146話
此処は地下190階層である。
遂に此処へ来てしまったかぁ…………。
その辺にいるモンスター全部強いし。
多分、私がこのフロアーで現在一番弱いのでは???
隣にいる二人が強いから離れなければ大丈夫だろうけど。
でも多分、もう私遠目で視られてて、アイツは弱い扱いを受けてるに違いないんだ。
まぁそれは仕方が無いんだ本当の事だしさぁ。
……だからって弱い者イジメは反対なのなのだ。
もう全力で抵抗してやるんだもんね。
このフロアー。
基本は灼熱地獄的な雰囲気なんだけど所々冷気を感じるというか、何か冷ややかな所もあるのよね。
聞いてみたら所々に凍える花が咲いていて、冷気というか、極寒零度の寒さを発しているらしい。
「ワー涼しいー」とかぴとって触るともうヒャー大変ってぐらいの代物らしい。
危ない危ない全くもう。
結構綺麗な花なのになぁ。
今回地下190階層で始まるらしいトーナメント。
エントリーは登録制でナルちゃんが「登録済ませておいたからねー」とか床屋さんか何かの予約みたく簡単に話す。
そうなのだ。
ナルちゃんはこう見えてダンジョンマスター経験者。
ってことは単純にこのフロアーで一番強い時期があった事になる。
今現在はどうなのか解らないみたい。
その辺をナルちゃんに聞いたら「何体かイイ線いってそうな個体がいるんだけどなぁ……」
との事。
コレはもしかしなくても私の出番は無しで良いよんね!
と勝手に解釈してるとイトウさんから「お主は先鋒だからな」と怖い言葉を貰った。
いやいやどー見ても先鋒だけど私が大将でも良いでしょ、このチーム。
2人が負ける様な相手には「棄権します」の一言で終わらせようよう。
このトーナメントは勝ち抜き戦。
…………つまり勝っても負けても酷い状態なのだよ。
いきなり棄権しますとか先鋒で言える自信は無いし。
あーもう。
どうすればいいのじゃあ?
……そりゃー単純に全てに勝てるほどの実力があれば良いんだけど。
はー。お腹痛い。
イトウさんに無理ですってと話すと「まーとりあえず戦ってみぃ」
と返された。
そりゃーヤル前から何か言うのはって話しも解らんでは無ケドさぁー。
あー。憂鬱だ。
初戦は数日以内とか。
もう気を紛らわす為にお散歩でもしよ。
観光気分でトコトコと地下190階層を散歩した。
前に来た時はこのフロアーに居るだけで嫌な気分になった気がしたけど今はそんな気分にはならない。
寧ろ普通。
お花畑とかでも無いけどごく普通。
フロアー自体結構暑いし熱気も凄いんだけど殺気のような狙われる感じは無くなった。
とか思っていたんだけど、解りやすい位に絡まれてしまった。
誰かが何かをしていたんだ。
地面に這いつくばる様にその獣か何かは顔を地面近くに下げて頭を動かしている?
気になって見ていたら何をしているのか解った。
何かを食べている。
つまり食事。
勿論お食事かな、では終わらない私の感想。
食べられているモンスターはまだ生きているのか意識があるのか動いていたんだ。
「………………」
まぁそうだよね。此処はそういう所だ。
私が余りそういう場面に立ち会わなかっただけで実際は弱肉強食。
だって食べられる物探すのも結構大変だもの此処。
そこでふと思った。
何となくなんだけど、私は意思疎通が出来そうな生き物は食べられないかな。
だって「ギャー食べないでー」とか目の前で言われたら普通に無理でしょ?
多分、今までも多分食べていない…………と、思う。いや自信は無いケド。
ふぅ。
――――余り考えちゃダメだね。
精神をヤラレル。お腹に入れば食べ物で。
それは生きている証拠でもあるんだ。
まぁ食べる物を選ぶぐらいは勘弁して貰おう。
心の中で誰かに謝っているとその当事者。
ガツガツと食べている誰かが振り返る。
「オイ、オマエ……オマエも美味そうだナ…………」
「…………そう。良いよ? 試してみる?」
こんなことでは動じなくなった私。
嬉しくもあり悲しくもある。
口を腕で拭って此方に近づいてくるモンスター。
恐らくはリザードマン系の亜種だけど尻尾が異様に短い気がする。
二足歩行。
牙が見えるぐらい大きい口。
爪が長そう。
エナメル系の肌色。
「今日はツイてる。美味そうダもんな、オマエ」
ヨダレをダラダラと垂らしながら此方へ向かってくる。
私は腰に差していた木刀を手にした時に。
とても強い風が吹いた。
いきなり過ぎて意表を突かれた。
コレ……攻撃なの?
と頭で考えていると正面のリザードマン亜種も風に飛ばされていた。普通にね。
無論、私も身体が浮いていて自由が微妙に利かない。
私は岩の壁に背中をぶつけて地面に着地。背中いたいお。
リザードマン亜種は運が悪かったのか反対側の赤いマグマの川に落ちていった。
「………………何だったの?」
状況を把握しようとしたけれど、単に突風。
風がこの周辺一面に吹いただけだった、と思う。
んんんん? ホントにそうかなと周囲を見ていると何かが凄い勢いで飛んできた。
大きさは私の半分ぐらいかしら?
もっと小さめ?
でも何だろう……バサッ、バサッと此方へ向かってくる何か。
いやいや、フォルムはもうドラゴンのソレだった。
「………………」
私よりも小さいドラゴンは私の正面まで飛んできて躓きながら着地した。
さ、流石にドラゴンを見るのは始めてだけど間違いなくコレはドラゴンだよね?
「………………」
かなり小さいけど冷や汗なわたし。
そのドラゴンが少し口を開けた。
私は咄嗟に一歩引く。
まさか強力なブレスとか炎とか吐いちゃう系?
とか考えていたらそのドラゴンは喋った「………………」
「…………え」
…………聞き間違いかしら。いや、聞き間違いよね?
そのドラゴンは私を見てこう話した。
「まま…………」
瞬間私のトラウマが蘇るがいやいや無い無い。
アレは夢の話しの筈。
今の現実はドラゴンの子供にママと呼ばれているだけであってとか考えていたけど、ソレはそれでおかしい事にも気がつけない私だった。
「キミは…………何処から来たの?」
「………………」
「言葉、話せる?」
「………………」
こちらをジッと見ているけどその他の言葉は話さない。
うーん。良く解らないなぁ。どおしよ。
「私はそろそろ帰るから、またね!」
そう話し来た道を戻ろうとすると後ろから引っ張られた。
「え……」
見ると私の服の裾を咥えていた。
「………………えー」
どど、どおしよ。
帰してくれない感じかしら。頭もすり寄せてくる。
うーん。と悩み咥えている裾を外そうとしたけど離してくれない。
「キミは…………どうしたいの?」
「………………」
しゃがんで話してみたけど何も返答は無い。
唯、裾を咥えてこちらを見ている。
目を見ると怯えたような……うーん。
何だろう…………。
仕方が無いから持ち上げてみると意外に軽かった。
身体もゴツゴツしていないで柔らかく暖かい感じ。
抱き上げると咥えた裾を離してくれた。
…………連れて行けと?
うーん。
親は何処かにいるのかしら。
ああ、イトウさんに相談してみよう。
多分此処に置いていってもこの子は付いてくるだろう。
白と灰色の様なフサフサした毛は気持ちが良い。
犬とか猫とかそんな感じの小動物。
飼えるかしらとか一瞬思ったけどいやいやドラゴン飼うってどうなのよと素で思った。




