神がえり
「地球温暖化、と、人間は呼んでいます。」
マナは、両手を広げて半透明の北極の氷河が砕けおちる画像を伸ばし広げながら説明しました。
人間の世界は、毎年暑くなり、雨が降る時期に雨はなく、かと思えば、日照りの時に天に大河が出来て、大地を大水で流すのです。
「人間は、CO2が原因とか言ってますけど…。」
マナは、大きな画面に流れる光を見つめながら言いました。
「シー・オー・ツー?」
カオリは、何かの呪い言葉だと思いました。
「生物の吐く息に入っているもので、吸血虫が好きなあれですわ。アレが、世界を暑くしていると、人間は思っているようです。」
マナは、CO2についてカオリに説明しました。それから、少し間をおいて、目をやや伏せぎみに考え込みながら、
「守り神様たちは、奉納相撲が行われてない事を心配してます。」
と、言葉を続けました。
「シー・オー・ツーとやらも、奉納相撲も主さんには関係ないね。」
カオリは、茂みで楽しそうに眠る熊のゴローを木上から眺めがなら、自分が考えすぎたのだと思いました。
考えてみれば、ゴローに大変な役割なんて、回ってくるわけは無いのです。
カオリは、安心しました。
「そうでも無さそうですわ。この熊ちゃん、日照り神を倒した山の主の末裔ではありませんか。この夏は暑くて、人も草木もほとほと困っているのです。この熊ちゃんが日照り神を退治してくれるのかもしれませんわ。」
マナは、ふわりとカオリのとまる木上まで飛ぶと、幸せそうに顔をかきながら眠るゴローを上から観察しました。
途端に、カオリが大きな声で笑いだしました。
「あっ、はっはっ。ばかだねぇ。それは無いよ。主さんには、そんな力はないし、守り神様もそんな大役、出来ないことはお見通しだよ。」
カオリの笑い声を聞きながら、真面目に答えたマナは、ちょっと不機嫌な気持ちになりました。
「そうかしら?バカはどちらか、試してみましょうか?」
マナは唇を引いて、意地悪だけど、どことなく可愛らしさのある笑顔でカオリを見つめました。
「な、なにをするんだい?」
マナの笑顔に、ただならない事が起こりそうで、カオリは焦りました。
「ふふっ。神もどしの儀式をしてみようと思いますの。」
マナは、カオリの焦る姿に気を良くして、半透明の光の文字を探りながら、昔の文献を載せた人間のブログを引っ張り出しました。
「神もどしって、アンタ、それは、マナ、アンタなんかが、おいそれと出来るような、そんな簡単な術式ではないんだよ?」
カオリは驚いてマナをたしなめました。
「私なんか…、ですって?お姐さま、今の私は、世界情報網の女王。光の妖蜘蛛、マナなのですよ。」
マナがそう言うと、木陰が見事な紫外線のレースの上着を隠し、美しい体の線がしっかりと見える、短いスカートに長いブーツ姿の颯爽とした人形に身を移したマナの姿をカオリの前にさらしました。




