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第31話 アルフ


「アルフ……、3年1組の先輩ね」


 食堂にて、それぞれ好きなケーキをドレットに奢らせ、所定のテラス席で作戦会議を始める5人。

 ドレットは、自分の財布に眼を落とし、深い溜息を吐いた。


「テレサにまで奢るとは言ってないんだがなー」

「あら、良いじゃないですか、せんせ❤」


 肩を竦めるドレットに、テレサは悪戯っぽく笑う。

 諦めた様にドレットは財布を仕舞い込んだ。


「そんで? 3年で、更に1組のアルフに、お前らはどう戦う気なんだ?」


 溜め息を吐きながら、ドレットは3人に問う。

 ニヤリ、と口角を上げ、ハルは口を開いた。


「先生さ、アルフの弱みとか知ってんだろ? ちょっとでいいから教えてくれたりは……」

「アホか。そんな事したら首が飛ぶわ、物理で」

「いってぇ!!」


 呆れた顔をしながら、ドレットがわざわざ瞬間移動させながら投げたフォークは、見事にハルに突き刺さる。

 額に刺さったフォークを抜きながら、ハルはドレットに抗議の目を向ける。

 が、そこにドレットはおらず、新しくフォークを貰ってきたドレットは、今度はハルの後ろから自らの拳をハルの頭に振り下ろす。


「いった!!??」


 ハルは後ろを振り向くが、そこには誰もおらず、代わりにドレットが所定の席に座っていた。

 ここまでするか、と文句を垂れるハルをドレットは鼻で笑う。

 そんな2人のやり取りを見て、不覚にも女子3人はツボに入る。


「も、申し訳ありませっ、フッフフ」

「あんた達、フ、ハハ」

「フフフ」


 ティアナとレイは口に手を当て、笑いをこらえて震え、テレサは隠す気もなく。

 3人は、それぞれの笑いを漏らした。


「お前らなぁ……」


 頭を掻きながら、居心地の悪そうにハルは言葉を漏らす。

 ドレットはそれを気にする様子もなく、静かに紅茶を口へ運んだ。


「それで、アルフ先輩についてよね」


 咳払いを1つし、話題を戻そうとテレサは口を開く。

 ハッ、と我に返るティアナとレイは、服装を正す素振りをし、姿勢を伸ばす。


「そうね」

「はい」


 レイは冷静を取り戻そうと、ティーカップを口に当て、ゆっくりと傾ける。

 ティアナは、イチゴタルトを一口だけ口に運び、味わって食べた。


「アルフ先輩は、その凶暴性でも有名だけど、魔術格闘祭は特にそうね。3年連続出場しているけれど、全ての試合を最初の一手で終わらせるそうよ」


 先ほどまでの穏やかな顔つきとは異なるテレサの真剣な眼差しに、3人は手を止め、彼女を見つめた。


「彼が出場した試合のフィールドは、いつも大きく亀裂が入っているわ。準決勝でも大きく、それでいて深い亀裂が入っていたわ」

「修理する側を考えろよ……」


 静かなテレサの言葉を裏付けするように、ドレットは溜め息を吐く。

 先程財布を眺めていた時同様、深く長い溜息を。


「でも、それだけの衝撃で彼以外の全員が起き上がることなく気絶するなんて思えないわ」

「お前は、どう考えてるんだ?」


 勿体ぶるテレサを、ハルは急かす。

 クスリ、と笑った後、また真剣な顔つきに戻るテレサは、自らの考察を述べた。


「私は、彼の行動、フィールドを壊す程の強力な魔術は、全てカモフラージュだと思っているわ。彼の本当の目的、それは」


「精神干渉よ」




ドレットがフォークを投げた際の解説。

投げる→瞬間移動させる→ハルの眼前にフォークが移動する→刺さる

という、絶対に避けられないシステム。

間違って女性陣に刺さったり、食事の邪魔にならないようにするためのドレットなりの気遣い。

気遣う場所が違うのは内緒。

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