【101】きさらぎ駅から
家に帰ると、お父さんと亮にいちゃんと叔母さんがほめてくれた。
「瑛にいちゃんすごかった! 学校の七不思議、とってもおもしろかったし、合奏もかっこよかった!」
薺が目を輝かせて、そう言って笑っていたのが、一番うれしかった。
そうして、休日に行われた学習発表会の、振替休日になった。
ぼくは、早く起きて、柚子叔母さんが作ってくれた朝ご飯を食べた。隣には、バイトにいくという亮にいちゃんもいる。薺はまだ寝ている。
「瑛は、今日は出かけるんだったよな?」
「うん」
亮にいちゃんの言葉に、ぼくは大きくうなずいた。
今日は、ぼくは一人で出かけると決めていた。
ご飯を食べてから歯磨きをして、ぼくは玄関にむかう。スニーカーをはいて、しっかりとひもをむすびなおす。そして自転車で、きさらぎ駅を目指した。今日は節約が大切だ。
きさらぎ駅の改札には、今日はきちんと人がいた。だから安心して、 切符を通してあいたゲートを通り、ぼくはホームにむかう。いつもはスマホで通るけど、この切符は特別だ。少し早く来てしまったので、イスに座って電車を待つことにした。
座りながら、ぼくは夏休み前から、今までのことを思い出した。
いろいろな出会いがあった。
いろいろな考えかたにふれた。
いろいろな思い出ができた。
いろいろな気持ちを知った。
いろいろな――……数えれば、きりがない。どれも大切な、ぼくのタカラモノだ。
ぼくは都市伝説のお化け、怪異にふれて、だいぶ変わったと思う。それが成長なのかは、自分ではわからない。だけどもう、ぼくはただの、大人になりたがっている子どもでは、なくなったと思っている。
たとえば、人の数だけ、その人の世界があると思うようになったし、見方を少し変えるだけで、物事はもう違う世界に見えるのも分かった。そして現実の裏側には、人が関わるべきではない世界があるのも知った。
そんな世界であるから、一人で歩いて行くのは、きっと大変だ。だけどぼくにはみんながいるから、今日も進んでいける。哀名に、道家くんに、泰我先生や水間さん、步夢くんに、亮にいちゃん、薺、お父さん。叔母さんもいる。
そのとき、電車がホームに入ってきた。
ぼくは静かに立ち上がる。
止まった電車のドアが開く。ぼくは静かに瞬きをしてから、中へと乗り込んだ。
そして近くの席に座り、今度は窓からホームを見る。たくさんの人が見える。別の電車を待っているのだろう。ぼくは手にしている切符を見た。
この切符は、『どの駅でおりてもいい』し、『何回電車に乗ってもいい』という切符だ。行き先を決めるのも、止まって休むのも、進むのも、全てはぼく次第だ。
それは、現実も同じだ。
ぼくはこれからも、未来に向かって歩いて行こうと思う。
みんなと一緒に。そのためにも、ぼくはきちんと歩いて、みんなと並んでいきたいから、今日はあえて一人で電車に乗る。
電車が発進するアナウンスがひびいてきた。
ぼくは窓を見たまま、まぶたを閉じる。
この先には、どんな出来事が、待ち受けているのだろう?
それがなにであっても、ぼくは前を向いて歩きたい。それが、今のぼくにとっての、〝当然〟のことだから。
―― 【SeasonⅢ】・完 ――
*** 図書室ピエロの噂・完 ***




