僕は地球の王
【章のあらすじ】
ダンテは最大の悪夢に直面する。
燃え盛る戦場で、時間が凍りついた。
大陸を消し去るほどのエネルギーを秘めた『黄金の巨兵』の巨大な拳が、完全に停止している……。
ただ一本の、人差し指の前に。
「ば、馬鹿なッ!」
コックピットの中で、ダンテは眼球が飛び出んばかりに見開いて絶叫した。
巨兵のエンジンを最大出力まで押し上げる。
タービンが咆哮し、黄金の排気口から灼熱の蒸気が噴き出した。
「潰してやる! 潰してやるぞ、父上ッ!」
だが、皇帝は一ミリたりとも動かない。
それどころか、その唇には底知れぬほど冷酷で、サディスティックな笑みが浮かんでいた。
皇帝は指をわずかに後ろへ引き……巨大な金属の拳に向けて、ただ軽く指を弾いた。
——パチンッ!
(軽快な破裂音が空間に響き渡る)
ほんの一瞬、何も起きていないかのように見えた。
だが突如として……皇帝の指先からおぞましい漆黒の衝撃波が伝播し、装甲を貫通して黄金の巨兵の腕全体を駆け上がった。
まるでスローモーションのような光景。
無敵を誇った巨大な黄金の腕に、無数の黒い亀裂が走っていく。
そして……。
——ドゴォォォォォォン!!!
(空間を引き裂く絶望的な大爆発)
巨兵の腕が丸ごと爆散し、何百万もの黄金の破片となって燃え盛る隕石のように空から降り注いだ!
彼の最強の武器が、ただの指弾一つで蒸発したのだ。
「アアアアアアッ!」
自身の巨兵の腕が消滅するのを目撃し、ダンテはコックピットで純粋な恐怖の悲鳴を上げた。
彼は完全に正気を失った。
金と力への狂執は、ヒステリックな恐慌へと変わり果てる。
「死ね! 死ね! 死ねぇッ!」
ダンテは残された巨兵の片腕を振り上げ、胸部と肩に隠されたすべての砲門を開放した。
絶対的な信仰の奔流 (ドグマ) を発射する。
何十万もの壊滅的な真紅のレーザー光線と爆発性の黄金硬貨が、地獄の滝となって一斉に皇帝へと襲いかかった。
——ズガガガガガガ!
だが皇帝は……避けなかった。
防御の姿勢すら取らない。
ただ静かに両手を背中で組み、ゆっくりと、確信に満ちた死の足取りで巨兵へと歩み始めた。
彼に近づくすべてのレーザー光線は……その軌道を逸らされる。
漆黒の覇気に触れた巨大な爆発はすべて……嵐に吹かれた蝋燭のように、一瞬でかき消された。
燃え盛る地獄の中を歩く皇帝。
周囲の大地はドロドロに溶けているが、彼の足元の道だけは無傷のまま。
その外套には火の粉一つ触れることはない。
爆音を切り裂き、深くしゃがれた皇帝の声が、ダンテのコックピットへと直接響き渡る。
「金で力が買えるとでも思ったか?」
さらに一歩、前へ。
「絶対的な力こそが……金の価値を決めるのだ」
皇帝はついに、そびえ立つ黄金の巨兵の足元へと到達した。
一瞬立ち止まり、僅かに身を屈め……そして、跳躍した!
——ドゴォォォン!
(跳躍のすさまじい威力で大地が粉砕され、陥没する)
生命体の知覚を超える速度で空気を引き裂き、皇帝は突如として巨兵の「胸部」……息子が隠れ潜むコックピットの真正面へと姿を現した。
ダンテが何が起きたのかを理解するよりも早く……。
皇帝は素手をそのまま、宇宙的硬度を誇る黄金の装甲へと突き立てた。
ダンテの信仰 (ドグマ) が形成した、最も硬いはずの物質へ。
そして、底知れぬ恐るべき純粋な暴力によって……。
——メリメリメリッ!
皇帝は両腕を外側へ引き裂き、分厚い黄金の装甲を真っ二つに引き裂いた。
まるで、安い紙切れでも破るかのように!
ケーブルが千切れ飛び、火花が散る。
内部にいるダンテの姿が露わになった。
追い詰められたネズミのように震え、絶望と恐怖の涙を溢れさせながら、引き裂かれた装甲の隙間から覗き込む父親の顔を見つめていた。
皇帝は手を伸ばし、血に汚れたダンテの最高級の襟元を鷲掴みにした。
無造作に彼を座席から引き剥がし、巨兵の中心から引きずり出す。
二人の背後で……圧倒的だった黄金の巨兵は自重で崩壊を始め、ただの鉄屑と溶けた金属の山へと成り果てていった。
皇帝は宙吊りになった息子を一瞥し、そして……。
煩わしい虫でも捨てるかのように、上空から投げ捨てた。
——ドシャッ!
ダンテは砕けた大地に凄まじい勢いで叩きつけられ、泥と灰、そして血溜まりの中を無様に転げ回った。
激しく咳き込み、這いつくばって逃げようとする。命を惜しんで。
だが……彼の視線の先に、一足のエレガントな靴が立ちはだかった。
震えながらゆっくりと顔を上げると、そこには母親であるイザベラがいた。
彼女は彼を見下ろしている。
その両瞳の星が、冷酷に輝いていた。
「本当に……惨めね」
彼女のすぐ後ろにはアルタイルが立ち、その冷たく死んだ漆黒の瞳で、まるで生ゴミでも見るかのようにダンテを睨みつけていた。
——トンッ。
(静かな着地の音)
皇帝がダンテの後ろに軽やかに舞い降りる。
これほどの屈辱を味わい、己の王国が粉砕されてもなお、ダンテの病的なプライドは折れることを拒んだ。
ダンテは血と泥の塊を吐き捨て、震える足でひどく困難に立ち上がった。
「僕、僕は……まだ負けてないッ!」
悔しさと狂気の涙を流しながら絶叫する。
「僕の資産……何百万もの……父上、僕こそが地球の王だ!」
最後の足掻きとして、ダンテは絶望的な特攻を皇帝へ仕掛けた。
だが……皇帝の眼差しが変わった。
サディスティックな笑みが消え、完全な冷酷さが取って代わる。
いかなる反論も許さない、絶対的支配者の冷気。
皇帝は、そのおぞましい能力を起動した。
**(服従のアクシオム)**。
皇帝は動かない。手すら上げなかった。
だが突如として……宇宙の重力が何百万倍にも膨れ上がり……ダンテの肉体のみに集中した!
——ズガァァァァン!!!
(大地が圧し潰され、底なしのクレーターへと変貌する)
ダンテは、抗いようのない野蛮な力で大地へと叩き潰された。
——ボキッ!メキメキッ!
(骨が連続して砕け散る音)
おぞましい重圧の下で、両膝が砕け、肋骨がへし折れる。
強制的に激しく土下座させられ、その傲慢な顔面は直接泥と土の中へと圧し潰された。
指一本動かせない。叫ぶことすらできない。
まつ毛一つ瞬きすることすら許されない!
その力は肉体よりも先に彼の魂を圧迫し、絶対者の前に平伏す下等生物としての現実を強制的に悟らせていた。
泥に沈みゆく無惨な息子の頭上で、皇帝は傲然と見下ろしていた。
呼吸を奪い、喉を締め付けるほどに濃密な漆黒の覇気が空間を覆い尽くす。
皇帝はイザベラに視線を向け、一切の感情を排した氷のような声で告げた。
「イザベラ……奴を再教育施設へ連れて行け」
【作者ノート】
もしこの章をお楽しみいただけましたら、ぜひページ下部から星五つ の評価と、お気に入り(ブックマーク)への追加をお願いいたします!皆様からの応援こそが、この壮大な物語を紡ぎ続けるための『エーテル』となります!




