復讐者のM&Aー1
店主の言葉は、現実となった。
その日から、航輝達《スターライツⅤ》には、作戦のキャンセルを伝える電話が殺到したのである。
都との屋上での戦いの後、悪の組織との作戦もようやく増え始めてきた矢先であった。
「はい、はいどうも―――我々に落ち度がございましたでしょうか?―――いえ、そういうわけでは。―――はい、残念です」
悠里が電話を受けている。喋っている言葉を聞く限り、また作戦のキャンセルの電話だろう。
「―――ええ、またよろしくお願いします」
電話が終わった。
「またキャンセルか?」
航輝は、聞いた。そうであると解ってはいても、聞かずにおられないのだ。
「うん、《隻眼の魔王》さんから、二十三日と二十七日の作戦をキャンセルするって」
悠里が困惑した顔で、応える。
「違約金払っても良いから。やめさせてくれって言ってたよぉー」
《サンクチュアリ》の『圧力』の効果は絶大であった。
おそらく、「アイテムを販売するな」と圧力をかけるだけではなく、「作戦を受けるな」とも通達したのだろう。
結局、三日後には全ての作戦がキャンセルされてしまった。
悪の組織が、その場に出てきてくれないなら、正義の味方に出番は無いのである。
「せっかく、都さんが屋上で戦ってくれたおかげで、作戦をやらないかってオファーが沢山来ていたのに……」
悠里が、落ち込んだ様子で、バツ印が並んだカレンダーを眺めている。
航輝も、途方に暮れていた。
この、作戦キャンセルの嵐は、《サンクチュアリ》の圧力とみて間違いないだろう。
一度「《サンクチュアリ》から『受けるな』と言われたのですか?」と聞いてみたら、ひどく狼狽していたから間違いない。
しかし、それが解ったからと言って、航輝達に出来る事は少なかった。
「こうなったら、悪の組織が侵略活動する場所に、いち早く駆けつけて戦っちまうか?」
鋭一が、秘密基地の自分の机に座り、頭を掻きながら言う。
「そんな事したら、戦いに出て来る相手の正義の味方さんに迷惑ですし、そもそも間に合いませんよ」
悪の怪人が暴れていると言う情報が入った後にその場に駆けつけても、その悪の組織と戦う約束をした正義の味方が、既に戦っているのだ。戦う予定の正義の味方は、事前にその場で待機しているのだから、間に合うはずが無い。
「まぁなぁ。でも、他の悪の組織に、また『持ち込み』のをかけたとしても、受けてくれやしないぞ?」
「でもやらない訳にはいきませんからね。」
心当たりがある訳では無いが、どこか作戦を受けてくれるところを見つけなければならない。しばらく学校は休まないといけないだろう。明日と、明後日を休めば土日に入るから四日間は、回れるはずだ。
航輝は、鋭一の発言が、おそらく正解なのだろうと思いながらも、諦めきれないでいた。
「とりあえず、手当たり次第にやってみますよ。鋭一さんと、悠里は《サンクチュアリ》で何があったのか、調べてくれ」
一瞬、都の所を……とも考えなくも無かったが、それを振り払う。
今回は、単に《ラ・フィエスタ》を頼れば良いと言う話ではない。
組織の圧力を取り除かなければ何の解決にもならないし、大きな組織に睨まれている以上、頼ったら《ラ・フィエスタ》にも危険が及ぶのだ。
そう考えながら、航輝は作戦資料を持って、悪の組織へと『営業』に向かったのだった。




