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第1話 剣も魔法も使えない配達員

叩きつけるような激しい雨が、濡れたアスファルトを打ち鳴らしていた。

夜の交差点。原付バイクのシートに跨がり、雨合羽に包まれた身体を小さく丸めながら、陣内航(じんない

・わたる/42歳)はハンドルに固定されたスマートフォンを食い入るように見つめていた。

「よし……あと1件! あと1件で『150件配達クエスト達成』だ……!」

画面に表示されたアプリの注文通知。このラスト1件を無事に届け切れば、今週の特別ボーナスが手に入る

。42歳のベテラン配達員としての意地と誇りが、雨の冷たさを吹き飛ばしていた。

信号が青に変わる。

ワタルはアクセルを軽くひねり、原付を前方へと滑り出させた――その、瞬間だった。

――プォォォォン!!

鼓膜を破らんばかりの強烈なクラクション音。横合いから猛スピードで視界に飛び込んできたのは、赤信号

を完全に無視した大型トラックのヘッドライトだった。

「しまっ――信号無視――ッ!?」

叫ぶ猶予すら与えられない。

衝撃で吹き飛んだスマートフォンが、雨で濡れたアスファルトへ激しく叩きつけられた。

バキィッ!

硬質な破砕音が響き、ヒビ割れた液晶画面に表示されていた「目的地まであと100m」のマップ表示が、パ

チパチと惨めな火花を散らして明滅する。そして、そのまま吸い込まれるように完全な闇へと沈んでいった。

(くそ……あと……1件……だったのに……)

意識が急速に遠のいていく。42年の人生の終わりが、こんな理不尽なトラック事故だなんて笑えない。

ワタルの思考は、冷たい雨の闇の中に溶けて消えた。


「う……うーん……?」

肌を刺すような冷たさではなく、どこか心地よい温もりを感じて、ワタルはゆっくりと瞼を開けた。

視界に飛び込んできたのは、病院の白い天井でも、見慣れた自宅の天井でもない。見たこともないほど巨大

な樹木が天を突くように立ち並び、木漏れ日がキラキラと降り注ぐ――鬱蒼とした深い森だった。

「ここ……どこだ……? 事故って……死んだんじゃ……」

体を起こそうとした瞬間、ワタルの視界面前に、突如として鮮やかな青い半透明のウィンドウが立ち上がっ

た。

『ピコン♪』

『覚醒を確認しました。異世界適応プログラムを開始します。ようこそ、【ドライバーズ・システム】へ』

脳内に直接響くような、無機質な合成音声。

ワタルは数秒間呆然と画面を見つめ、それから頭をバリバリと掻いた。

「うおっ!? 画面……!? これ、まさか噂に聞く異世界転生ってやつか……?」

事故、見知らぬ森、謎の青い画面。テンプレ通りの展開に戸惑いつつも、一呼吸置いてワタルは目の前のウ

ィンドウに向かって問いかけた。

「……よし、一応確認だけどさ。異世界お約束の『剣のスキル』とか『攻撃魔法』とか、当然使えるよな?

」

『不可能です』

「即答!? いやいや、今は初期レベルだから無理でもさ、レベルが上がればそのうちドカンと派手な魔法

とか覚えるだろ?」

『不可能です。本システムで習得可能なスキルは、**フードデリバリーおよび配達・物流業務に関連するも

の限定**となります』

初期スキル『神の鳥瞰図(ゴッド・ナビ)』:視界隅に周囲の地形・障害物・最短ルート等のデータを表示

『初期装備を確認してください』

目の前に現れた初期装備を見て、ワタルは固まった。

「……は?」

黒いヘルメットに、バイク用のプロテクター。

何度見ても、それしかない。

「いやいやいや! おかしいだろ!」

ワタルは思わず声を上げた。

「異世界転生だぞ!? 普通、剣とか盾とか、そういうのじゃねえのか!?」

『あなたの適性に最適化された初期装備です』

「俺の適性って何だよ! 冒険者じゃなくて配達員ってことか!?」

『その通りです』

「即答すんな!」

ワタルは頭を抱えた。

「……マジかよ!」

そうぼやきながらも、彼はヘルメットを手に取った。

「まあ……安全第一、か」

十年間、配達の仕事を続けてきた男にとって、それだけは譲れないことだった。

「…………」

静寂が森を包む。

次の瞬間、ワタルは頭を抱えて森の空へと向かって叫んでいた。

「**異世界に来てまで配達するのかよー!!**」

やまびのように響く絶望の叫び。

せっかくの異世界転生だというのに、無双するどころか前世と同じ配送業確定。しかも剣も魔法もなし。

「はぁ……マジかよ。で? そのデリバリーシステムとやらで何ができるんだ?」

深いため息をつくワタルの前に、システム画面がスライドして新しい表示に切り替わった。

【乗り物解放ツリー】

・【現在】 Lv.1:魔導バイク『スクート・アルファ』[召喚可能]

・【NEXT】 Lv.10:魔導キャンピングカー『グラン・キャビン』(機能ヒント:『動く拠点』『厨房・ベッド完備

』/解放条件:ドライバーLv.10 + 配達完了数 0 / 50件)

・【未解放】 Lv.25:??????(Locked)

「キャンピングカー……? 動く拠点に、厨房とベッド完備……?」

画面を凝視したワタルは、ふと自分の置かれた状況を冷静に考えた。

見知らぬ異世界の森。野宿生活を余儀なくされるくらいなら、雨風をしのげて温かいベッドで寝られるキャ

ンピングカーは、喉から手が出るほど欲しい。

「条件は……配達50件か。とゆうか異世界で配達員の需要があるのか?まあ、前世でも毎日配ってたんだ。生き延びるための快適な拠点を手に入るためだと思えば、おとなしく50件配るとするか」

42歳ベテランならではの切り替えの早さとリアルな諦め。

ワタルは画面の『召喚』アイコンを指先でタップした。

ブォォォンッ!!

静寂の森に、重厚な魔導エンジンの鼓動が響き渡る。

まばゆい光の粒子が収束し、そこにはピカピカに磨き上げられた純白の魔導バイク――『スクート・アルファ』が鎮座していた。リアキャリアには、特製の頑丈そうな保温・保冷コンテナが備え付けられている。

『絶対空間の配達鞄(ウーバー・コンテナ)』:時間が完全停止し、保温・保冷・耐震・大容量収納を備えたリアコンテナ。

機能の説明を聞き終えたワタルは、しばらく無言でコンテナを見つめていた。

「時間停止に、保温、保冷、耐震、大容量収納……」

ひとつずつ指を折って数える。

「……おい。これ、配達員に渡していい代物なのか?」

さっきまで困惑していた顔が、急に真剣になる。

「マジかよ……。これ、配達員にとっちゃ夢の装備じゃねえか!」

少し間を置いて、口元が緩んだ。

「いや、いい。ありがたく使わせてもらう」

42歳のベテラン配達員の身体は、考えるより先に動いていた。

ワタルは無意識にバイクへ近づくと、センタースタンドを外し、車体の重心を手応えで確かめ、シートに跨

がった。乗り心地を確かめて、サスペンションの沈み込みをチェックする。

「ほう……見た目は原付っぽいけど、フレームの剛性もしっかりしてるしバランスがいいな。コンテナの固

定もグラつきなし……よし、いい車体だ」

ふと見ると、車体側面の給油口らしきスリットに、淡く発光する小さな青い石がセットされていた。

『補足説明:本車両の動力源は「低級魔石」(一般相場:1個100G=銅貨1枚)となります。1個で約

10,000kmの走行が可能です。現在、初期燃料として低級魔石1個が装填されています』

『お知らせ:初回起動特典として【初期活動資金:1,000G(銅貨10枚)】をドライバーズ・ポーチに支給

しました』

この世界の通貨は、銅貨・銀貨・金貨の三種類が基本らしい。

価値は日本円に換算すると、銅貨1枚が100円、銀貨1枚が1,000円、金貨1枚が10,000円。

つまり、銀貨1枚は銅貨10枚分、金貨1枚は銀貨10枚分ということだ。

「なるほど……銅貨1枚が百円、銀貨1枚が千円、金貨1枚が一万円か。これなら金銭感覚もつかみやすいな」

ワタルは頭の中で、日本円に置き換えながら、この世界の物価を把握しようとした。

「100G……銅貨1枚か。システム画面のおかげで相場が助かるな。パン1個分くらいの捨て値で買える

石1個で10,000km走れるなら、コスパは最高じゃねえか。……おお、ちゃんと初期資金まで支給されるのか!

1,000Gって.....今日のメシ代でなくなるんじゃね?せっかく異世界転生したのにすぐに働けってことかよっ!」

シートに跨がり、アクセルを軽く吹かす。視界の隅には、リアルタイムで周囲の地形を表示する『神の鳥瞰

図(ゴッド・ナビ)』が鮮やかに浮かび上がっていた。

「よし。まずは人が住んでる町を探すとしますか!」


スクート・アルファを疾走させること数十分。森を抜けたワタルの視界に、巨大な石造りの城門が姿を現し

た。

「おお……『神の鳥瞰図』の通り、ちゃんと大きな街に着いたな。ここが『交易都市ファルム』か」

ヘルメットを脱ぎ、見上げるワタル。だが城門の前まで差し掛かると、槍を構えた兵士たちが青ざめた顔で

立ちふさがった。

「な、なんだその不気味な鉄の馬は!? 止まれ、怪しい者め!」

「あー、すまんすまん。怪しい者じゃないよ。ただの配達員(デリバリー)だ。街に入りたいんだが、手続

きは要るか?」

最初は警戒されたものの、身知らずの商人として手際よく身元記入をし、ポーチから100Gを取り出して手渡すことで、なんとか街への立ち入りを許可された。

立ち並ぶ石造りの建物、見たこともない種族の人々、立ち込める露店の香辛料の匂い。

石畳の道路を、魔導エンジンの重厚な低音を響かせて進む純白のスクート・アルファ。その異様な光景に、

街を行き交う人々は一斉に足を止めた。

「な、なんだあの鉄の馬は……!? 馬も引いてねえのに動いてるぞ!?」

「魔法道具か……? 見たこともない形だな」

露店の店主たちが目を見開き、馬車の御手は暴れそうになる馬の手綱をあわてて引き直す。後ろからは「う

わー! かっこいいー!」と目を輝かせた子供たちが楽しそうに追いかけてきた。

だが、ワタルは浮かれることなく、バックミラーと目視で周囲の状況を絶えず確認していた。

(子供の飛び出し注意……馬車との車間距離は2メートル確保……飛び出しそうな角は徐行……)

「すみませーん、通りまーす」

ペコペコと頭を下げながら、歩くような速度で慎重に徐行運転を続ける。どれだけ目立とうと、異世界だろ

うと、事故を起こさない安全運転こそがプロの第一条件なのだ。

そんな喧騒を通り抜け、ワタルが辿り着いたのは冒険者ギルドだった。

「へぇ……ここがギルドか。活気があるねぇ」

酒場が併設された広いギルド内には、武具を身につけた荒くれ者たちが大勢たむろしていた。

受付に向かったワタルは、生真面目そうな受付嬢・エレナの案内で、適性測定の水晶に手をかざす。

しかし――水晶はどんよりとした暗い灰色に光るのみだった。

「陣内航(ワタル)様……測定結果ですが、攻撃魔法適性ゼロ、剣技適性ゼロ、筋力値も平均以下となりま

す……」

「ガハハハ! なんだあいつ、典型的なハズレ者じゃねえか!」

「オッサン、引っ込んで畑でも耕してな!」

周囲の冒険者たちから容赦ない嘲笑が飛ぶ。ワタルはどこ吹く風で受け流す。

「ああ、別に魔物と戦う気はないから気にしないで。俺が登録したいのは『配達員(デリバリー)』だ。荷

物や料理を安全・迅速に届ける専門職なんだが、そういう仕事はないかい?」

「は、配達員……ですか?」

エレナは一瞬ぽかんとしたが、すぐに手元の書類を開いて丁寧に微笑んだ。

「あ、はい! 当ギルドでは魔物討伐だけでなく、物資の運搬や街間の配送といった非戦闘系の【物流業務

】も取り扱っております。ですので『Fランク物流専任』としてのギルド登録は可能です!

ただ、危険な街道をひとりで走るのは護衛もつきませんし心配ですが……」

「護衛はいらんよ。運ぶことにかけてはプロだからね」

ワタルが頼もしく答えたその時――ギルド奥の厨房の扉が激しく開いた。

「エレナちゃん! 頼む、誰でもいいからこの依頼を受けてくれ!」

飛び出してきたのは、エプロン姿の厳めしい料理長・マルコだった。手には熱気を孕んだ重厚な両手鍋を抱

えている。

「マルコさん!?

ですが……『隣町の領主館まで、出来立ての薬膳コンソメスープを1時間以内に届ける』なんて無茶です!

街道にはゴブリンが群れていて、迂回したら半日はかかります!」

「この薬膳スープは冷めると薬効が消えてしまうんだ!

領主様の病気の令嬢に届けるため、何日もかけて煮込んだのに……!

報酬は30,000G……いや、50,000G出す!」

「無茶言うな!

1時間で魔物の街道を突破してアツアツのまま届けるなんて、空でも飛ばなきゃ無理だろ!」

冒険者たちが口々に首を振る。令嬢の命がかかっているというのに、誰も手を挙げようとしない。

重苦しい絶望が立ち込める中、すっと一歩を踏み出す男がいた。

「――その依頼、俺が引き受けよう」

「あん? オッサン、お前みたいなひょろい奴が……?」

「おっさんじゃねえ、航(わたる)だ! アツアツのまま、1時間以内に届ければいいんだろ?

配送のプロを舐めてもらっちゃ困るな」


ギルドの前。ぐつぐつと沸騰し、猛烈な熱気を上げるスープ鍋を前に、マルコは慎重な手つきで鍋のフタに

赤い魔導粘土を貼り付け、ギルドの刻印を押した。

「よし、これで『ギルド公認・魔導封印』は完了だ。このシールが破られていなければ、途中で毒を混ぜら

れたりすり替えられたりしていない証明になる。だがワタル、本当に大丈夫なのか?

鍋ごと持って走ったら一滴も残らんぞ!」

「心配いらん。『絶対空間の配達鞄(ウーバー・コンテナ)』、オープン」

ワタルがコンテナの蓋を開け、封印されたスープ鍋をそのままスッポリと収納する。

「バ、バカな!? 鍋が丸ごと入った……!? それに湯気がピタリと止まった!?」

「このBOXの中は時間が停止する。どれだけ揺れてもこぼれないし、温度も下がらん。じゃ、行ってくる」

「えっ!? ちょっとワタルさん! 街道の魔物はどうするんですか!?」

焦るエレナを余目に、ワタルはヘルメットのシールドを下ろした。視界の隅に『神の鳥瞰図(ゴッド・ナビ

)』の青いマップが展開する。

『ナビ音声:危険ルート検出。街道中央にゴブリンの群れ30匹。迂回ルート推奨』

『推奨:細尾根の獣道(幅40cm、ぬかるみ率60%)。魔物遭遇率0%』

「幅40センチのぬかるみ尾根か……よし!」

ブォォォンッ!!

魔導エンジンの爆音が街頭に轟き、スクート・アルファが旋風となって街を飛び出した。

疾走する悪路。ナビが指し示すのは「地形データ」のみ。この悪路を実際に破綻なく走り切るのは、ワタル

自身の腕にかかっていた。

前方の倒木を捉えた瞬間、ワタルは鋭くステップを踏み込んで車体の重心をコントロール。泥を豪快に跳ね

上げながら、間一髪で倒木を回避する!

「雨の日の坂道配達に比べたら、この程度の悪路なんてへっちゃらなんだよ!」

前世で身体に染み込ませた体重移動と絶妙なブレーキワーク。ヘルメットの中で不敵に口元を緩め、魔導

バイクは崖沿いの細い獣道を風のように駆け抜けていった。


隣町の領主館。館の前で、焦りと絶望に満ちた執事が時計を握りしめていた。

「くっ……スープはまだ届かんのか……これ以上はお嬢様のお体が……!」

その時だった。

キィィィッ!

鋭いブレーキ音とともに、見たこともない白い鉄の乗り物が滑り込んできた。

「陣内デリバリーです! マルコさんからの緊急配送品、お届けに上がりました!」

「ファルムから……たったの20分で到達しただと!? バカな……! だが門番、この者を中に入れるな!

毒殺を狙う刺客かもしれんぞ!」

槍を構える門番。だがワタルは慌てることなく、コンテナのフタを静かに開けた。

そこには、マルコが貼り付けた赤い『魔導封印』が、傷ひとつなく輝いていた。

「見てくれ、この完璧に残ったギルドの『魔導封印』を!

マルコ料理長が封をしてから、一度も開けられていない証拠だ!」

「む……!? 封印の刻印に一切の傷がない……!?」

ワタルが慎重にコンテナの固定を解除し、鍋を差し出すと同時に――

ジュワァァァッ! モワッ!

コンテナから、コンロから降ろした直後の烈烈としたアツアツの湯気と、マルコ特製の薬膳香辛料の芳醇な

香りが一気に溢れ出した!

「な……なんという熱気と香り……! まるで今調理し終えたばかりのようだ……!

封印も無事、香りもマルコ殿のスープに間違いない! すぐにお嬢様へ!」

執事は深々と頭を下げ、スープを大切に抱えて館の中へと駆け込んでいった。


夕暮れ時の冒険者ギルド。

「えええええっ!? 配達完了の魔導連絡が入りました!?

たったの20分で届いて、スープはグラグラに沸騰したままだった……!?」

エレナの驚叫に、ギルド中の誰もが耳を疑い、手にした酒杯を固まらせた。

「な、なんだってー!?」

「あのハズレ者のオッサンが、ゴブリンの街道を20分で……!?」

「ガハハハ! やったぞ、あの野郎本当にやりやがった! 50,000Gだ、約束通り受け取れ!」

差し出されたぎっしり詰まった銀貨の袋を受け取るワタル。

その瞬間、視界に爽やかなシステム音が響いた。

『ピコン♪』

【ミッション完了通知】

・配達クエスト『薬膳スープの緊急配送』成功!

・報酬:50,000G(銀貨50枚) / ドライバーEXP獲得!

・ドライバーレベルが【Lv.2】に上がりました!

・【NEXT:魔導キャンピングカー解放まで】 あと 49 件

「よしよし、レベルアップだな。……キャンピングカーまでは、あと49件か」

冷たい麦茶をぐっと煽り、宿探しへ向かおうとしたその時だった。

「ワ、ワタルさんっ!

大変です、ギルドの最高幹部から……あなた指名の『緊急特急便』が届きました!」

息を切らせたエレナが、漆黒のろうそく印で密閉された重厚な木箱を抱えて走ってきた。

「最高幹部から俺に……?」

「ええ……『中身は秘密。24時間以内に、魔物が蠢く【開かずの地下迷宮・第10階層】にいる先遣隊へ届

けよ』……報酬は、金貨50枚(500,000G)です……!」

ギルド内がしんと静まり返る。通常では考えられない報酬そして、ダンジョン内部への極秘物配達。

ワタルは木箱を見つめ、不敵に口元を緩めた。

「へえ……ダンジョンの深層へ配達か。面白そうじゃねえか」

(第1話・完/第2話へ続く)

最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

ベテラン配達員・ワタルの異世界配送無双、ここから始まります!

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