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ゴミ217 達人、見つける

 10月10日、トボル。

 オーレさんから武術の講義を受けながら、俺たちはイリマイオトグ遺跡を進む。

 何度か階段を下りて、もう地下4階まで来ている。1階ごとの面積もかなりの広さだ。アンデッドはまんべんなく全体に分布していて、通路には罠もあった。


「そこ、また魔法の罠だ。」


 アローが警告する。

 魔法の罠は、物理的な装置を必要としないので、普通なら見た目には何もないのと同じ。つまり気づけない。そこで、対策として専用の探知魔法が使われるらしい。

 ただし、アローがいれば探知魔法など不要だ。ハイエルフに存在進化して、魔力を視認できるようになったアローには、魔法の罠が肉眼で見える。

 そして発動しないギリギリの距離まで近寄り、アローが魔力を吸い取ると、魔法の罠はきれいさっぱり消えてなくなる。


「よし、行こう。」


 アンデッドの相手はオーレさんがやってくれるし、罠はアローが対処してくれる。

 俺は2人についていくだけで、ついでにオーレさんから剣の使い方を教わったりして、まったりしている。

 まあ、それがいつまでも続くわけはないが。


「お? あれは……。」


 俺は肉眼でも見える魔法陣を発見した。


「見える魔法陣とは……罠ではないという事でしょうな。」

「罠の魔法陣とは形が違う。何の作用をするのかは分からないが。」

「アンデッドの召喚だろう。前に見たやつは30秒ごとに1体のアンデッドを召喚していたが。」


 話している間に、魔法陣からアンデッドが召喚された。

 すぐにオーレさんがアンデッドを切り伏せる。

 俺は久しぶりに火ばさみを手に取り、魔法陣をひっかいた。

 「破壊不能」の効果で魔法陣だけが傷つき、回路を損壊された魔法陣はその機能と輝きを失う。


「ディバイドの遺跡で見たのと同じだな。」

「私が骨折した時のやつか。」

「ああ。アローはあのとき、治療を受けていて遺跡には入っていなかったな。」


 話しながらどんどん進んでいくと、地下4階には無数に召喚の魔法陣が設置されていた。

 その先、地下5階から下でも同様だった。


「……あの時と同じ奴が犯人という事か。」

「その可能性は高いだろうな。」

「ダイハーンで別れて早々に、ずいぶんと波乱万丈ですな。」


 ディバイドでの惨状を思い出す俺たちに、オーレさんが呆れたように言う。


「たしかに。」

「色々あったな。」

「ならば、もう少し2人の関係が進んでいてもいいと思いますぞ?」

「そ、それは今、関係ないでしょう。」

「そういうオーレ殿こそ、どうなのだ?」

「新年になったら結婚する予定がありますぞ。」

「「ええええ!?」」


 俺とアローの声が重なる。

 再会してから一番驚かされた。


「2人にも式には出席してもらいたいですな。」

「それは、もちろんお祝いに行かせてもらいます。」

「ああ……しかし、相手は誰なのだ?」

「冒険者ギルドの受付嬢ですな。

 あちらも、稼ぎのいい冒険者を見つけたら狙おうと思っている女性が多いですからな。ランクさえ上げれば、よくある話ですぞ。」

「ああ……そういう……。」


 急に生々しい話になった。もうちょっと、のろけるとか、ロマンのある話が聞けるかと思ったのだが。


「おっと……どうやら、少しは歯ごたえのある相手がいるようですな。」


 大きな部屋に出た。

 中央に召喚の魔法陣が光っているが、その大きさが他とは比べ物にならない。


「ボス部屋というわけか。」


 アローとオーレさんが不敵に笑う。強敵との戦いを楽しもうと? 戦闘狂的な側面があるのも、冒険者ゆえだろうか。地球にも冒険家と呼ばれるような人たちはいたし、RPGやアクションゲームの面白さとも通じる。勝算があるのなら、冒険はより危ないほうが楽しいものだ。ジェットコースターがより怖いものほど楽しいように。


「来るぞ。」


 魔法陣の輝きが増し、巨体が水面に顔を出すようにして現れた。

 無数の骨が絡み合って、1つの巨体を形成している。魚群のような光景だ。全体的には人型、ただし上半身のみといった姿である。


「デカいな……。」

「剣で斬るにはやや難儀といったところですな。まあ、何度も斬ればいいだけですが。」

「七味唐子さんの鉢植えがなければ、アンデッド全般、弓矢では倒しにくい敵だが……あるんだから、撃つだけだな。」


 俺たちはそれぞれに武器を構えた。

 ちなみに俺は剣の稽古を続けるつもりで、剣を手にしている。どうせすぐ壊れるだろうが、同時にどうせこの程度のアンデッドでは俺のステータスとの差が埋まらない。相手のステータスを鑑定する能力でもあれば、よりはっきりするだろう。だが、そうでなくても存在進化1回の2人が「デカいだけの敵」と認識している様子からして、素手でやったら俺には「敵」にならない。


「では、左はお願いしてもいいですかな?」

「了解です。右は任せました。」

「私は胴体を狙ってみる。」


 動く相手には矢が当たらないアローだが、相手が人型ならば胴体は最も大きく、最も動きにくい場所だ。よほど大きく身をかわさない限り、とりあえず撃ったら当たる感じになるだろう。


「グオオオオオオオオオ!」


 熊か何かのような低い声で吠えて、巨大アンデッドが両腕を振り上げた。

 ……足がないのに、どうやって踏ん張っているんだろうか?

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