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第一章:オリオン星侵攻

血のように紅く染まった背景に沈みゆく、人の影の海……。

嘲笑と絶望が入り混じった無数の笑い声が虚空を満たす中、失望をしたたり落とすような男の黒い幻影が近づいてくる。


「お前は、その授かった力にふさわしい、慈悲深き指導者であり、偉大なる英雄になると思っていた……だが、失望したよ」


皇帝は目を開き、その奇妙な白昼夢から覚醒した。

漆黒の玉座に座る彼の目の前には、荘厳なる宇宙船の窓越しに、天王星の姿が直接広がっていた。


「陛下……聞こえておりますか?」


彼の視界と意識が、再び自身の専用区画へと戻る。

眼前には、八人の美しき妻たちが立ち並んでいた。彼の冷酷な黄金の瞳は、声をかけてきた者――純白の白衣を纏い、長く青い髪を揺らす第二夫人、アイヴィーへと向けられた。

彼女の顔の中央にある眼鏡は、いかにも科学者らしい冷徹な光を反射している。


「陛下……我々のプロジェクトが、たった今完了いたしました」


皇帝はアイヴィーや他の妻たちと共に、青く冷たい氷のベールに包まれた天王星の地表へと降り立った。


二人が歩み寄ったのは、『太陽軌道帝国』が誇る最大にして最重要の兵器……黒き金属の巨体を雲霞のごとく天にそびえ立たせる、超巨大電磁砲である。

その途方もない大きさは、遥か遠い宇宙の深淵からでもその巨大な砲口が確認できるほどだった。

砲口は今、宇宙の虚空へと真っ直ぐに向けられている。


アイヴィーは感情の欠落した瞳で永遠の闇を見つめていた。眼鏡のレンズに星々の冷たい光を反射させながら、彼女は言った。


「陛下……全て準備が整いました。我々がこれから行うことは、宇宙を永遠に変えることになります」


皇帝は、その冷徹でありながらも極度の飢えを帯びた瞳で、荒々しき虚空を見つめた。そして、死の重圧を宿した声で応じる。


「太陽も、その軌道も、もはや余の狂気を収めるには狭すぎるのだ、アイヴィー。宇宙……そう、この全宇宙だけが、これから我が為すことを受け入れる器となる。今すぐ実行せよ」


その最後の言葉を合図に、アイヴィーは『宇宙破壊砲』と名付けられたその兵器を起動した。

直後、宇宙の虚空において時空の織り目を激しく叩き割るような、圧倒的で力強い轟音が響き渡る。

それは、高度に発展した異星文明が栄える星――『オリオン星』へと続く、巨大な次元の亀裂を生み出したのだ。


それは巨大な惑星であった。

人工の黄金の環に囲まれた世界。荘厳な大陸は純粋なエネルギーの海に浮かび、大気は不規則な雲を排し、完璧に制御された人工気象に覆われている。

極限の贅沢と平和を享受する、豊かで高度な文明。

しかし、彼らは知る由もなかった。今まさに、ある暴君の眼差しが彼らを捉え、地獄の門が開かれようとしていることを。


黒鋼のイナゴの大群のごとき、巨大な自爆型無人機の群れが突撃した。

時空の亀裂の縁に飲み込まれたそれらは、数十億光年という途方もない距離をわずか数秒で跳躍する。

虚無から吐き出されるや否や、群れはオリオン星の周囲を蹂躙した。

完璧な人工の空が突如として黒く染まり、彼らの太陽がおぞましい一瞬のうちに遮られる。

贅沢に溺れていた星の住人たちが空を見上げた時――彼らの魂は、その歴史上で初めて、絶対的な恐怖と戦慄の味を知ることとなった。


無人機の群れは、威風堂々たる王宮の周辺へと容赦なく襲いかかった。

何千年もの間、実戦を経験することのなかったオリオン星の防空システムが必死の迎撃を試みる。

いくつかを撃ち落とすことには成功したものの、見たこともない狂気のテクノロジーを前に、その大半を防ぐことはできず、惨めな崩壊を遂げた。

王宮を連続した爆発が揺るがし、引き裂かれた近衛兵たちの死体の山と、焼け焦げ、粉砕されたインフラだけが後に残された。


それは、伝統的な戦略的攻撃などではなかった。ただひたすらに盲目的で、暴力的な自爆攻撃である。

無人機は、星の露出したあらゆる重要拠点を標的とした。大将軍たちの基地、ミサイル発射施設、そして大気圏内および宇宙空間の防衛システム。

機体は次々と自爆し、絶対的な平和しか知らなかった文明の肉体に、混沌と、脆弱さと、身の毛のよだつような激震をもたらしていった。


無人機が次々と爆弾と化し、星の急所を内側から破壊し尽くしていく中、オリオン星の高度なレーダー網は、その通信が完全に途絶する直前、ついに信号の発生源を捉えることに成功した。

解析結果は、彼らにとって衝撃的なものであった。

信号は、遥か彼方の銀河『天の川』――その中の、『太陽軌道』から発信されていたのだ。


オリオン二十四世の胸は、この露骨な侮辱に対する盲目的な怒りで満たされた。

彼は直ちに、惑星最高位の将軍にしてオリオン軍の最高司令官であるマディ・ロール将軍に対し、直接の勅命を下した。


「時空の亀裂が閉じる前に突入し、奴らをこの宇宙から跡形もなく消し去れ」


マディ・ロール将軍に躊躇いはなかった。

彼は、オリオンが誇る最精鋭の部隊と最強の兵士たちで武装した、恐るべき巨大旗艦に座乗し、時空の亀裂へと真っ直ぐに突入した。

そして、時空の彼方から抜け出し、太陽軌道へと侵入し天王星へと接近した時――その旗艦の巨大すぎる威容が露わとなった。

宙に浮かぶ鋼鉄の城。

もしそれが地球に降り立ったならば、太陽の光を完全に遮り、地上の全生命を永遠の暗闇へと突き落とすであろうほどの、常軌を逸した途方もない質量。


一方、その脅威を迎え撃つはずの皇帝は、未だ漆黒の玉座に腰を下ろしたままだった。

頬杖をつき、死ぬほど退屈そうにため息をつきながら、オリオンの誇る最高傑作が接近してくるのをただ眺めている。

彼の目に映っているのは、脅威などではない。単なる鬱陶しい羽虫でしかなかった。

皇帝は気怠げな視線を向け、微塵の興味も示さぬまま、冷酷な命令を第三夫人ロキシーと第五夫人カオリに下した。


盲目的な傲慢さに酔いしれるマディ・ロール将軍は、知る由もなかった。

自身の誇る偉大なる大軍勢を粉砕するために進み出る二つの「厄災」の正体を。


彼女たちこそ、皇帝の妻。ロキシーとカオリである。


ロキシー。赤き髪と真紅の瞳を持つ、純鋼のごとき女。

闘争の空気を呼吸し、己の拳の下で敵の骨が砕ける音に狂気的な愛を注ぐ、戦闘狂。


対するカオリ。厳格な日本人の顔立ちをした彼女は、血塗られたサムライの精神を宿している。

絶対的な冷酷さをもって敵の首を刎ねる「闘争の誉れ」に、狂気なまでに執着する女剣士であった。


太陽系へと侵攻するマディ・ロール将軍の旗艦は、人間の理性を嘲笑うかのように、あまりにも荘厳で、巨大で、恐ろしいものであった。

そのおぞましいほどの巨大さゆえに、遥か遠く冥王星の軌道上に位置しているにもかかわらず、地球の住人たちは迫り来る不吉な黒い影を肉眼で捉えることができたほどだ。

まさに、傲慢さに満ち溢れた鋼鉄の巨城である。


しかし、その神話的なまでの巨大さや、オリオンが誇る圧倒的な装備と兵力、そして絶大な破壊力を以てしても、彼らを迎え撃ったのは、同規模の艦隊などではなかった。


彼らを歓迎したのは、「地獄」そのものだった。


無限に続く自爆型ドローンの大群が、巨大な旗艦へと殺到し始めたのだ。

何百万もの黒き無人機が、盲目的かつ狂気的な「カミカゼ」特攻戦術をもって、装甲へ向かって一直線に突撃していく。

この数百万の爆弾と化した機械群には、ただ一つの目的しかなかった。

己の身を犠牲にすることで、その誇り高き旗艦のレーダー網とエネルギーシールドに、完全なる「死角」を二つだけ作り出すこと。


ロキシーとカオリが艦内に侵入し、大虐殺マサカーの幕を開けるための、たった二つのほころびを。


レーダーの目を奪われ、連鎖する爆発がシールドを喰い破るその中心で、二つの小さな宇宙の軌跡が金属の船体へと肉薄した。


オリオンの誇る分厚い鋼鉄をこじ開ける直前、ロキシーとカオリの肉体が溶け崩れ、冷たい宇宙の闇と交じり合うような漆黒の影へと姿を変える。

その絶対的な漆黒の中から、ロキシーの野獣のような凶悪な笑みが裂けるように浮かび上がった。彼女の瞳の奥で、血のように赤い炎がギラリと闇を照らし出す。

反対側では、カオリの唇から氷のように冷たい、微かな笑みがこぼれ落ちた。

彼女の左目を覆う暗闇を切り裂く、白く致命的な閃光だけがそれを彩っている。


――ここに、鮮血の宴の開演が告げられた。


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