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〜神堕騎士道浪漫譚〜『竜血のカミーユ』  作者: 林美鈴
第三章:其は神話の激動。「貪欲」と「慈悲」の母を殺し、「真なる神」すら粉砕する、愛と神堕ちの最終詩
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刹那に舞う、真紅の閃光。静止した天空で騎士カミーユは、ただ美しく残酷に軍勢を散らす詩

【さあさあ皆様、しばし足を止めてお聞きくだされ、今宵お話しするのは。天駆ける騎士の物語にございます】


 ――――――――――――――――――――


 カミーユは空間を跳び、空の悪魔の触手を左手で握りしめた。


 逃す気は無かった。


 カミーユは、その悪魔の無数にある他の触手を、魔剣星影で切り飛ばしていく。


 全体的に丸い形をしたその悪魔は、残った触手にある眼球から、カミーユに向かって光線を放った。


 カミーユは咄嗟に、触手を持つ手を離し、光線を左腕で受けた。


 カミーユの左腕は光線の破壊の魔力により消し飛んだ。


 隻腕となったカミーユは、自らの身体に流れる竜の血から魔力を汲み上げ、それを全身に満たす。


 カミーユの筋力と魔力、精神に圧力が加わり、カミーユの全てが加速される。


 カミーユは赤い魔力の残滓を残して空間を跳ぶ。あまりの疾さに悪魔はなんの反応も行えない。


 癒しの魔法で一瞬にして左腕を再生したカミーユは、悪魔の中央にある一際大きな眼球に手をかけた。


 巨大な瞼と眼球の間に左腕を突っ込み、その怪力で眼球を引き抜く。


 カミーユは空に眼球を投げ捨て、自らの奥底から湧き上がる血と破壊の衝動に身を任せた。


 魔剣を縦横に振い、悪魔を切り裂き、それを細切れにする。


 先ほど千切った巨大な眼球も、粉々になった悪魔の体も、中空に浮いたままだ。


 カミーユはそのまま空間を跳び、次の悪魔に襲いかかる。


 三頭の悪魔。羊と獅子と竜の頭を持ち、翼の生えた四足の巨大な体と、蛇の尾を持つ化け物。


 カミーユは空間を跳び、それの尾を掴む。


 悪魔の巨体の尾を握ったまま、王都の尖塔の上にカミーユは跳ぶ。


 カミーユは、その怪力で悪魔の尾を振り下ろし、それを下方に加速させ、尖塔にその巨体を突き刺し、はやにえとして、命を奪う。


 カミーユの破壊の衝動はさらに高まる。

 続いて竜の群れを見つめる。竜の群れは、無数の若竜と成竜。そして一匹の、成竜よりもなお巨大な竜、黒い鱗の古竜がいた。


 竜たちに吐息を放たせるわけにはいかなかった。

 地上には王都があるのだ。


 カミーユはまず、赤の鱗を持つ成竜に向かって跳び、その胸の鱗を魔剣星影で切り裂く。


 その傷跡に、弓で魔法の金属、ミスリルの矢を超音速で放つ。


 カミーユの心身は超音速の矢よりも疾く加速されており、その矢の心臓への到達を待たずに、カミーユは次の成竜に向かって跳ぶ。


 カミーユは次々と成竜の鱗を切開してゆく。それは残虐な死の作業であった。

 そして、その生命を断つための射撃を的確に行う。


 一旦地上へ跳んだカミーユは、いくつもの樽の中に備えてあったミスリルの矢を掴み取り、空にいる無数の若竜たち、その心臓に向かって数多の矢を放つ。


 そして、カミーユは空に浮かぶ巨城、古竜に向かって、ミスリルの矢を放つ。


 それは一本ではなく二本、二本ではなく三本と、数を増し、九つの円状の矢と、その中央を貫く、十本の矢だった。

 それが一斉に放たれる。


 カミーユは事前に、巨人の戦士ダノンとこの技について相談していた。肉の厚い竜に対して、弓矢で射落とすにはどうすれば良いかと。


 その解として、無数の矢で周囲の肉を吹き飛ばし、中央の心臓を射抜く。と言う、力押しの案が出た。カミーユはこの技を良しとし、「花」と名付けた。


 最後に、カミーユは空にいる。この軍勢を率いていた悪魔に向かって、跳ぶ。


 悪魔は何ものかの骨で出来た。邪悪で立派な鎧を着込み、黒い刀身の、これまた見事な剣を手にしていた。


 しかし、カミーユの前で、悪魔の将は静止して見えた。


 カミーユは破壊の衝動に身を任せる。


 まずはその悪魔の首を刎ね。胴体を袈裟斬りにし、心臓も断ち切る。


 カミーユが斬った悪魔たちの断面からは血ではなく、黒い霧の粒子が見えていた。


 そして、カミーユは地上に跳び、自身の魔法を解く。


 刹那、上空のあちらこちらに黒い塵が飛び散り、それは地上への陽の光を遮った。地上へ衝撃波と轟音が届き、王都の多くの窓ガラスが割れる。


 上空の古竜も、その胸を花弁のように、醜く、美しく散らし、心臓を射抜かれ、黒い塵となった。


 影の中、カミーユは立ち上がり、空を見上げた。それは美しく、凛々しく、孤独な姿であった。


 カミーユは思う。この戦いの背後には姉上、シド・クオンの謀略があるのか。或いは彼女もまた、踊らされているだけなのか。


 一方的な同盟を宣告し、そのまま不在の姉をカミーユは思う。



 その日、王都モスカウは、突如として現れた悪魔と竜の軍勢に襲われていたのだ。

 そしてそれは、カミーユ・ロラン公爵。救国の英雄の手によって、立ちどころに屠られた。


 カミーユの妻と愛する者たち、エトナ、ロザリア、アナスタシア、フローラ、サラ、クラリス、それに女泥棒のユマと、竜の巫女カリンは、不安げに空を見上げる。


 すべての悪魔と竜を葬ったことを確認したカミーユは、自らの館、ロラン公爵邸の上空へ跳び、力尽き、落下した。


 こうして、王都モスカウを襲った悪魔の軍勢はカミーユによって退けられた。


 しかし、それは、これから起こる不幸の序章でしかなかった。


 ――――――――――――――――――――


【今宵の調べはここまで。孤独に戦う騎士の行く末は。また明晩、リュートの弦が弾ける時まで取っておくことにいたしましょう】


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