第97話 格闘訓練
本日二話目の投稿です
「もっと踏み込め!」
放課後。
レイの訓練時間を使い、ハルはブレアによる格闘戦特訓を行っていた。
「そんなんじゃ、俺は捕まんねぇよ!」
無数の蔦を避け続けながらブレアは叫ぶ。
どれだけ攻撃してもブレアには掠りもしない事に苛立ちを覚え始めたハルの集中力は欠け始める。
「集中しろ!」
「いってぇ!!」
潜伏を使ったブレアを見失い、ハルは見えない敵に足を払われ、受け身も取れずに頭を強く打った。
「何苛立ってんだよ」
「お前が避けるからだよ!」
吠えるハルに、ブレアは大きな声で笑い声をあげ、腹を抱えて目の前に座る弟子をバカにする。
「避けなきゃ訓練じゃねぇ!」
「うるせぇ! 殴られてろ!」
蔦を使ってブレアを絡め捕ろうとするハルに、ブレアは嗤ったままもう一度蹴りを入れた。
転がるハルの前に立ち、ブレアは腕を組む。
「立て。戦い方を教えてやるからよ」
ニヤリ、と口角を上げ、アルフよりも凶悪な嗤い方をするブレアをハルは睨みつけ、足に力を込め立ち上がる。
「まず、自分の姿勢だ。お前のは基本からなってない。お嬢ちゃんの方が全然上だな」
ティアナと比較することでハルの対抗心を焚きつけながら、ブレアは指示を出し続ける。
さまざまな角度から、ブレアはハルに指摘していく。
「そのまま、腰を落とす」
素直にブレアの指示を受け入れ、ハルは躊躇うことなく実践する。
自分の動きが姿勢が改善されていくのを感じつつ、ハルの殺気は膨れ上がる。
「殺気を出すな」
しかし、すぐに指摘されたそれにハルは再度苛立ち始めた。
「俺を相手に、1本取りたいんだろ?」
「初対面で1本取ってるわ」
4月頭の事件を蒸し返すハルに、2人は眼を合わせて笑う。
そして唐突に、嗤いを消したブレアが突進してきた。
「オラァ!」
「蔦ァ!!」
ハルは踏み込んでくるブレアの足元に蔦を発生させる。
だが逆に、蔦はブレアに踏み出しとして使われた。
「歯ぁ食いしばれ!」
自分の懐に入り込み、拳を振り上げてくるブレアに、ハルは大きく眼を見開き。
口角を上げてみせた。
「!?」
ハルは自分の首に蔦を巻き付け、後ろへ勢い良く引っ張らせる。
そのままブレアの拳を躱しつつ後ろへ回転し、ブレアの顎に蹴りを入れた。
「ガッ!?」
「ハッ!!」
それは、ハルが初めてブレアに攻撃を決めた時と同じ手段だった。
蔦の補助により綺麗に着地したハルは、顎を抑えるブレアを見下ろし嗤って見せる。
「反則だろボケェ!!」
「お前の潜伏のが反則だバカめ!!」
やられやり返す二2人はそのまま激化していく。
収拾のつかなくなった2人は、昨日と同様に、グラナートが直したばかりのベンチを破壊した。
「……」
「「すいませんでした!!」」
拳骨を落とされた2人はグラナートに平謝りし、許す気の無いグラナートは仁王立ちで2人を見下ろす。
再度、ハルとブレアの悲鳴が響き渡った。
昨日、フィーネがハル達4人を観察していた位置に、男の影が1つ。
その者は拳を強く握り、隠しきれない殺気を辺りに漂わせていた。
「必ず、殺してやる……!」