ゴールデンイーグル到着
それから一週間旅を続ける。予定通り二日で森を抜けて、五日間平原を歩いていると、大きな山の麓にある街を見つける事が出来た。
「近づいていくと、本当に大きな山って分かるね。確かにあれは高山病を気を付けないといけないってなる」
森を抜けてからずっと見えていた山。その麓にあるのがゴールデンイーグルだ。
「ゴールデンイーグルにはどのくらい滞在するの?」
「う~ん……二週間前後かな。山に関する情報とか諸々集めつつ、観光もとかもしたいから」
ゴールデンイーグルはただ通過する街ではなく、しばらくは滞在する。旅の目的に観光があるというのもあるけど、初めて旅をしたスレイアの休憩も含めている。
後は、山を登る前に山の状態を確認しないといけないから、そのための情報収集期間でもある。
この調子で歩いて行けば、今日の夕方くらいに到着するだろう。その見立て通り、夕方になった頃に私達はゴールデンイーグルに到着した。冒険者証を見せて中に入り、街を見上げる。ゴールデンイーグルは、見上げるという表現が正しい。何故なら、山の斜面に沿って街が広がっているため、街の奥は上の方にあるからだ。
その中でギルドを探して入る。
外観も中の喧騒もどこでも変わらないので、見つけやすいしスレイアは私に隠れる。
「すみません。二週間くらい滞在したいんですが、鍵付きの宿とかないですか?」
私は冒険者証を渡して、受付嬢のお姉さんに尋ねる。
「現在でしたら、こちらの宿屋が空いているはずです。中部東端にありますので、そちらへどうぞ」
「分かりました。ありがとうございます」
「はい。皆様の事情は伝え聞いておりますので、何かお困りになった際は、お申し付け下さい。ギルドの方で最大限サポートさせて頂きます」
「ありがとうございます」
アリサの事情に加えて、スレイアの事情もあるので、ギルドのサポートはかなり助かる。場所のメモを取って、私達は宿へと向かった。三人で一部屋を取る。ベッドが二つだけだけど、構わないという風に言ったら、おまけをしてくれて、一泊二万リルで泊まれる事になった。本当だったら、一人一万リルのところを一人分浮かせてくれる。
「さてと、宿も確保したし、ご飯食べに行って今日は寝ようか。明日はギルドの依頼を確認してから、軽く観光しようか」
「そうだね」
「うん……」
まずは旅の疲れを癒す。依頼は明後日からかな。
夕食とお風呂を済ませて、私とスレイアで一つのベッド、アリサが一つのベッドを使うという形にした。アリサと私でも良いけど、慣れない場所でスレイアは不安になるだろうからという事で、私と一緒になった。
そうして翌日。私達はギルドに来て依頼を確認する。そこには
ホーンラビット、マッチョボア、ロックコンドル、メディカルバードの依頼とアサルトゴートの依頼があった。このアサルトゴートが、ヤバい山羊という事だ。
「なるほどね。山だけじゃなくて、平原とかの魔物や山の麓にある森の中での討伐もあるわけか」
「最初からアサルトゴートでいく?」
「そうだね。山に慣れるためにもその方針でいこうかな」
アサルトゴートの討伐で山に登るけど、多分中腹までは行かないで良いはず。アサルトゴートの棲息地が山というだけになっているから、山全体が棲息地となっていると考えられる。
他のモンスターも同じように表記されているからね。
今後の方針を決めたところで、ゴールデンイーグルの観光に移る。こうして山に街を作っているゴールデンイーグルだけど、高い場所からの景色よりも特筆すべきものがあった。
「ここの石……凄い……」
スレイアは街のいたるところにある石像を見て、その出来映えに驚いていた。そのスレイアの気持ちは良く理解出来る。私も同じように感じていたから。
「石工の街なのかもね。山も岩肌が多いし。そういうのに適した石があるのかも。それにしても綺麗な石像だね」
私達が見ているのは牛の石像だ。何か血管まで再現されていそうな一種の狂気を感じる。前の世界でも昔の石像とかを見て、今の技術がない時代に精緻すぎる石像をどうやって作ったのだろうかと思った事がある。
あそこから感じられる彫刻家の執念とかそういったものを、ここでも感じる。いや、あっちでは写真でしか見ていないから、実際に見ているこっちの方がより強く感じる感じかな。
「この鬼気迫る感じ……覚えがあるような……」
「私も……何だろう……」
「それって、二人の記憶に引っ掛かるものがあるって事じゃない? 石像に覚え有りか……多分、同じ石像じゃないだろうけどね。貴族の家なら石像くらいあってもおかしくないし。おかしくないよね?」
「私達に聞かれても」
「うん……」
「まぁ、そうか」
私のイメージは、向こうの漫画とかだったりのイメージなので、こっちの世界に合っているとは限らない。まぁ、私の家にはなかったので、日本の庶民の家にはないと言い切れる。私の家が特別貧乏とかではない。そもそも石像を置く意味が分からないし。そんなスペースは庶民の家にない。
「ヒナが家を建てる時は置く?」
「いや、要らない。手入れとか大変そうだし」
「でも……ヒナ作りそう……」
「えっ……私ってそんなイメージ?」
「うん……」
スレイアはそう言いながら、私の手首を見る。そこにあるのは、腕輪になった雷鎚ミョルニルと打ち出の小槌がある。つまり、ハンマーから出て来るイメージだ。
「ハンマー持ってるだけじゃん。石像作るなら鏨がないと」
「鏨……?」
「うん。刃の付いた金属製もので、ハンマーで叩いて石を削るためのもの。これで作るんだよ」
「凄い……」
これは私に対してではなく、石像を作った石工や彫刻家に対しての称賛だ。
「私にそこら辺の才能はないだろうし、多分やらないかな」
向こうでも物作りよりも戦いの方が好きだった。そこまで向いていないと思う。
「庭に置いたりしたら、景観が良くなると思うけど」
「広い庭だったらね。二人の感覚は貴族的感覚なんじゃないかな。それか、この世界特有か。私は向こうでの庶民だったから、ここまでの石像が置ける庭とかはなかったし」
「貴族的感覚……ここから何かに繋がる?」
「さぁ? どちらかというと、二人の感じ方的な問題だから、記憶には直結しないかも」
「それもそっか」
まぁ、石像が身近にあったというのは、良い気付きだと思う。後はその題材を探すだけだ。ゴールデンイーグルを観光している間に見つかると良いなと思ったけど、結局それ以上の記憶は広がらなかった。




