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9-24(陣営戦11~レオニード対ベルゼフ).

「これで、お互い邪魔する者はいない。主人公、ちょっとは楽しませてくれよ」

「だから、俺は、レオニードだって言ってんだろ!」


 こうなったからには、スキルを出し惜しみしても仕方がない。俺は『集中』と『雷剣』を使った。俺の集中は効果時間が2段階、CTが1段階強化されている。最上級職では最大限の強化だ。だが、相手も転生者だから似たような強化をしているだろう。


 俺はすぐに魔剣ソウルイーターで斬り掛かったが、ベルゼフは俺の初撃を『回避』で防いだので『雷剣』の硬直効果は空振りに終わった。30秒経たないと次の硬直効果は発生しない。


「『シールドバッシュ』!」

「『ダッシュ』!」


 俺はもどきではない本物の『シールドバッシュ』で硬直させようとしたが『ダッシュ』のスーパーアーマー効果で防がれた。


 正直、上手い…。


 『流浪の傭兵団』は、覇権クラン『TROF』に対抗するために、いろいろなゲームでPVP巧者として知られていた者達が集まって作ったクランだ。そして、ベルゼフはそのサブマスターだ。だが、俺だって『TROF』のメンバーであり、この世界でも訓練を積んできた!


 カーン、カーン!


 俺とベルゼフの剣が交錯する。俺はベルゼフがスキルを使うのを警戒しながら戦っている。一瞬の気も抜けない。ベルゼフのほうも慎重だ。さっき『雷弾』を見せたので雷系スキルを警戒しているのかもしれない。俺は『跳躍斬り』や『剛剣』を取得していないのでCTでない残りの状態異常効果のある攻撃は『挑発』と『天雷』の二つだ。『天雷』は最後の最後にとっておきたい。そろそろ『雷弾』のCTが空ける…。それに『雷剣』の硬直効果も…。


「うっ!」


 しまった! いろいろと考えていたら、ベルゼフの『剛剣』を食らってしまった。『剛剣』だと思って『回避』で避けたら、その後に本物の『剛剣』がきたのだ。この辺りの駆け引きには運の要素もある。


「がはっ!!」


 すぐさまベルゼフは『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』のコンボを使ってきた。俺の得意としているコンボを俺自身が食らうことになるとは…。


「『雷弾』!」


 CTの空けた『雷弾』は『回避』で躱された。だが、本命はこっちだ。


「『挑発』!」

「『浄化』!」


 ベルゼフは『浄化』で『挑発』の効果を一瞬で解除した。完璧なタイミングだった。こいつは聖剣士だから『浄化』を持っているのは当然か…。それに、盾系の職を相手にする時、一番警戒すべきは『挑発』だとベルゼフはわかっている。


 ベルゼフの『集中』も2段階効果時間が延長されているようだ。レベル差によるステータスの違いで俺は少しずつ遅れを取っている。


 俺には『雷神の守護者』があるのに…。


 まあ、もともと速さでは最上級重剣士より聖剣士のほうが上だ。『雷神の守護者』の効果込みで互角程度だろう。


「『二段斬り』!」

「『二段斬り』!」


 俺の『二段斬り』とベルゼフの『二段斬り』が交錯する。火花が見えた気がした。やはり俺のほうが少し押されている。突然距離を取ったベルゼフは『跳躍斬り』を仕掛けてきた。予想していた俺は『ガード』で防ぐ。


 ガシッ!


 俺の盾とベルゼフの剣が激突する。ベルゼフの硬直効果のあるスキルは『剛剣』と『跳躍斬り』だけなのだろうか? わからない…。


 その後も一進一退の攻防が続く…。そうこうしていたら『雷剣』の効果が発動してベルゼフが硬直した。


「『二段斬り』、『ダッシュ』、『スラッシュ』!」

「ぐはっ!」


 今度は俺のほうがベルゼフに得意のコンボ攻撃を食らわせた。


「『大回復』!」


 ベルゼフは俺が与えたダメージを自身の『大回復』ですぐに回復した。うーん、面倒だ。


「ふむ、思ったより速いな」とベルゼフが言った。『雷神の守護者』の効果に気がつかれたか…。


 その後もお互いの駆け引きが続く…。俺はベルゼフとのギリギリの駆け引きを楽しんでいる自分がいるのを感じていた。これが、ゲームなら良かったんだが…。


 耐久力は俺ほうが上だし魔剣ソウルイーターの効果もある。一方、ベルゼフは回復魔法スキルを持っている。比較すると、レベル差のためなのか、それとも技術の差なのか、俺のほうが押されている。ベルゼフはこの世界での訓練を怠っていない。俺にはわかる。こいつは俺が殺したタロスとは違う。ジリジリと俺のHPは削られている。


 戦いは、1対1のPVPにしては時間の掛かる地味なものになっている。


 お互いに状態異常効果のあるスキルを『回避』やスーパーアーマー効果のあるスキルで無効化し合った後、残ったスキルで撃ち合う。そんな戦いが続く。俺には『ガード』があるが、ベルゼフには『浄化』がある。俺は、ベルゼフが持っていない『雷弾』や『雷剣』を持っているが、ベルゼフは俺の持っていない『跳躍斬り』や『剛剣』を持っている。お互いに相手が持っているスキルを探りながらの戦いだ。


 お互いにフェイントも使うから、ややこしい。また、ベルゼフが『大回復』を使った。ベルゼフは決して油断せず慎重に戦っている。少しずつ押されている俺のHPは20%に近づいている。やっぱり『死線』で逆転を狙うしかないみたいだ。


「主人公! いや、レオニードだったな」


 ベルゼフが突然俺の名を呼んだ。


「なんだ?」

「レオニード、お前は最初から剣に雷属性を纏わせていた。ということは、お前は魔剣士を経由して最上級重剣士になったんだろう? お前が剣士とは思えない威力の『天雷』を使ったのも見た。魔剣士を経由したのなら、お前は必ずあれを持っている」


 バレているのか…。


「『死線』をね…」


 『死線』は格上を倒すための最後の手段のようなスキルだ。『迷宮物語』のプレイヤーなら当然知っている。『死線』からの『天雷』は、俺の必殺技だ。何度もこれに助けられた。


「僕に『死線』は通用しない。『天雷』もだ」


 はったりだ!


 今までの戦いぶりからして、俺のHPが20%切った後、ベルゼフが一気に俺のHPを削り切れるとは思えない。俺の耐久力は高い。おまけに『死線』を使えば耐久力だって倍になる。ベルゼフが一気に俺のHP削れないのなら、『死線』からの『天雷』で俺が勝つ! 


 その後、何度かの攻防を経て、頭の中の『死線』の文字が使用可能を示す明るい色に変わった。俺は心の中で(『死線』!)と叫んだ!


 ベルゼフは何かを悟ったように俺を見た。俺とベルゼフの視線が交錯する。ベルゼフ、次の『天雷』で終わりだ!


 消えた!?


「がはっ!!」


 あれ? 俺は背後から攻撃を受けて体を反らして宙を睨んでいた。凄い速さで3回斬られた気がした。『3連撃』を食らったのか? しかもクリティカルが発生したみたいだ。


「『剛剣』、『二段斬り』!」

「がはっ!」


 俺はなんとか振り向こうとしたが、その間もなく、続けて『剛剣』から『二段斬り』のコンボを食らった。俺は前のめりに倒れ、ガーゴイルの盾がガシャンと音を立てた。


 痛い……俺は死ぬのか…。


「レオニードだっけ? 自分だけが御遣様からスキルを貰ってるなんて思ってないよね?」

「……」

「お前、魔剣士になれたってことは、御遣様から雷属性のスキルを貰ったんだろう? 僕も同だよ」


 そうか…さっきのはアサシンの必殺スキル『回り込み』だ。一瞬消えたように見えたのは背後に回り込まれたからだ。そして背後からの『3連撃』か…。しかもクリティカルまで発生した。完全に背後を取られて攻撃されるとクリティカルが発生しやすいからおかしなことではない…。ベルゼフは、俺に態勢を立て直す暇を与えず、『剛剣』から『二段斬り』のコンボで追撃した。敵ながら見事だ…。


 確かに、俺だけが御遣様からスキルを貰っていると考えるのは傲慢だった…。『回り込み』を持っているのを知ってさえいれば…対処のしようはあったのに…。シルヴィーだって御遣様から『解毒』を得ていた。ジギルバルト団長だって…。


 俺は…慎重さに欠けていた…。


 俺は必死で腕に力を入れて立ち上がろうとするが、ほとんど力が入らない。ここでもう一撃入れられたら、待ってるのは間違いなく死だ。俺のHPは既に20%を切っていたのだ。『死線』の効果で耐久力が2倍になっていたおかげで、何とか生きているだけだ…。


「べ、ベルゼフ…な、なぜ…俺が『死線』を使うまで待ってたんだ…? もう少し前に『回り込み』を使っていたら…既に…お、俺は死んでいた…」

「そうだなー。HPが減ったのを確認するためもあるけど…それより、それが、お前を絶望させる一番のタイミングだと思ったからかな」


 くそー、ベルゼフの奴め…。せめて、アディ達が生き延びてくれればいいんだが…。


「さて、そろそろ終わりにするか…。思ったより時間は掛かったけど、僕の危ない場面はなかったかなー。ちょっと名残惜しいけどね」


 ベルゼフは倒れている俺を見下ろすと、戦いを終わらせる最後の一太刀を俺に入れようと剣を振りかぶった。血の匂いがする風が俺の頬を撫でた。

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― 新着の感想 ―
まあ慢心ですな。慢心してなかったとしてもこの結果が覆っていたかと言うと怪しい感じはしますが。 とは言えベルゼフの方も慢心しているのでとどめを刺せなそうなのが何とも言えない気分に。笑
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