4─X
苺さんより、新たに1─XVIIIに挿絵を頂きました。
是非一度ご覧下さい(F`・ω・)ゞ
更にその日から三日が経過し、14月5日。
この日、ガイアは読み途中であった『伝記 賢人ゼノン』を読み進めていた。
そして、その本を五分の四辺りまで読み進めたところで、ガイアは思わずその一文を二度見する。
(ふんふん……。
二人目のお弟子さんは……えっ、"アストリッド"……!?)
交易都市エピウスに居を構える賢人ゼノンが取った、二人目の弟子。
それは、"アストリッド"という名前の少女であった。
しかし、その人物の外見描写を見る限りでは、ガイアの知るアストリッドとは、一つだけ決定的に違う箇所があった。
("鮮やかな水色"……? アストリッドさんは白髪……と言うより、雪色だけど、水色では無いよな……?)
それは、髪の毛の色である。
この異世界では髪の毛の色素が余程抜けないように進化を遂げたのか、髪色は老化するだけではそうそう変わる事はない。
しかし、このアストリッドとガイアの知るアストリッドの髪色は、明らかに違いすぎているのだ。
(いやでも、もしこれが仮に本人だとしたら……この時がこの歳だから……え、あの人300歳越え……?)
途方も無い年齢に、ガイアの頭は混乱していた。
この異世界の人間は、種族によって寿命が異なるという事が無い。
しかし、アストリッドだけが何らかの原因で極端に寿命が長くなってしまったと考えれば、アストリッドの喋り方がどこか年寄り臭いところや、ランクSSSの冒険者だという話も頷ける。
だが、ガイアがそうと確信を持つには、あまりにも情報が不足していた。
(今度、尋ねてみようかな……)
そんなことを考えながら、ガイアはアストリッドの情報を知るために伝記を読み進めようとした。
しかし──
「ガイアさーん、そろそろお時間ですよー?」
新たな情報を得る前に部屋の入り口から姿を現した看護師に呼び出されたガイアは、大人しくしおりを挟んで本を閉じ、看護師と連れ立って主治医の診察室へと向かうのだった。
◇ ◇ ◇
("怪我の治りが予想より早い"か……。
まぁ、加護のお陰で治る速度は倍だし、それも当然かな)
担当医の先生との面談、及び魔法による定期検診が行われた後、ガイアは診察室を後にして一旦部屋へと戻り、本を持ってラウンジへと移動していた。
ガイアは、窮屈なベッドでは読みにくいと言うことに三日目にしてようやく気が付き、読書の続きをラウンジで行うことにしたのだ。
しかし──
(……混んでるなぁ)
お昼前とあってか、ラウンジの席は患者やその家族等でごった返しており、殆どの席が埋まっている状態であった。
これでは、落ち着いて読書等出来そうに無い。
そう思い、諦めて病室へと戻ろうとしたその時、ガイアは視界の端に見覚えのある人物を見たような気がして、もう一度振り返る。
そして──
(……あれ?)
喧騒に包まれる席が多い中、四人用のテーブル席に一人で座っていた少女の姿が、ガイアの目に留まった。
真ん中の生え際で綺麗に左右対称に分かれ、肩甲骨まで届くほどの長さの綺麗な銀髪を持った眼鏡の少女は、周囲の喧騒とは無縁と言わんばかりにページをめくり、その小説らしき本を読み進めていた。
しかし、ガイアが気になるのは、その本の内容等では決してない。
(あの子って、確か……)
その少女は、以前物体X騒動で病院に運ばれたガイアがラウンジで待ち時間の暇潰しを模索していた際、本棚の前で一言言葉を交わしたあの時の少女に他ならなかった。
だが、ガイアはその時、その少女を遠巻きに見つめる、やや素行に難があるという噂の、年下の冒険者達が居るのを見逃さなかった。
今のラウンジは人でごった返しており、たった一人の少女が四人席テーブルに座って占拠しているその光景を、快く思わない者達なのだろう。
その一団は、その少女を遠巻きに睨み付けながら、次第にその少女が座っている席へと近付いて行く。
(まずい……!)
もしかすると、もしかするかもしれない。
そう直感で感じ取ったガイアは、あえてその一団に気付かぬふりをしながら、早足気味に少女の元へと向かう。
そして、その若者達よりも数秒早く少女の元へ辿り着くと、こう声を掛けた。
「……その本、面白い?」
その声で、ようやくガイアの存在に気付いたのだろう。
少女はガイアの方へと顔を向け、声を掛けてきた人物の顔を見て、僅かに怪訝な顔をする。
しかし、すぐに以前言葉を交わしたときの様に無愛想な無表情へと戻り──
「あなたは……」
そう一言だけ言ったところへ、ガイアは知り合いのような口調でこう返す。
「駄目じゃないか、こんなに人が居るのに一人で四人席なんて」
そう言われて、少女は驚いたように周囲をキョロキョロと見回し──それで状況を悟った様で、ガイアの方を向いて立ち上がりつつ、こう言った。
「……ごめんなさい、本に夢中で気付いて無かったの。
その位、面白くて」
少女は立ち上がると、窓際のカウンター席へと移るようガイアに提案する。
ガイアもそれを承諾すると、数歩向こうで立ち止まっていた例の年下冒険者達に「俺の連れが、ごめんね」と謝りつつ、頭を下げた。
しかし、どうやらその冒険者達もガイアのことを知っていたらしく、「いや、まさかパイセンの知り合いだと思わなくて」と言って謝り返してきたのは、ガイアも予想外の出来事であった。
かくして、事の一件は未然に防がれ、ガイアはその少女と共に窓際のカウンター席へと移動するのだった。




