第42話 団体戦
レイはアルフを置き去りにし、ティアナの方へ走り出した。
それを見たアルフはレイを追いかけるが、捕まえる寸前で、レイは魔術を発動し、そのままアルフへ斬りかかる。
「我の導に従い、その力を示せ! 流鏑馬!!」
絶望する2人の間に、レイの声が響く。
魔術刀から放たれた水滴状の斬撃は、ティアナへ降り注ぐ岩石を砕き、その全てを場外へと吹き飛ばす。
「レイ!!」
「……借りは、返しましたからね」
突然の助太刀に、ハルは驚喜の声を上げる。
ゆっくりと眼を開くティアナは、自分の無事を確認した。
「無事か!?」
ハルはティアナへ走り寄り、自分の眼で、手で、感触で彼女の無事を確認する。
「えぇ。レイのおかげね」
「よかった……!」
ティアナを抱きしめかけた手を下ろし、ハルは項垂れる。
大きく溜め息を吐くハルに、ティアナは静かに笑う。
「そんなに心配してくれるなんて、光栄ね」
無事を確認し合う2人を見て、レイは静かに微笑む。
そんなレイに、アルフは容赦なく襲いかかった。
「余所見とは、いい度胸じゃねぇか!!」
振り下ろされた拳を後ろに跳ぶことで躱したレイは、アルフへ向け、口角を上げて笑う。
「私も立派な戦力ですので、チームメイトの危機は救って見せます!!」
叫びながら飛び出してくるレイを、アルフはニヤリ、と嗤いながら迎え撃つ。
レイの顔は、どこか清々しく自信に満ちていた。
「言うじゃねぇか!!」
レイは魔術刀でアルフの肩を打ち付け、自分もまたアルフの拳を肩で受けた。
「おらぁ!!」
「ッ!」
肩へ与えられた衝撃にレイは顔を歪め、後ろへ跳ぶ。
肩を上下に揺らすレイを見下ろし、アルフは首を傾げた。
「殺傷能力のない刀を、何故振るい続ける?」
レイの打撃を受けた右肩を摩りながら問うアルフに、レイは勝機を見出す。
「確かに斬り付けることはできません。ですが、ダメージを蓄積させることなら!!」
再び跳び出したレイに、アルフは右腕を振り上げる。
しかし、打撃を受け続けたアルフの右肩が小さく震えた。
「!!」
(この人は私の目的に気付いてはいなかった。なら、今振り上げたその腕に、その肩に、なんらかの異変が起きていることなど、予測さえできていない……!)
電流のように流れる痛みに、アルフは小さく顔を歪める。
目の前に跳んで出たレイに、アルフは眼を見開き、叫んだ。
「これが狙いか!!」
「終わりです!!」
一瞬、ほんの一瞬振り下ろすのが遅れた右の拳をレイは華麗に躱し、アルフの喉元へ刃を突き付けた。
「……ハッ、やるじゃねぇか」
自分の胸元で、その小柄な身体で自分を追いつめたレイをアルフは見下ろし、称賛の言葉を贈る。
(今、後ろへ引いたとしてもコイツは魔術で追い打ちをかける。足にも蓄積されたダメージのせいで、ロクに避けられる気がしねぇ。ゴーレムは残らず倒された。……詰んだ、か)
自分の状況を冷静に考察するアルフは、自分の敗北を認めようとした。
その時、アルフの身体が鈍く光を放った。
「アルフ!!」




