【084】退院
本日は、薺が退院する日だ。
ぼくは金曜日の放課後、急いで帰宅した。走り出しそうになるのをおさえたけど、どうしても早足になってしまった。
「ただいま!」
ぼくは玄関を開けて、大きな声を出した。するとひょこりと、薺がリビングから顔を出した。クツをあわててぬいで、ぼくはかけよる。
「薺!」
「瑛にいちゃん! お兄ちゃん!」
薺がだきついてきたので、ぼくもギュッとだきしめる。薺はくすぐったそうな顔をしながら、うれしそうにぼくを見た。お父さんもリビングから出てきて、ぼく達のそばに立った。
「おかえり、瑛」
「ただいま!」
「今日は薺が食べたいって言ってるから、外食しよう」
「うん! 焼き肉?」
前に亮にいちゃんが言っていたことを思い出す。
「当たりだ。亮は高校からお店にちょくせつ行くと言っていたから、そろそろ行こうか」
「うん!」
ぼくは笑顔でうなずいた。
三人で外に出る。薺はお父さんと手をつないでいる。その横を、ぼくは歩く。
お店につき、ぼく達は四人がけの席に座った。すぐに亮にいちゃんも来た。制服のままだ。
「薺、よかったな!」
「ありがとう、亮兄ちゃん!」
二人も笑顔だ。お父さんと薺がならんで座り、ぼくの横は亮にいちゃんだ。
久しぶりの四人での食事だ。
メニューを手に取り、色々と頼む。
亮にいちゃんがお店のタブレット端末で注文していたら、パシャリと音がした。お父さんがぼくと亮にいちゃんを撮った。次に薺を撮っている。
「これからは、四人の写真もたくさん撮ろうな?」
お父さんがそう言ったので、ぼく達三人はうなずく。
すぐに亮にいちゃんは自分のスマホを取り出して、薺とお父さんを撮った。次には、ぼくとならんで自撮りをしていた。
ぼくは、こんな日がずっと続きますようにと祈りながら、ご飯を食べた。




