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希望の星の強調介入ー8

由美香が、何やら通信している。

航輝と都には、その通信が終わるまで待ってやるだけの義理も余裕も無かった。

 パニック状態の由美香へ、航輝と都は容赦なくその武器を振るう。

 怪人達との戦闘で、かなりの怪我をして前衛で戦うことが出来ない航輝の代わりに、都が前衛に立ってくれた、


 由美香の近くまで二人は接近する。由美香が咄嗟に武器を振るうが、レッドのスターライトガンが閃き大剣の中ほどに命中させ跳ね上げさせた。

 その間、バイラオーラが由美香の懐へ入り込む。慌てて由美香が手に持った両手剣を振るうが靴で柄を蹴り上げられる。

「今の時代の戦いは……」

 蹴り上げた足を軸足に体を回転させさらなる一撃を叩きこむ、そうしながら由美香にだけ聞こえる距離で、悪の女幹部は囁く

「組織背負って『演じきる』度胸があって……初めて勝つことが出来るってものよ!」

 由美香は苦し紛れに、両手剣を横なぎに振るうが、バイラオーラの腕を掴んだ航輝が自らのほうへ引っ張る。都は、その力に抗わずに、まるで二人でタンゴを踊っているかのように体を回転させながら、航輝に密着した。

 間に出来た空間を両手剣が虚しく通り過ぎた、瞬間、航輝の熱線銃とバイラオーラの靴とが由美香の体の中心を狙ったまま止まる。

 航輝に半ば体重を預けた状態のまま、バイラオーラは艶やかに、質問を投げかけた。

「あなたにその気概がありまして?お・ね・え・さ・ま」


由美香の顔が悔しさに歪む。

航輝は、都を抱き寄せたまま銃口を突きつけて言った。

「聖園さん」

由美香は答えない。

「俺は、貴女の所で戦う気にはなれない」

航輝は、あわてて武器を構える由美香に少しずつ近づきながら、小声で言った。

あまり大きな声を出すと周囲に聞かれてしまうが、これだけは言ってやりたかった。

「貴女のいう事は確かに『正義』だ。だけど、自分の意見だけが正義だという貴女の思考は、世界征服の野望に燃える悪の首領達と、どこが違うんです?」

「……ッ!!」

 言葉の衝撃に由美香の目が見開かれる。自分が悪の首領と同じだと言われたのがよほどショックだったのだろう。だが、知った事ではない。悠里や鋭一を襲撃してまで、自分の意志を通すようなやり方に、航輝は、付き合うことが出来ない。

「どうか、お引き取り下さい。吸収合併で、大きな組織に呑みこまれるのが嫌なんじゃない、『貴女の組織』に呑み込まれる事が嫌なんです」

航輝は、自分の胸を指さし、言った。

「俺の正義はここにあります、貴女の元にはない」

そこには白く染め抜かれた星がある。血や埃で薄汚れていても、その星はまだ白かった。

 由美香は、その言葉を静かに聞いている。俯く仕草からはその表情まで見て取れない。

 航輝は、少し言い過ぎたかもしれないと思った。抱き寄せている都が手を握っていてくれなければ、由美香を慰める一言を発していたかもしれない。

 波止場は、中継をするヘリの音以外、何も聞こえなかった。

いつもは、口さがないセリフを吐く、観衆までも、静かに黙っている。

みな、由美香の次の行動を注視していた。

「……ククッ」

由美香の口から、低い笑い声が漏れる。

「クハァッ!!ハァッハッハァァ!!!ヨクゾ見破ッタナ、スタァライツⅤッッ!!!!」


(乗ってきた!?)

プライドの高い由美香が、航輝達の『嘘』に乗ってくるとは予想外だった。

悠里との作戦会議中に、一番いいパターンとして挙げられていた反応だった。

由美香は、顔を真っ赤にしながらも、航輝達の『嘘』に乗ったのだ。目には涙が浮かび(今回だけは乗ってあげます)という視線を投げかけている。

結構、熱のこもった演技であった。


周囲のギャラリーからも、絶叫に近い言葉が飛び交った。

「おおおおお、本当だった!!」

「精神を乗っ取っていた怪人がでてきたぞ!」

「ああ、由美香さん可哀そう……」


由美香は、航輝を睨み付け、両手を大きく動かして悪の怪人らしい動作をする。

だが、慣れていないので、『ふしぎな踊り』にしか見えない。

「我コソハ、《忍び寄る影》ノ怪人、マ……」

「マインドシャドウ」

 名前が思い出せない由美香に、都が小声でアドバイスする。

「我コソハ、《忍び寄る影》ノ怪人、マインドシャドウッ!!聖園・ジゼル・由美香の精神に巣食う我ヲ、ヨクゾココマデ追イ詰メタ」

そう言いながらも、視線でしきりに

(早く、このバカげた茶番を終わりにしなさいっ!)

と、訴えてくる。

航輝は、由美香の決断に感謝した。

「出てきたな。マインドシャドウッ!由美香さんの心から立ち去れっっ!!スターライツガン!!」

 大声で掛け声をあげると、熱線銃を連射する。正義の大組織、由美香のコスチュームの防御力をもってすれば、航輝のパーソナルウエポンなど、軽いパンチを受けた程度だろう。

「ギャァアァァ!!!コノ女、オモイノホカ精神力ガツヨイ……オノレ、スタァライツⅤ!オノレ!アマチコウキィィィ!!」

由美香が倒れ伏す。

航輝は、由美香に近寄ると、抱き上げ解放する振りをして、

「良かったっ!!気絶はしているが、命に別状はなさそうだ!!!と大声で叫んだ」

 観衆から盛大な歓声が上がる。夜も遅くなっているのに、煩いほどの熱狂である。

「乗ってくれて、ありがとう御座いました」

 航輝は、抱き上げた由美香に囁く。

「これきりですわ、もう二度と、こんな事は致しません」

 抱き上げられ目を瞑りながら、由美香も呟く。気絶した事になっているから、自分で動くことは出来ないのだ。

「天地航輝、一つだけ答えなさい。わたくしの正義は偽りですか?」

 航輝は考え、そして言った。

「俺は、小さな町の正義の味方です。世界を股にかける正義の味方のやり方は、解りません。なので、あなたの正義が偽りかどうか言えませんが……これだけは言えます」

「なんです?」

由美香が聞く。

「おれが、自分の『やり方』を見つけることが出来たのは、別の人の正義……つまり貴女の正義に触れたからです。由美香さん。他の人の正義を知ってください。でなければ、その存在を認めてください。そうすることで、自分の正義が偽りかどうか、見えてくるはずです」

 由美香は無言だった。

 無言だが、その答えにとりあえず満足している様であった。


 やがて、聖園コンツェルンの回収班が到着する。由美香が怪人の演技をするまで、後方で待機していたのだ。

 タンカに乗せられ、運ばれる由美香が、首だけ傾けて航輝の方を見ている。

 由美香の、口だけが動き何事か呟いている。「オ・ノ・レ・ア・マ・チ・コ・ウ・キ」そう言っているような気がした

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