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異世界旅はハンマーと共に  作者: 月輪林檎
異世界旅始め

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Eランクにランクアップ

 朝起きると、隣にはミモザさんが寝ていた。添い寝は前にもやった事があるので、隣に寝ている事は珍しくない。でも、私が裸で寝ている事はなかったはずなので、ちょっと恥ずかしい気持ちになる。


(先に服を着た方が良いかな……?)


 そう思ってベッドを抜けだそうとした私を後ろからミモザさんが抱きしめてきた。いつの間にか、ミモザさんも起きたみたい。肌同士が密着して形を変えるので、その感触がダイレクトに伝わってくる。


「おはようございます。お身体は大丈夫ですか?」

「はい」

「今日の予定はギルドですか?」

「はい。採取依頼を受けようと思います」

「なるほど。では、一度メイリアさんと合流しないとですね。朝食の支度をしてきますので、洗顔と歯磨きをしてきてください」

「はい」


 言われた通りに、洗面所で洗顔と歯磨きをして服を着替える。メイリアさんが服を用意してくれたので、運動着に着替えられた。

 私が戻るとミモザさんがテキパキと朝ご飯を作り終えていて、私の後に洗面所に入って洗顔や歯磨きをしてきた。先に食べているのもあれなので、少し待っていると、すぐにミモザさんが戻って来た。

 ミモザさんは、席に着く前にキスをしてくる。歯磨き粉のミントの味が伝わってくる。私も同じように歯磨きをした後だから、同じ感じになっているかな。五秒くらいキスをしたら、ミモザさんが席に着いた。


「それでは、朝ご飯にしましょうか」

「はい」


 洋食プレートのような朝食を食べていく。ミモザさんは料理上手みたいで、本当に美味しいご飯だった。

 朝食を終えた後は、ミモザさんと一緒に宿舎に戻っていく。そして、宿舎で待っていたメイリアさんと合流する。


「それでは、私は行きますね。一週間後の出立の日までは、教会か宿にいますので、何かあれば来て下さい」


 ミモザさんはそう言って私の頬にキスをすると、手を振って去って行った。

 それをメイリアさんはニヤニヤとしながら見ていた。完全に見透かされている事が分かるので、少し顔を熱くさせながらメイリアさんを見る。


「何ですか?」

「何でもないわ。ミモザ様とも仲良くやれて良かったわね。モテモテで羨ましいくらいだわ」


 メイリアさんはそう言いながら、私の頭を撫でてくる。ちょっと恥ずかしいので、私は顔を逸らす。それすらもメイリアさんからすれば可愛い反応でしかないので、小さく笑っていた。


「さてと、今日はギルドに行くのよね? 採取依頼を受けてランクを上げるのだったかしら?」

「はい」

「それじゃあ、一旦部屋に戻って着替えていらっしゃい。ヒナちゃんの防具が完成しているから」

「え? いつの間に……」

「昨日取りに行ったのよ。ほら、サイズも合っているはずだから」


 メイリアさんに背中を押されるので、一旦部屋に戻る。すると、私のベッドの上に服が並んでいた。白を基調とした防具で、靴と手袋だけが黒かった。

 見た感じ向こうの世界の軍服のようなきっちりとした印象を受ける。上着は長袖と半袖の二種類があるけど、下は長ズボンしかない。ここら辺は足を守るために必要な長さにしているのだと思う。ウエストが少し緩いのでベルトで締める形だ。私が大きくなっても良いようにしてくれているのだと思う。

 この上から羽織る外套は、薄手と厚手の二種類用意されている。どちらも動きやすさで言えば、遜色ないので夏と冬で使い分け出来るようにという事だと思う。外套は、太腿に掛からないくらいの長さだ。ちゃんと走りやすいように作られている。

 ブーツは脛の部分に金属が付けられている。脛を攻撃された時の防御とかかな。

 全体的にちょっとだけ大きい。私の成長を考えているという事がそこで確定した。でも、動きにくさを感じるような大きさではない。配慮が有り難い。

 冬用の防具をインベントリに仕舞い、夏用の防具を着終えた私は洗面所に行って、小さな鏡で自分を見る。


「う~ん……子供が背伸びしてる感じ……騎士みたいな印象が強いかな」


 扱うのはハンマーだから、戦闘時になったら騎士感はなくなると思うけどそういう印象を受けるような見た目になっていた。

 防具の名前は雷獅鷹の衣というらしい。名前の意味がよく分からないので、取り敢えず、詳細をメニューから見てみる。


────────────────────


雷獅鷹の衣:グリフォンの羽根と雷獣の皮を織り込んだ布製防具。的な攻撃に耐性を持ち、火、風、雷の属性に耐性を持つ。聖女の祈りにより自浄作用がある。


────────────────────


「え?」


 思わず声が出た。グリフォンの羽根が入って、火と風にも耐性が付いている事も驚いたけど、何よりも聖女の祈りにより自浄作用があるというのに驚いた。


「いつの間に……」


 これに関して、ミモザさんからは何も聞いていない。何か隠しているという雰囲気すらなかったから、自分から何かを言うつもりは一切なかったのだと思う。

 ステータス補助効果がない分、耐性に全振りされているのかな。

 しっかりと防具を着て、メイリアさんのところに戻った。


「着てきました」

「おっ! 似合っているわね。ちょっとだけ騎士風にして貰ったから、若干背伸び感が強いけれど」

「やっぱりそう思います? でも、子供っぽいよりは好きです」

「それなら良かった。丁度グリフォンの素材を手に入れたから、それを使って仕上げて貰ったのよ」

「そうだったんですね。ありがとうございます。でも、その分お金が増えたんじゃ……」

「はいはい。気にしないの。あれがあってから心配の方が勝っているから」


 メイリアさんはそう言いながら、私の頬を揉んでくる。私がグリフォンに襲われた事を気にして、より良いものにするために色々と追加注文したみたい。その分いくらになったのか聞くのが怖い。


「それじゃあ、ギルドに行くわよ」

「はい」


 メイリアさんと手を繋いでギルドに向かう。そして受付に行くと、ビビアンさんが迎えてくれた。


「おはようございます、ビビアンさん」

「おはようございます、ヒナさん。新しい防具?」

「はい! 完成したんです! ちょっと背伸び感が強いですけど」

「可愛らしくて良いと思う。良かったわね」


 ビビアンさんがそう言って撫でてくれる。嬉しくなって自然と顔が綻ぶ。


「今日は二つの依頼を受けに来ました」

「はい。採取依頼と討伐依頼ですね。森に近いところまで行く事になるかもしれません。そこは気を付けてください」


 職員モードになると、ビビアンさんは敬語に戻ってしまう。ちょっと寂しいけど、公私は区別しているみたい。


「はい。分かりました」


 私が返事をすると、ビビアンさんは微笑んでから手続きをしに行ってくれる。そうして手続きを終えて冒険者証と薬草の絵を受け取ると、もう一度頭を撫でられる。


「本当に気を付けてね。メイリアがいるからって、無茶な事はしないこと。良い?」

「はい! いってきます!」

「いってらっしゃい」


 ビビアンさんと手を振り合いながら別れて、メイリアさんと手を繋いで街の外に向かっていく。


「薬草の知識はある程度入っているわね?」

「はい。でも、この採取依頼って範囲が広いですよね。止血効果を持つ薬草の採取って」

「そうよ。まぁ、基本的には、その薬草の絵と同じものを持っていけば良いから、そこまで気にしなくても良いけれどね」

「なるほど……でも、どうせなら、効能が強い方が良いですよね?」

「そうでもないわ。あまり強すぎると健常な部分に異常が出たりして良くないから」


 確かにしっかりと症状にあった薬じゃないと、逆に良くないのか。そうなると、弱い効能のものでも、ちゃんと集めておく必要があるという事かな。採取依頼も意外と大変なのだと実感させられる。


「そうなんですね。じゃあ、取り敢えずはこれを採取します。草原と森の境目くらいにあって、基本的に群生しているから見つけやすいんですよね。取るときは根っこも一緒に取るようにしないといけない……だったはずです。根っこまで全部使えるのが売りだったはずなので」

「正解よ。ちゃんと勉強しているわね」


 メイリアさんは褒めながら頭を撫でてくれる。本当にちゃんと勉強しておいて良かった。言葉を読む勉強にもなるし、一石二鳥だ。

 そうして、少し森に近い平原を探していると、ホーンラビットが次々に襲い掛かってくる。これがあるので、討伐依頼も一緒に受けた。こっちも一石二鳥……なのかな。

 襲い掛かってくるホーンラビットを、雷鎚トールでどんどんと倒して行く。雷獅鷹の衣を着て初めての戦闘だったけど、特に問題なく動ける。動きの邪魔にならないようにしっかりと調整してくれた事がよく分かった。

 そうして駆け回っている中で薬草を見つけたので、丁寧に採取していく。採取の際もメイリアさんは特に何も言うことはなかった。メイリアさんは基本的に見守り育成だから。


「このくらいかな。依頼分は集めたから、これだけで良いのかな。あまり採取し過ぎるのは駄目だし」

「おっ、ちゃんとそこも学んでいるわね。採取依頼で全てを採取するのは、その群生地を消す事に繋がり兼ねないから、基本的に必要数もしくは群生の内の三割に留めるのが基本よ」

「はい」


 採取したものをインベントリに仕舞って、メイリアさんと手を繋いで戻っていく。


「あっ、汚れがなくなってる」

「ミモザ様にして頂いた祈りの効果が現れているわね。汚れに反応して『浄化』が発動するようになっているのよ」

「へぇ~……そうなんですね。あっ! そうだ! 魔法の使い方って分かりますか?」


 ミモザさんの祈りが雷獅鷹の衣に『浄化』の効果を与えているという事を知り、魔法を掛けて貰ったという事から、【雷魔法】を手に入れた事を思い出した。


「分かるわよ。心臓から流れる血液を意識してみて」

「心臓から流れる血液……」


 言われた通り、心臓から流れる血液を意識する。意識したところで、本当に血液の流れが分かるわけじゃないから、ただのイメージだ。身体を巡っているという事を意識する。


「そのイメージがそのまま魔力だと思って。魔法は、その魔力を魔法に変換して放つというものよ。この時にMPを消費するわ。自分がどんな魔法を使えるのかは、ステータスから魔法のスキルを見る事で知る事が出来るわ」


 そう言われてメニューを出す。私が持っているのは、【雷魔法】だ。そこから少し調べてみると、『雷撃』という魔法があった。

 ここまでのイメージをした後は、雷鎚トールと同じで念じるだけで撃てるらしい。


「名前を言ったりはしないんですか?」

「名前を言っただけで出たら、唐突に出て来て困るでしょう?」

「確かに……」

「名前を呼ぶ事で効力を高める魔法もあるけれど、攻撃系の魔法は基本的にないわ。それにあまりおすすめもしないわ。不意打ちに使えないもの」

「なるほど」


 取り敢えず、そういうものは説明とかに書かれるだろうから、魔法が増えたら調べてみるのが良いかな。

 私は向かってくるホーンラビットに向かって、『雷撃』を放つ。手の先から雷が飛んでいって、ホーンラビットに黒い跡が残って動かなくなった。雷鎚トールの雷より弱い感じだ。それでもホーンラビットくらいなら一撃で倒せる。当たり所の問題とかもあるのかな。


「トールの方が強いかもです」

「アーティファクトと比べたらそうなるわね。それでも使っていれば、かなり強い魔法を使う事が出来るわ」

「なるほど……まぁ、基本はトールを使うでしょうし、地道に育てていきます」

「それが良いわね」


 魔法の使い方も分かったので、旅を始めたら少しずつ育てていこう。お金の心配をしなくても良くなったらとかになりそうだけど。

 そうしてギルドに戻って来た私は、ビビアンさんに個室に案内されて薬草とホーンラビットを提出する。


「薬草も間違っていないですし、根っこまで綺麗に取ってくださっていますね。これなら最大額を出せます。ホーンラビットも合わせて六万リルですね」


 ホーンラビットを狩った数が少ないので、そのくらいしか貰えなかった。まぁ、こればかりは仕方ない。


「はい。では、ランクアップの手続きをしてきます。少々お待ちください」


 ビビアンさんにそう言われて、私とメイリアさんは個室で待つ。すると、五分程でビビアンさんが帰ってきて、冒険者証を渡してくれた。魔力を通してみるとEランクに上がっている事が分かった。


「おぉ……上がりました!」

「良かったわね。ただ、この街の依頼だとEランクでもFランクと同じ内容をやる事になるから、普段とあまり変わらないかもしれないわね」

「そうなんですか?」

「はい。時折ホーンラビットを狙った大型のモンスターが来ますが、それでも数は少ないので依頼として出る事が少ないのです。森の中も奥の方にいけば変わってきますが、そうなるとDランク依頼になりますね」

「なるほど。じゃあ、依頼を見つけたら、積極的に頑張ります!」

「グリフォンの調査が終わっていないから駄目よ」

「えぇ~……」


 やる気に満ちあふれていたところで、メイリアさんから駄目と言われてしまった。まぁ、グリフォンの調査が終わってないからと言われてしまえば、頷く事しか出来ない。


「そうだ。ヒナちゃんさえ良ければ、今日うちに来ない? ランクアップのお祝いをしてあげる」

「本当ですか!? メイリアさん! 良いですか!?」

「良いわよ。それじゃあ、仕事終わりに迎えに来てあげて」

「ええ。分かったわ」


 お金を貰った私は、メイリアさんと一緒に宿舎に帰る。そして宿舎内でメイリアさんからお祝いされて、迎えに来てくれたビビアンさんにもお祝いをされた。着替えを持っていったため、そのままお泊まりとなった。

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