表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
図書室ピエロの噂  作者: 鳴猫ツミキ(水鳴諒/猫宮乾)
【SeasonⅢ】―― 終章:学習発表会 ――
PR
101/101

【101】きさらぎ駅から


 家に帰ると、お父さんと亮にいちゃんと叔母さんがほめてくれた。


「瑛にいちゃんすごかった! 学校の七不思議、とってもおもしろかったし、合奏もかっこよかった!」


 薺が目を輝かせて、そう言って笑っていたのが、一番うれしかった。


 そうして、休日に行われた学習発表会の、振替休日になった。

 ぼくは、早く起きて、柚子叔母さんが作ってくれた朝ご飯を食べた。隣には、バイトにいくという亮にいちゃんもいる。薺はまだ寝ている。


「瑛は、今日は出かけるんだったよな?」

「うん」


 亮にいちゃんの言葉に、ぼくは大きくうなずいた。

 今日は、ぼくは一人で出かけると決めていた。


 ご飯を食べてから歯磨きをして、ぼくは玄関にむかう。スニーカーをはいて、しっかりとひもをむすびなおす。そして自転車で、きさらぎ駅を目指した。今日は節約が大切だ。


 きさらぎ駅の改札には、今日はきちんと人がいた。だから安心して、 切符(きっぷ)を通してあいたゲートを通り、ぼくはホームにむかう。いつもはスマホで通るけど、この切符は特別だ。少し早く来てしまったので、イスに座って電車を待つことにした。


 座りながら、ぼくは夏休み前から、今までのことを思い出した。

 いろいろな出会いがあった。

 いろいろな考えかたにふれた。

 いろいろな思い出ができた。

 いろいろな気持ちを知った。

 いろいろな――……数えれば、きりがない。どれも大切な、ぼくのタカラモノだ。


 ぼくは都市伝説のお化け、怪異にふれて、だいぶ変わったと思う。それが成長なのかは、自分ではわからない。だけどもう、ぼくはただの、大人になりたがっている子どもでは、なくなったと思っている。


 たとえば、人の数だけ、その人の世界があると思うようになったし、見方を少し変えるだけで、物事はもう違う世界に見えるのも分かった。そして現実の裏側には、人が関わるべきではない世界があるのも知った。


 そんな世界であるから、一人で歩いて行くのは、きっと大変だ。だけどぼくにはみんながいるから、今日も進んでいける。哀名に、道家くんに、泰我先生や水間さん、步夢くんに、亮にいちゃん、薺、お父さん。叔母さんもいる。


 そのとき、電車がホームに入ってきた。

 ぼくは静かに立ち上がる。

 止まった電車のドアが開く。ぼくは静かに瞬きをしてから、中へと乗り込んだ。

 そして近くの席に座り、今度は窓からホームを見る。たくさんの人が見える。別の電車を待っているのだろう。ぼくは手にしている切符を見た。


 この切符は、『どの駅でおりてもいい』し、『何回電車に乗ってもいい』という切符だ。行き先を決めるのも、止まって休むのも、進むのも、全てはぼく次第だ。


 それは、現実も同じだ。

 ぼくはこれからも、未来に向かって歩いて行こうと思う。

 みんなと一緒に。そのためにも、ぼくはきちんと歩いて、みんなと並んでいきたいから、今日はあえて一人で電車に乗る。


 電車が発進するアナウンスがひびいてきた。

 ぼくは窓を見たまま、まぶたを閉じる。


 この先には、どんな出来事が、待ち受けているのだろう?


 それがなにであっても、ぼくは前を向いて歩きたい。それが、今のぼくにとっての、〝当然〟のことだから。




 ―― 【SeasonⅢ】・完 ――




    *** 図書室ピエロの噂・完 ***




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ