145話
此処はカプリスダンジョン地下190階層の碧石エリア。
玉座を模した碧色の石に座る者が上を見上げて誰もいない空間に独り言の様に話す。
「何か、最近ダンジョンが騒がしいな?」
「……………………そうでございますか?」
誰もいない空間に『形』が形成されソレが問いに答える。
「あぁ、第105649回は来週からだろ?」
「はい――――親方様」
「……今回、ダンジョン王に俺はなれると思うか? 塵」
「前回は残念でしたが、今回は親方様に敵う者はおるまいと思います。私もいますから」
「敵は――――『結び目』と『血糊』ぐらいか?」
「はい。仮に現時点で……二人が手を結んだとしても今の親方様には勝てないかと」
「ふむ。今大会が楽しみだ。期待しておるぞ『塵拭い』よ」
「はっ。必ずやご期待に答えて見せます」
…………現時点か。良い読みだ。血糊の陣営に不穏な動きがあるのと一つ、そろそろ『奴』が孵化するかも知れない。
まぁ何も無ければ俺様の勝ちだが、そう上手くはいかないかも知れないな。
そして次の日のお昼ご飯時。私とイトウさんは地下200階層の壁の中の家で私が調理し用意したご飯を2人で食べていた。
「不味いのぅ…………」
「そ、そんなぁ。ご飯を作った人の前でそれは失礼ですよ! いとーさん。バッタ虫のステーキこんなに美味しいのに」
バリバリと食べながらも私はもう此処の食事に慣れてしまった。
はぁ……もう戻れないかもな私。バリバリむしゃむしゃのうまうま。
「…………いや、別のことなのじゃがの。生まれそうでのぅ」
「………………だ、誰がデスクぁ? 一体誰を孕ませたのデースっ! は、話によっては、知りませんよ??? ……イトウサン?」
しかも不味いだなんて! お父さんとして失格にも程がありますからねっ!
「いやいや、勘違いじゃ。ワシが言っているのはダンジョンから生成された卵が孵化しそうじゃという話しだよ」
「……なんだぁ。驚かせないでくださいませよう。全くもう!」
「お主も変な所で狂気を見せるの……」
「…………んで、何の卵が孵化するんですか?」
「ああ、それはの…………暴星龍という龍じゃよ」
暴星龍……………………ふーん。
「奴はとんでもない強さだからのぅ。幼体でも警戒レベルはマックスでの……」
「ほほー。そんな怖いモンスターがいるんですね?」
「そうじゃのう。何でも『上からの』知らせでは最近倒されたとかで騒ぎになっていたとかって話しじゃったかの?」
「へー。そんな強いモンスターでも倒されるんです…………ね? あ、アレ? …………暴星龍ってティアマト?」
「……ほぉ。お主みたいなモノを知らない者でも知っておるとは……流石暴星龍じゃのお」
「……………………あはは」
「…………お主。何かしたのか?」
「……あれれ、こ、このバッタのステッキ今日は美味しくないですね。お、可笑しいなぁああ?」
「…………怪しいのぅ」
イトウさん曰く、ダンジョンの中で暴れ回られるのは流石に困ると。
しかもこれから向かう予定の190階層に卵があり羽化寸前とか…………。
何の因果か運命か。
自覚は無いけど私が倒してしまった龍。
うーん……さ、流石に私だってバレないわよねェ……。
『我を倒したのはお前だな!!!』とか言われたら何か……自覚は無いけど心苦しいしヒーッて感じだよ。
ふーんむ。…………いやだなぁ。うん。逃げる準備すとこ。
まだまだノー天気な私だった。
そしてその次の日。いよいよ地下190階層へ向かう日が来た。
イトウさんに聞いた所、今はダンジョンマスターを決めるべくトーナメントがこれから始まるらしい。
「折角だし出場して優勝じゃの」
イトウさんは今回、私にナルちゃんがいるから優勝を狙おうとかとんでもないことを言い出した。
「優勝するとな……伝説級の品物が手に入るのじゃよ…………」
「…………へー」
前回のたこやき様の事を覚えている私はそんなイトウさんが欲しがる品物には用が無い。
「しかも……副賞として、巫女様に助言を頂ける」
「…………巫女様?」
「ああ、巫女様は未来を視るのじゃよ……変えられる未来を」
「……………………変えられる未来……って! それって結構凄くないですか?」
「そうじゃの。因果律すらも干渉するとか……そして巫女様は……………………」
…………最後の方はモゴモゴと言葉を濁していたイトウさんだが、聞こえてしまった。
可愛らしくてべっぴんさんとか言うてるしこのジジイは。
しかも照れてるようまじかー。
……イトウさんは…………無いなぁ。
強いけど。
まぁじじいだし。
ヒゲとかもっさりしてるし。
リアル多忙により久々の更新です。




