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図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅠ】―― 第三章:トイレの花子さんとババサレ ――
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【026】対抗策

「た、ただいま!」


 ぼくがかけこむと、亮にいちゃんが、サラダをテーブルにのせたところだった。


「おかえり。どうしたんだ? そんなにあわてて」

「あのね、あのね……あの……」


 そこで迷った。ぼくが話したら、亮にいちゃんのところにも、ババサレが来てしまうかもしれない。だが、ぼく達は一緒に暮らしているから、来る場所はこの家で同じだ。そう考え直して、ぼくは窓を指さした。


「ババサレが来ちゃうんだ。ぼくがババサレの話を聞いちゃったから、ババサレが来るんだよ!」


 すると目を丸くしてから、亮にいちゃんが優しく笑った。


「ババサレって、カマを持ってるばぁさんの妖怪か?」

「妖怪かどうかはわかんないけど、カマを持ってるって聞いたよ!」

「それなら大丈夫だ。俺が対抗策を知ってるからな」

「え?」

「ババサレがノックしてきたら、『ババサレ・ババサレ・ババサレ』って三階唱えると、帰っていくんだ。二度と来ない」

「本当?」

「ああ。だからもし来たら、俺が追いはらってやるから、まずは食事にしよう。今夜は 麻婆豆腐(まーぼーどうふ)だ」

「うん!」

「手を洗っておいで」


 安心したぼくは、ランドセルをリビングのソファにおいて、手を洗いに向かった。

 やっぱり亮にいちゃんは、頼りになる。

 ぼくも亮にいちゃんみたいになりたい。


「今日も父さんは夜勤だって」

「分かった」


 うなずいてから、ぼくはテーブルの前に座った。エプロンをほどいて、亮にいちゃんも目の前に座る。二人で手を合わせて、いただきますと言ってから、ご飯を食べ始めた。


「だけど、ババサレかぁ。俺が小さい頃からあるんだよ、その都市伝説」

「そうなの?」

「ああ」

「亮にいちゃんの頃も、小学校にも七不思議、あった?」

「あったあった。トイレの花子さんとかな」


 その言葉に、ぼくはドキリとした。お水を飲んで、なんでもないフリをする。


 ――ダンダンダン。


 音がしたのはそのときだった。ぼくが体をかたくすると、亮にいちゃんが箸を置いて立ち上がった。そして音が聞こえてきた玄関の方へいく。


「ババサレ・ババサレ・ババサレ」


 亮にいちゃんの声が聞こえてくると、音がしなくなった。

 すごい!

 戻ってきた亮にいちゃんを見て、ぼくはそんけいしたから、笑顔で拍手した。


「――台風が近づいてるらしいから、気をつけないとな」


 座りながら亮にいちゃんがそう言ったので、ぼくはくびをひねった。


「台風?」

「そ。今夜は風が強い」

「玄関に行ったら風の音がしたの?」

「どうだろうな。瑛、気をつけて学校に行くようにな」

「うん」


 この夜食べた麻婆豆腐も、本当に美味しかった。

 ただ怖かったから、夜は亮にいちゃんの部屋に行き、一緒に眠ってもらった。

 ぼくは本当は、怖がりだ。だけどそんなのは〝大人〟らしくないから、台風が怖いことにしておいた。いつでも避なんできるようにだと、ぼくは伝えて、一緒にねむった。


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