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ゴミ221 達人、弱点を突かれる

 10月10日、トボル。

 イリマイオトグ遺跡のボス部屋らしき場所を攻略した俺たちは、直後に現れた魔族「置く者」と対峙した。

 そして「置く者」から、存在進化によるステータス上昇は、存在進化1回ごとに4倍ぐらいだと教わった。

 魔族は存在進化4回。ハイエルフ(アロー)素人(オーレさん)は1回だから、ステータス差は64倍ぐらい。アローとオーレさんは、戦うどころか見られただけで緊張し、変な汗をかいている。


「まさか、2人を人質か何かにできるとでも?」


 アローやオーレさんが64倍も強い相手に緊張するのは仕方ないことだ。

 だが、魔族の存在進化は4回。達人の存在進化は6回。俺から見れば、「置く者」は16分の1のステータスしかない格下だ。

 「置く者」が2人を狙うつもりだとしても、俺が黙って見ているわけもなく、当然2人を守る。とすれば、格下の「置く者」が俺の防御を抜けるわけがない。


「ふっ……『そうはさせない』とでも?」


 「置く者」は、にやりと笑う。

 勝算があるとでも……?


「教えてあげましょう。

 少数精鋭の弱点は、大軍です。特に守るものがある場合には、ね。」


 そう言うと、「置く者」の骸骨デザインの鎧がカタカタ動き出した。そうして、地面から植物が生えてくるように、鎧の各部からアンデッドが生えてきた。召喚の魔法陣を鎧に仕込んでいたという事か。しかも、遺跡のあちこちに設置されていた召喚魔法陣よりもペースが早い。30秒に1体どころか、1秒に30体のペースでアンデッドが増え続ける。

 あれだな。術者自身に設置しているせいで、魔力の供給が早いらしい。そこらの地面に設置すると、地中や空中の薄い魔力を吸い集めて起動することになる。その点、術者が直接魔力を流し込めば、必要な魔力がたまるのが早いわけだ。


「数の暴力を受けるがいい!」


 「置く者」の猛攻が始まった。

 無数のアンデッドが次から次へと俺たちに襲い掛かる。

 俺は火ばさみを剣の代わりに振り回してアンデッドをなぎ倒す。アローとオーレさんは、それぞれの武器で戦った。「置く者」が起動している召喚魔法陣は10個以上。それぞれが秒間30体のアンデッドを生み出すので、全体で秒間300体以上だ。負けじと攻撃し、なぎ倒していくが、召喚されるアンデッドはここへ来るまでに倒してきたものより強いらしく、2人とも1発では倒せていない。手数が必要になって、戦況は拮抗――いや、こちらがやや押されている。

 ならば……俺は前へ出た。俺だけが唯一、アンデッドの大軍を押せる。アローほどの射程や攻撃範囲はないし、オーレさんほどの手数や技術もないが、ステータス差のおかげで1発でまとめて数体をなぎ倒せるのだ。

 アンデッドの群れをなぎ倒し、前へ出て、そして近づく。「置く者」に直接攻撃を加えて、召喚を中断させるぐらいにひるませれば、この状況は逆転できる。


「オラァッ!」


 殴る!

 俺の拳が「置く者」に直撃。ステータス差が16倍もあるので、「置く者」は反応できない。

 ――はずだった。


「まるきり未経験者のようですね。」


 「置く者」はオーレさんみたいな動きで俺の拳をいなし、反撃までしてみせた。

 もちろん猫ほどの戦力しかない相手に殴られても、それほど痛くはない。だが。


 ドカアアアアアアアン!


 殴られた瞬間、「置く者」の鎧が爆発した。

 指向性地雷みたいに強烈な爆風が襲ってきて、俺は吹き飛ばされた。


「爆発反応装甲……!? そうか、爆発の罠を鎧に……!」


 ここに来るまでに何度も通路に仕掛けてあるのを、アローが見つけて無効化してくれた。

 同じものを鎧に仕込んでいたのだろう。通過すれば発動する魔法の罠。正確には、殴るより前に、接近した段階で爆発が始まっていたはずだ。


「くそっ……! ちょっとうらやましい!」


 なんたるロマン兵器!

 地球にも戦車の装甲の一種として存在するが、1回爆発したらその部分を部品交換しないと二度と爆発しないとか、随伴する兵士を巻き添えにしてしまうとか、実際の運用にはかなりの注意を必要とする代物だ。戦車の車体へのダメージを軽減する効果は確かなので、使われてはいるのだが……。

 もちろん個人で携行できる代物ではない。それを、魔法の罠で重量ゼロを実現して個人携行を可能にするとは……! しかも魔法の罠は物理的な部品を必要としないため、魔力を注げば再使用できる。そのため通常は、周囲の魔力を吸収して充填するための回路を組み込んで、自動的に再使用できるようにしておくものだ。もちろん個人装備に付与するのなら、手動で魔力を充填してもいい。

 あああああ! うらやましい! なんてロマン! 別に必要ない装備だけども! 爆発反応装甲! なんか響きがカッコイイ!


「いやいや、うらやましいとか言ってる場合か?」

「左様、左様。殴ったら爆発するとか、地味に厄介ですぞ?」

「そりゃそうだけどさ……。まあ、そんなの殴らなきゃいいだけじゃん?」


 爆発反応装甲によるダメージは軽微。今まで魔族勢力との戦いでは、その名を冠する攻撃を脅威に感じて来たものだが、「置く者」はまるで脅威を感じない。「置く」という……つまり魔法を罠として設置できるというだけの能力なのだろう。設置した魔法の威力は、本人のステータス次第。それは俺の16分の1しかない。存在進化の回数が「置く者」より少なければ脅威だろうが……まあ、こればかりは格差だな。

 格闘技術は俺より上。それが厄介といえば厄介だが、爆発反応装甲への対策と同時に解決することだ。


「投擲で倒すだけだ。」

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