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第40話 銀髪の剣士


「オラァ!!」

「はぁ!!」


 多方向からの攻撃を躱しながら、レイはアルフに斬りかかる。

 スピードを上げるレイに、アルフは段々と刀を躱し切れなくなっていく。

 アルフが一歩レイに向け踏み込んだ時、レイの放った一撃が、アルフの肩に直撃した。


(しまった! この刀に殺傷能力がないことがこの人にバレる!!)


「……これ、魔術刀か」


 レイの頬に、冷や汗が伝う。

 案の定、アルフはレイの刀を見抜き、刃を手で掴み、己の肉体から遠ざけた。


「よくこんな癖のある武器使えんな」


 魔術刀の具現化を解除し、レイは後ろへ跳ぶ。

 距離を取る彼女を見て、アルフは静かに言葉を紡いだ。


「話を戻すが、お前、1年の何にキレたんだ?」


 3回戦について話題を振るアルフに、レイは意図を読み取れず、悩みながら答える。


「妹を、犠牲にする事に何の迷いもなかったこと」

「他には」


 攻撃する手を止め、静かに問うアルフに、レイは魔術刀を顕現させ、構え直しながら言葉を返した。


「……妹が自ら犠牲になる道を選んだ事」

「なら、その妹は何を考えていたと思う?」


 未だアルフの意図を汲み取ることのできないレイはそのまま言葉を口にする。


「姉の役に立つこと?」

「何故、自爆が役に立つんだ?」


 静かに、だが徐々に力を込めて問うアルフに、レイは視線を逸らす。

 次の質問の答えを探し、そしてレイは眼を剥き口を開いた。


「自分が、役立たずだから……?」


 驚愕したような声を漏らすレイに、アルフは溜め息を吐く。

 ようやくたどり着いた答えに、レイは刀を下ろした。

 

(自分が姉の足を引っ張るから、1人で自爆……。それは、まるで、)


「まるで今のお前だな? レイ」


 アルフの力を込めた低い声に、レイはビクリ、と肩を震わせる。

 真っ直ぐに自分を見つめるアルフの瞳に、レイはたまらず視線を逸らした。


「お前は、自分が一番戦力として劣っているって俺に言ったな?」

「……はい」


 震えを止めようと手に力を込めながら、レイは頷く。

 そんなレイを、アルフは一喝した。


「今のお前はその妹となんら違わない!! そんなお前に、魔術を振るう資格などない!!」


 アルフの言葉は、真っ直ぐレイに突き刺さる。

 脱力するレイは、アルフを振るえる瞳で見つめた。

 

(私に、魔術をふるう資格はない……。そうだ、その通りだ。本来なら、私は、生きていること自体が罪。なら、私は……、)


「お前は、何のために魔術をふるうんだ!?」


 思わず、俯いたレイの指先から、魔術刀が零れていく。

 魔術刀を手放しかけた、その時、レイの脳裏にハルの言葉が蘇った。


 ――レイ、これは俺の我が儘だ。だが、もし聞いてくれるなら、お前は俺の分まで存分に魔術をふるえ。それが、俺の願いであり、望みであり、我が儘だ。


 レイは再生されたその言葉に眼を見開き、両手にわずかに力を込める。

 

(そうだ、私は、あの日、お兄様に託された。お兄様から願われ、望まれ、甘えられた。それを、忘れていただなんて……!)


「……お兄様は私を認めてくれた。お兄様が私を認めてくれた。お兄様だけが私を認めてくれた。私の魔術を否定することは即ち、お兄様を否定すること!」


 眼に力を込め、レイは柄を握り直す。

 力強く構えるレイを見て、アルフは口角を上げた。

 

(そうだ、いいぞレイ。そのまま、いけ! お前は、)


「お前は何のために魔術をふるうのか!!」

「お兄様を否定する者を否定するため!!」

「お前は役立たずか!?」

「私は、役立たずなんかじゃない!!」

「お前は、何の為にここにいる!!」


 アルフの声に応え、レイは叫ぶ。


「私は、私の為にここにいる!!!」




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