第27話 特殊
「はい、これが3回戦の対戦相手の資料よ」
翌日、3回戦出場者控え室にて。
テレサはティアナに、薄い冊子を手渡す。
「ありがとう、テレサ!」
笑顔でお礼を言うティアナに、首を捻りながらテレサは問いかける。
「昨日は、ちゃんと帰れたのね」
「え? うん」
2回戦後、居眠りを始めたティアナを、ハルは最後まで起こすことなく寝かせていた。
多少のハプニングは(主にハルだけに)あったものの、ようやく目を覚ましたティアナを、ハルは家の前までしっかりと送り届けていた。
「そう、よかった」
安心したように微笑むテレサを、ティアナは不思議そうに眺める。
何があったか分かっていないティアナに、ハルの中で苛立ちが募った。
談笑を続ける2人に痺れを切らしたハルが、テレサに催促をした。
「それで?」
「あ、ごめんなさい。それで、対戦相手なんだけど……」
時間が無い中、脱線したことを謝罪したテレサは、顔を曇らせ冊子に目を落とす。
「ちょっと特殊なのよね」
「特殊?」
ティアナの声に、テレサは縦に首を振り、冊子を開いて見せる。
「対戦相手は、1年生の三つ子。使う魔術は……」
「時空操作、ですか」
レイの驚愕した声に、再度テレサは首を縦に振る。
簡潔に説明するため、テレサは言葉を選びながら口を開く。
「発動までのリミットは約5秒。相手の魔術が発動したら、術者以外のすべての時間が止まるわ。もしそうなったら、あとは簡単に場外へ放り出されて敗北するわ」
「なら、どうすればいい?」
説明をすんなり飲み込んだハルは、テレサに解答の提示を求める。
眉間に皺をよせ、言葉に迷いながら、テレサは解決策を告げた。
「そうね……。たとえば、よ? 開始5秒以内に、相手の魔術発動を阻止。続けて場外へ放り出す、というのが一番スムーズでしょうけど……」
頬に手を当て、困った様に告げられた内容に、3人は顔を見合わせる。
無理よね、と呟きながら唸るテレサを、ティアナは現実へ引き戻した。
「テレサ」
「え?」
横からかけられたティアナの声に、テレサは素っ頓狂な声を上げる。
黙ってティアナとレイに指さされたハルを見て、テレサはなお困惑する。
「……え?」
***
「さあ、始まりした準決勝! 3回戦1組目!!! 東ゲートから1回戦、2回戦と鮮やかに勝利を重ねる1、2年混合チームの登場だー!!! 出会って数日という初対面トリオ、未だ知り尽くすことの無い相手の欠点を、個々の経験値で華麗にカバー! 今回はどのような戦いを見せてくれるのでしょうか!!??」
司会に煽られ、3人は堂々と入場する。
湧き上がる歓声に、3人は目もくれず、ただただ正面を睨みつける。
今回、レイは魔術刀を顕現しておらず、ハルを中心として並ぶ3人は、客席からでも感じ取れる余裕を醸し出していた。
「西ゲートから登場するのは、初挑戦にして、3回戦まで上り詰めた1年三つ子チーム!! すべての試合を秒で終わらせる彼女らは、無敗を誇るティアナ選手相手に、どのような戦いを見せるのか!!??」
司会によって紹介されながら、対戦相手が現れる。
目の前に並ぶ小柄な3人の少女を見て、ティアナは溜め息を吐く。
「まさか、こんな作戦を立てているとは思わないでしょうね」
「ちゃんと加減はするから安心しろ」
ティアナは横目でハルを見ながら小さく呟いた。
ハルは右の拳を左の掌に打ち付けながら、ティアナに笑い返す。
「失敗した場合は、分かっていますよね?」
レイは2人に、肩を竦めながら尋ねる。
そんなレイに2人は、不敵な笑みで言葉を返す。
「えぇ。時空操作が自分達だけのものじゃないってこと、思い知らせてあげるわ」
「ま、心配すんな。俺が華麗に決めてやる」
どこまでも余裕を見せる2人に、レイもまた不敵に笑う。
「元より、心配などしておりませんよ」
レイもまた、余裕を見せるためバカにするような声を2人にかける。
そして3人はもう一度、正面の3人へ視線を向ける。
「さあ、……開幕です!!」




