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第96話 ハイド&シーク

 5人は特に会話があるわけでもなく、ブレアが運んできたサンドイッチを食べていた。

 ふと、レイがアルフを凝視する。


「なんだ?」

「アルフの、チームメイトの方々の名前は、なんていうんですか?」


 レイの熱い視線に、アルフは気分がよさそうに彼女に声をかける。

 珍しく照れず、アルフを見つめ続けるレイは、1つの疑問を口にした。


「あぁ、アイツらは、」

「アルフ」


 今更ではある質問に、アルフはコーヒーを飲みながら答えようとした時、彼を呼ぶ聞きなれない声があった。


「あ?」


 アルフが声のした方を見上げると、そこには今まさに話題に上がっていたアルフのチームメイトであり、クラスメイトであり、幼馴染の2人が立っていた。


「今日の昼は俺達とって、自分で言ったんだろ?」

「こうなるとは思ったけどさ……」


 呆れたようにアルフを見る2人は、チーム戦決勝対戦相手であった3人へ視線を移す。


「……よくこいつ等と居られるな」

「丁度いい、お前等自分で名乗れ」


 呆れを通り越した尊敬の眼でアルフを見る2人に、大した説明もなくアルフは命じる。

 従う理由もないが、2人は大人しく名乗り始めた。


「ハイド、3年1組。よろしく」


 先に、眼鏡をかけた生徒が一歩前に出て名乗る。

 決勝戦で範囲魔法を使っていた生徒で、片手には魔導書が抱えられており、アルフとは真逆の優等生タイプなのだとハル達もはっきりと理解できる風貌をしていた。


「シーク。2人と同じ3年1組。よろしく」


 後から名乗ったのは特徴の薄い冴えない生徒。

 決勝戦で魔力供給を行っていた生徒で、アルフとは違い、親しみやすさがあった。


「ハイド&シーク、ですか」

「良く知ってるな」


 レイの呟きに、シークは素早く反応し、人懐っこい笑みを向ける。

 その笑顔にティアナ達女性陣は和み、安心感を感じた。


「こいつ等、従兄弟同士なんだよ」

「似てない!」


 アルフが付け加えるように発した言葉に、魔術の種類、容姿、声、親しみやすさの全てが似ることの無い2人に、ハルは堪らず声を上げる。

 しかし、シークは気を悪くすることもなく笑って見せる。


「だろ? 俺も思う」

「同感だ」


 温かい笑みを見せるシークに対し、ハイドも表情を変えることなく同意する。

 言葉1つとっても似ていない2人に、ハル達4人は興味をそそられる。


「どちらがお兄さんなんですか?」

「お?」


 何気なく問いを溢したテレサに、シークは大きく反応する。


「見たことの無い可愛い子がいる……!」

「こっちが兄だ」


 身を乗り出すシークの肩を掴み、ハイドは淡々と告げた。

 従弟に止められた従兄は、気分を損ねることなく上機嫌で補足する。


「ハイドが隠れて、俺が見つけるってな」

「弟を兄が見つけるんですか」


 ハイドが兄だと思ったレイとティアナは目を丸くし、レイは自分なりに情報をまとめてみせる。

 それを見てまた笑うシークは、密かにアルフの嫉妬を買っていることを知らない。


「まさにハイド&シーク」

「で? 何しに来たんだ」


 機嫌を損ね始めたアルフが、シークを睨みつける。

 また理由なく怒っていると勘違いしたシークは、だがアルフを指さす。


「お前に呼び出されたから待ってたのに、全然来ないから迎えに来たんだ!」

「忘れたとかいう次元じゃないぞ!?」


 反応の鈍いアルフに、従兄弟2人は詰めかかり、日ごろの不満を暴露し始めた。

 賑やかに口喧嘩するアルフの姿は、どこか嬉しそうだった。


「お前のせいで俺達は昼飯もまだなんだぞ!」

「あ、あの、よろしかったら……」


 アルフへ不満を爆発させるシークとハイドに、ティアナはサンドイッチの乗った大皿を差し出す。

 まだ完食しきれていないそれに、シークは眼を輝かせた。


「いいのか!?」

「えぇ」


 シークが確認を取ると、アルフ以外の4人が笑って頷く。


「正直、多すぎるくらいだったので」

「いただきます!」


 勢いよくサンドイッチを掴んだシークは、ハイドの分も受け取り、従弟の世話を焼く。

 2人は一切れずつ頬張りながら、アルフを引っ張り立ち上がらせた。


「しゃあねぇから行くわ」

「サンドイッチありがとな!」


 賑やかに、楽しそうに去っていく3人の背中を、残された4人は見つめていた。


「あれ?」


 ふと、ティアナは異変に気が付く。

 ティアナには、シークの周りに何か赤いモノが漂っているように見えた。

 他に誰も気づいている様子がなく、ティアナは首を傾げながら疑問を自分の中に仕舞い込むことにした。




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