ウォンバットでのサイクル
ローリングアルマジロを野球のように飛ばしていき、アーマースコーピオンの身体を叩き割っていく。
ローリングアルマジロは、空高く飛ばせば地面に落ちた時の衝撃で内部がぐちゃぐちゃになるみたいで上手くすれば倒せる。
アーマースコーピオンは、ただただ雷鎚ミョルニルを叩き付けるだけで倒せる。危険な時はアリサが魔法で援護してくれるから安心して狩りをする事が出来ていた。
「このくらいで良いかな。レベルは上がらなかったけど、十分に狩れたし」
「うん」
私達はウォンバットのギルドに戻って、解体場でローリングアルマジロを二十八体、アーマースコーピオンを十二体提出する。その中で確認しておきたい事をライデンさんに訊く。
「アーマースコーピオンって、このくらいひび割れても大丈夫ですか?」
「ああ。問題ねぇ。この一箇所だけだからな。尻尾の針も回収しているのは良かった。こいつは鋏と針が一番価値がある。それ以外なら多少割れてもそこまで響かない」
「なるほど」
アーマースコーピオンの価値が集中している箇所の確認は重要だった。これから狩りの対象になるかもしれないからね。
「ローリングアルマジロも無事な箇所が多いからな。前よりも査定額は上がる。全部で百八十二万リルだ。そんじゃあ、アリサの嬢ちゃんの昇級手続きをしてくる。受付で待っていてくれ」
「はい」
ライデンさんからお金を受け取って、手続きが終わるまでアリサと一緒に受付で待機する。
「思ったより稼げたなぁ」
「ヒナが【アイテムボックス】を持っているおかげだね」
「本当にね」
Dランクでもこれだけ稼げているのは、やっぱりインベントリが大きい。普通の人達は一体か二体を狩ったら、ギルドまで運び込むか素材を自分達で剥いで来るしかないから。その剥ぎ取りで価値を損なう可能性もあるし、一体じゃそこまで稼げない。
「一回で貸家分稼げたから、色々と他のものを揃えられるね。何か欲しいものある?」
「う~ん……ヒナ?」
「アリサなら、私は無料だから別のものにしてね。取り敢えず、服屋で服を買い足して……アリサの寝具の予備も買い足そうか。消耗品は都度買えば良いから……本とか買い足すかな。アリサも暇つぶし欲しいでしょ?」
「ヒナがいるからなぁ」
「私を暇つぶしの道具にしないの」
「本屋なら街の東側にあるぞ」
そう言ってライデンさんが受付に戻ってきた。手続きを終えて来てくれたみたい。どこまで聞かれていたのか気になるけど、特に気にしているような様子もないから大丈夫かな。
「大きいですか?」
「いや、鉱山の街だからな。娯楽程度しかねぇと思う」
「寧ろ娯楽が欲しかったので、丁度良いですね。何か鉱山以外に観光名所とかってあります?」
「鉱山以外か?」
ライデンさんは悩みながら冒険者証をアリサに手渡す。アリサは更新された冒険者証を確認していた。
「ねぇな。ここは鉱山で採掘をするしかない街だ。後は武器屋で武器を作るが……」
ライデンさんはそう言いながら私の手首を見る。そこには腕輪状態の雷鎚ミョルニルがあった。それを見て、アーティファクトだと気付いたらしい。
「嬢ちゃん達には必要ねぇわな」
「分かるんですか?」
私は腕を軽く鳴らして訊く。雷鎚ミョルニルについての情報は言っていないはずなので、少し驚いたからだ。
「まぁ、見りゃあな。この街に住んでりゃ武器には多少詳しくなる。まぁ、適当に見て回れば良いだろう。ああ、依頼を受けずに鉱山には近づくな。基本的に依頼を受けて掘る場所だからな。普通には入る事が出来ねぇ。後、あそこは割とピリピリとしている時が多いからな。怒鳴られるかもしれねぇ。その時々によるんだがな」
「なるほど。分かりました。じゃあ、また来ますね」
「おう。ちゃんと休憩を挟めよ」
「は~い」
ギルドを後にした私達は貸家に帰ってきた。連続で依頼を受ける事は出来るけど、健康第一で活動する。
「お昼ちょっと過ぎかぁ。お昼ご飯食べてから買い物に行こうか」
「うん」
「それと割と稼げるから、ウォンバットにいる間は一日依頼を受けて二日休む事にしよう。その代わり、一日の狩りの時間を少し延ばす感じで」
「うん。これだけ稼げるならそれが良いかもしれないね」
手洗いなどをしてからお昼を作り始める。
一日で百万以上稼げているので、そこまで頻繁に依頼を受ける必要がない。まぁ、受けない理由もないのだけど、少しはそういう期間を作っても良いと考えた。
結構頻繁に戦っていたし、しっかりと英気を養うという意味でも良いと思う。後、下手に狩りすぎると、他の人の分のモンスターがいなくなるかもしれないし、そもそも絶滅させる恐れもある程度ある。
ここのモンスター達は、これまでと違ってそこまで沢山の数がいるように見えなかったし、ここら辺の配慮は必要だ。まぁ、街のために適度に倒す必要はあるのだけどね。
「そういえば、依頼の中に鉱山内のモンスター退治もあったよ」
「え? そうなの?」
私がお昼ご飯を作っていると、アリサが後ろから私を抱きしめてそんな事を言う。もう刃物を使っていないから良いけど……いや良くはないか。フライパンで火傷するかもだし。
ただそれよりも気になる内容がアリサの言葉だった。
「うん。Cランクからだったけど、鉱山の中に入って一週間くらい中のモンスターを倒すみたいな依頼だったよ。採掘に来ている人達の安全確保のためだと思う。通常報酬で五十万リル」
「おぉ……通常報酬で五十万もあるって良いね。それだけ危険ではあるからかな。内部の空気の問題もあるし。モンスターの内容は?」
「そこまでは見てないから分からない」
アリサも軽く見掛けて一番目立つ情報を覚えていたってだけらしい。
「そっか。坑道にいるモンスター……あそこにはいなかったから、こういう場所限定のモンスターなのかな。坑道内だし、ゴーレムとかの可能性もあるかな」
「ふ~ん……それも前の世界の知識?」
アリサにも前世の話はしてある。だから、私が何も見ていないはずなのに、ゴーレムの名前を出したのをそっちの知識から出したものだと考えたみたい。
「うん。後はスライムとか」
「へぇ~……でも、依頼は受けないでしょ?」
「う~ん……五十万か……モンスターの買い取りも考えると、百万はいきそうだなぁ……」
「でも、今の依頼でも稼げるよ?」
「まっ、そうだね。一週間拘束もキツいし、このままで良っか」
正直坑道に入りたいとは思わないから、このまま外で戦うだけでも良い。通常報酬で五十万は魅力的だけどね。
「そういえば、ウォンバットでは、受付に女性がいないから恋人作れないね」
「受付全員に手を出して貰っているわけじゃないから。別に全ての街で身体の関係になる人を作らないといけないわけでもないし」
現時点では全部の街で作っているけど、必ず作ろうと思っている訳では無いので、成り行きで出来れば良いというだけだ。
「じゃあ、私独り占め?」
アリサが私のお腹を撫でながら聞いてくる。こういう事を覚えてから本当に好きになってしまったみたい。いや、正確には私が好きになったって感じなのかな。
「そうだね。でも、一日中とかはあまりやらないよ? 食材の買い出しとかもあるから。食費的にはこっちの方が安く済んではいるのも休みを多くして良い理由になるかな」
「ヒナって、主婦みたい」
「お金はしっかりと管理しないと駄目だからね」
そんな会話をしながらお昼を作り終える。そして、お昼を食べ終えたら外に出て服と寝具と本を買い足していった。夜ご飯と翌日の分の食材を買ってから貸家に帰る。
その後はいつも通り。夜になるまでアリサに愛されて、夜ご飯を作ってお風呂に入ってからまたアリサに愛されて寝る。やっぱりアリサは欲が強い気がする。
決して、私が強く望んだとかはない。まぁ、拒絶する事も全くないのだけど。




