自分ルール VS 水中最強Ⅰ
開始と同時にレーグルとルサルカはお互い距離を取り、レーグルは弓を構え、矢を放つ。
1本じゃない。
12本同時の攻撃。
「……!」
驚いた様子のルサルカはアクアを出しながら大きく横に回避。
矢の軌道に作られたアクアの壁を何事も無かったように通過し、ルサルカは1撃かするように貰う。
「12本同時!?」
「範囲だけではなく、威力も高いですね」
ただ、アクアの壁を矢がすり抜けたって事は、レーグルの術中に落ちたんだろう。
圧倒的にルサルカにとって不利な状態。
そんな状況にもかかわらず、ルサルカも負けてない。
アクアの壁に仕込まれた大量の魔陣札。
大量のアクアがレーグルに襲い掛かる。
それを避けるどころか前進していくレーグル。
弓で接近するのか?
そう思った時、レーグルの武器が変わってた。
弓じゃない。
両方に穂がある、どう見ても槍のような武器。
「まさか弦を外して?」
「さっきのアクアを透過したのもそうですけど、これが狙いだったんでしょう」
レーグルは距離を詰め、突きをルサルカの右肩目掛けて放つ。
とっさに肩に纏ったアクアが防御の役割をする事も無く、肩先にもろにくらい吹っ飛ばされるルサルカ。
けど離れ際に更なるアクアを展開、さっきのアクアと合わせ、徐々にフィールドが水で満たされていく。
ただ、俺やマイルと戦った時とは若干違うように感じる。
若干渦を巻いてるのは気のせいだろうか。
レーグルは結界のギリギリ。
フィールドと観客席の境目のわずかな足場に避難してた。
うまい。
「水の中のみ我生きゆ。全ては嵐神のみ許される誇り高き御行」
マーカ・ヒーナの詠唱。
レーグルは再び槍に弦を取り付け、矢を放つ。
ルサルカは詠唱の間にも動いてるからか、矢が当たらない。
その間にも徐々に水深が深くなっていき、レーグルの足元に達したその時。
水のフィールドに人の大きさくらいのアイスが大量に出現する。
嘘でしょ!?
「我一時のみその御力授かり、全て薙ぎ払わん」
渦潮のような水のフィールドに大量のアイスが勢いを増しながら流されてる。
まるで災害。
「マーカ・ヒーナ」
マーメイド状態になったルサルカがアイスの上に飛び乗る。
ってそうじゃなくて!
「何であのタイミングでアイスを打てたんですか? アクア以外の魔法が使えないんじゃ……」
「恐らくですが、詠唱の途中。つまりマーメイド化していない状態であれば魔法を使えるのかもしれませんね」
「どこから魔法が使えなくなるのか。逆に言えばどこまで魔法が使えるのかを自分で試したのかもしれませんね」
……しかもこの氷河。
迂闊に水中に入り込む事が出来ない。
その間に、わずかな足場に陣取ってたレーグルの腰まで水深が上がっていく。
レーグルは水上のアイス上に場所を移す。
その瞬間をルサルカは見逃さなかった。
水上を跳ね、レーグルの腹目掛けての突き。
でも、三枝槍はレーグルを虚しくすり抜けた。
「なっ……!」
レーグルの反撃の矢を三枝槍で受けようとするも、矢は槍をすり抜け、ルサルカのボディをかする。
「自分にも当たらないように出来るのか……」
「一度魔法を受けてしまえば、そのルールで戦わざるを得なくなる。相手に武器が防がれない、ってだけではなかったようですね」
ルサルカは素早く水中に潜る。
アユムの映像は、そもそも攻撃を貰うシーンが無かった。
だからこの事に気付けなかったんだろう。
実際に見れて良かった。
ただ、フィールドはルサルカのテリトリーそのもの。
ルサルカのルール下って言っても過言じゃない。
まさに魔法と領域の戦い。
水中でスピードを増した状態のルサルカに、レーグルも簡単に矢を当てる事は出来ない。
膠着状態の中、1つだけ動いてる状況がある。
フィールドの水の量が増してる。
それに、さっきは気付かなかったけど、浮いてるアイスと同じくらいの量の氷が水中に沈んでる。
それが絶えず渦を巻き、流れてる。
水中であれをくらったらやばいな……。
ルサルカは水中を高速で泳ぎ回り、再びレーグルへ。
攻撃が当たらない状況でどうやってダメージを与える?
そう思った刹那、ルサルカはレーグルの足元のアイスに鋭い突き。
アイスが粉々に砕ける。
……なるほど。
マイルとの戦いのあれか。
足場を砕き、水中に引きずり込む気だ。
レーグルは飛び、別のアイスに移動しようとするも、そのアイスもルサルカは砕く。
「……っ!」
レーグルは自分から飛び込む形で水のフィールドへ飲み込まれて行った。




