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姉妹

「こんにちは、お姐様。」

マナは、その年の人間に流行した美しい姿の人形(ひとがた)を、モデル立ちという、撮影される人物がする立ち姿でカオリを見上げました。


小さくて泣いていたのは、随分昔の話です。


現在では、この世界で一番大きな巣と体を持つ妖怪は、マナ以外には存在しません。


蜘蛛の世界では、生まれた順ではなく、巣と体の大きさで優劣が決まります。

今のマナは、一番上の姉、カオリですらぞんざいには扱う事は出来ないのです。


けれどカオリは、体も巣もマナには、かなわないと言っても、家の守り神の加護を受ける、女神の力をまだ体に秘めています、マナですら、その力を(あなど)る訳にはいきません。


アラクネは、ギリシアの人間に伝わるお話では、織物の神アテネの怒りをかい、命を救われて地獄の蜘蛛になったと言われていますが、アラクネ属の伝説では、彼女を助けたのは、大神ゼウスの妃、女神ヘラと伝わっています。


ゼウスの浮気をバカにしたような織物を作ってしまった彼女は、自らの父親の浮気の事で腹をたてていたのです。


その事を知ったヘラが、彼女を憐れに思い、生き返らせたのです。


彼女は醜い姿に変えられましたが、情報を集めるのにたけ、家庭を壊す浮かれた気持ちをその巣でからめとる力を授かったのでした。


今でも、家庭を守り、育てる彼女の存在を、よく思う人は多いのです。


浮かれた情報を、小さな端末から家庭に送り込む、マナのような妖怪には、天敵でありました。


「久しぶりだね、マナ。元気そうじゃないか。」

カオリは、蜘蛛の姿のまま、ゆらゆらと実体のないマナを見つめて挨拶をしました。

「ええ、おかげさまで、体も巣も益々大きくなりましてね、そのうち、あの火星(なつひぼし)にも私の巣が張り巡らされると思いますわ。」

マナは、得意気にカオリに微笑みかけました。それを見ながら、カオリはマナの話を子供の夢物語だと思いました。

「それは、お盛んだね。まあ、良いさ、それより、一つ、聞きたいことがあってね。物知りのお前さんに一つ、教えてもらいたいのだけれど、いいかい?」

カオリは、空の真上に届きそうな、お日様をちらりと見つめて言いました。


夕刻(ゆうこく)まで、あまり時間はありません。


ゴローの為にも早く情報を集める必要がありました。


「なんですか?何でも聞いてくださいな。」

マナは、軽く目を細めて魅力的な笑顔を作りました。

「人の世界で何がおこっているのかい?人の守り神様達は、一体どうしたっていうんだい?」

カオリは、早口で質問しました。


そんなカオリを見つめて、マナは驚いたように目を見張りました。


「まあ、姐さんが人間の心配をするなんて。このところ陽気がおかしいのは、きっと姐さんのせいかもしれませんわ。」

マナは、クスクスと娘らしく笑いました。

「アンタ、バカ言ってないで、早くしらべておくれ。それとも、アンタの自慢の糸は、そんな情報も絡めとれない粗悪品なのかい?」

カオリは、興味深そうにマナを見つめ、マナは、自分の能力を下に見られて、腹が立ちました。


「冗談じゃないわ。星の秘密から、海のそこの話まで、私がわからないことなんてありませんわ。」

マナは、膨れっ面を作りながら、軽く右手の人差し指を空に向けて何度かふりました。


すると、半透明の人の世界や文字が現れて、一瞬で、世界中の情報がすらすらと流れ込んできたのでした。


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