第25話 ドレットの胃袋事情
「もう、2人とも遅い!」
「いいだろ別に、妹との時間を楽しんだって」
膨れっ面でそう抗議するティアナに、先ほどの不穏な空気を微塵も感じさせない微笑でハルは答える。
「で、なんでその並びなの?」
ハルの問いに、ティアナとテレサは首を捻る。
ティアナとテレサはいつもの場所に座っており、何故かドレットは、本来レイの位置であるテレサの隣に座っていた。
「なんでって、テレサに引っ張られたからだな」
「あらやだ。先生、私の隣はお嫌ですか?」
「なんか秘密握られそうで……」
視線をそらしながら冗談を言い合う2人は、仲のいい兄妹のようであった。
そんな2人に遠慮しながら、レイはドレットの隣に、ハルはティアナの隣に座る。
「でも、やっぱ動いた後だからガッツリ食いたいよな」
ちらりとティアナと目配せしたハルは、頭の後ろで手を組みながらそう言い放った。
それを合図と受け取った3人は、作戦を実行に移す。
「あら? デザートじゃなく?」
「私も、ちゃんとしたご飯が食べたいかも」
テレサが頬に手を当てながら尋ねると、ティアナが腹部を抑えながら答える。
なるべく自然に、2人は日常の会話に寄せて話を進めた。
「私も、そう思います」
両手を膝の上に乗せながら、視線を床に滑らせ、レイが同意する。
普段とは視線の動かし方が違うレイだが、恥らっていると取れば十分に自然だった。
「お前ら、さっさと買ってくりゃいいじゃねぇか」
回りくどいやり取りをする4人に、ドレットが顔を顰めて言う。
4人を動かそうとするその腕を、すかさずテレサが掴んだ。
「ドレット先生も一緒に食べましょう?」
「いや俺は……」
テレサは思い切りドレットの腕を引っ張り立ち上がらせ、ドレットを店の方へ引っ張っていく。
それを見てティアナ、レイ、ハルの順で続いた。
「先生はどれがいいですか?」
「だから俺は……」
テレサに連れられ、メニューを押し付けられたドレットは、困惑の表情を浮かべる。
するとそこに、1つの声がかかった。
「おや、お兄さん。この時間に来るなんて珍しいね」
それは、パスタ専門店の厨房からだった。
中年のコックが表に出てきてドレットに話しかける。
「どーも」
「今日も食べていくのかい?」
ドレットとコックの会話に、4人は呆然とする。
その様子にドレットは、露骨に嫌そうな顔をして生徒を見る。
「先生って、ここで食事するんですか!?」
「そりゃするだろ……」
ティアナの発言に、しかめっ面を直そうともせず、ドレットは力なく答える。
「1日中ウェダーだけじゃなくて!?」
「……は?」
続けてテレサが投げかけた質問に、ドレットは更に眉間に皺を寄せる。
2人の質問に、察しが付いたコックは、ドレットに代わって答えた。
「ハハハ、お嬢さん達、この人はね、食堂の全メニューを一度に食べ尽くす程に大食いなんだよ」
コックが笑いながら告げた真相に、4人は眼を見開き特大のハーモニーを食堂に轟かせた。
「「「「ええぇぇえぇえ!!!???」」」」




