって遮られる。
ティアナ達も捉えられながら抵抗するが、その強靭な肉体には歯が立たず、そのまま奥の部屋へと連れ去られる。
VIPルームへと連れ去られる直前、ティアナ達3人はそれぞれ手を伸ばし、名前を叫ぶ。
「ハル!」
「アルフ、先輩!」
「ドレット先生!」
「「「助けて!」」」
姿の消えた3人と武装したリーダー格の男を眼で追いながら、残されたハル達3人の影がゆらり、と揺れる。
「動くな!」
その場に残った武装集団の下っ端に銃口を向けられながらも、3人は怖気づくことなく、その眼をギラリ、と妖しく光らせる。
「絶対に、」
「「「助け出す!!」」」
次回、男三人初共闘
武装集団の運命や如何に…




