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魔法剣士ガイア  作者: ふぉるて
第3章「胡蝶の決意」
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3─IX

「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております!」


 店員の爽やかな見送りの挨拶と共に、ガイアは施設エリア(北西部)のカット専門店「カット カトカルロ」を後にした。

 伸びた分の髪を散髪してスッキリしたガイアは、もう間もなく正午になることから、昼食に何を食べるかということを考えていた。


 そんな矢先に、視界の端に映る見慣れた人物が一人。

 その藍髪サイドテールが特徴的なガイアの協力者──アスナは、建物の物陰から、城壁沿いの大通りの方を覗き込んでいた。


「……アスナ?」


「えっ?」


 不意に声を掛けられたアスナは、驚いたような声を出しながら、ガイアの方へと振り向く。

 そして、アスナ本人であることを確認したガイアは、改めて質問する。


「……こんな所で何してんだ?」


 すると、アスナは若干暗めの表情で、こう切り出した。


「……この先に、修道院があるでしょ?」


「うん」


「それで、私がたまに顔出しに行ってるのも、前に説明したわよね?」


「うん、聞いた。月に一、二回だっけ?」


「で、今日もそこに行こうとしてたんだけど……、修道院に、あの男が入ってく所を見ちゃって……」


「あの男って……?」


 その人物について皆目見当が付かなかったガイアは、率直にその質問を問いかける。

 すると、アスナは苦虫を噛み潰したような表情で、一言こう言った。


「……女の敵」


 その言葉を受けて、ガイアが考えること一秒。


「名前が"イ"で始まる?」


 その答えに、アスナは無言のまま頷き、こう言った。


「あの男、修道院で保護してる女の子すら口説きかねないから止めに行きたかったんだけど……、生理的な嫌悪感が沸いてきちゃって……」


「それで、中々踏ん切りが付かないままここに?」


「うん……」


 その言葉を聞いて、ガイアの疑問は解決した。

 女たらしのイーシスが修道院に入ったとあれば、子供達に悪い影響が出ないとは到底言い切れない。

 ガイアは意を決し、こう言った。


「俺も一緒に行くよ」


「えっ……、いいの?」


「ここまで聞いて、行かないなんて言う訳ないだろ」


 ガイアがそう言うと、アスナは表情を僅かに明るくさせ、こう言った。


「……ありがとう。

あ、髪切ったのね」


「え? ああ、うん。そこの安いとこで」


「あぁ、やたらと"カ"が多くて噛みそうになる?」


「うん、なんか言い間違えそうになるとこ」


 そこまで言って、二人は軽く笑い合う。

 アスナの顔には、先程までの暗い表情は見受けられない。


「……よし、行こう」


「ええ」


 ガイアと共に覚悟を決め、二人は修道院の玄関へと向かう。

 アスナが門の脇に付いた呼び鈴の引き金を引くと、玄関の内側から鈴の音が鳴り響く。

 そして、玄関の磨りガラス越しに人影が現れ、その人物は覗き窓を覗き込む。

 玄関がガチャリと音を立て、修道院の服装に身を包んだ初老の男が姿を現した。


「アスナちゃん、いらっしゃい。

君は確か……、ガイア君だったか。葬式以来じゃないかい?」


「はい、ご無沙汰してます」


 玄関を開けて出てきた初老の男は、今は亡きアスナの師匠であり、この修道院の院長であった男──ジーノの後任として院長職に就いた者である。

 すると、いつもと異なる様子に気付いたアスナが、悪い予感を感じつつも院長に質問する。


「あの……、院長先生、子供達はどうしたんですか?

いつもなら、エリスちゃんがそろそろ飛びついて来るはずなんですけど……」


 その質問に、院長は「ああ」と思い出したように呟き──


「子供達なら、今は中庭で別のお客人が相手してくれているよ」


嫌な予感が、的中した。

 しかし、二人ともそれを表には出さず、二人は平静を装って話を続ける。


「そうなんですか……。

俺、今日は子供達の相手を手伝えればと思って来たんですが……」


「中庭ですよね? 私達、お邪魔しても構いませんか?」


「ああ、そういうことだったのかね。一向に構わないよ。

アスナちゃん、彼を中庭に案内してくれるかね?」


「はい、ありがとうございます!」


 アスナがその返事をしてからの二人は、早かった。

 二人は即座に靴を脱いで揃えると、アスナを先頭に一陣の風の如く中庭に向かって走り去った。


(……そんなに子供達に会いたかったのかね……?)


 一人ポツンと取り残された院長は、静かに寂しい気持ちに苛まれるのだった。


 一方、院長からイーシスらしき人物の居場所を聞き出した二人は、修道院のお客様用に用意された外履きの靴に履き替えていた。

 そして、アスナがドアノブを回し、二人は中庭に続く扉を(くぐ)った。

 そこには──


「イーシス兄ちゃーん、こっちこっちー!」


「ははは、こら! 待て待てーい!」


「イーシスお兄ちゃん、次こっちー!」


「こらこらエリスちゃん、女の子が胡坐(あぐら)をかく物じゃないよ!」


少女達を口説く訳でもなく、はたまた少年達に女性の口説き方を教えていた訳でもないイーシスは、普通に子供達の遊び相手となっていたのだった──。

苦虫を噛み潰したよう:極めて苦々しい顔つき。酷く不機嫌そうな表情。

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