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ゴミ210 達人、洗脳されていた研究者たちを看る

 10月7日、ザンドリフ。

 「染める者」を討伐してからの俺たちは、研究所で捕縛した連中の治療――つまり洗脳状態を解除することに注力した。

 感情攻撃みたいに、アローが触ったら魔力が奪われて洗脳状態が解除されるのだろうと仮説を立て、実際に試してみたのだが、これがなかなかウマくいかない。

 原因は、アローの魔力吸収体質が強すぎる事だ。種族が達人でステータスがべらぼうに高い俺なら大丈夫だが、人間がアローに触ると、すぐに魔力を吸いつくされて死んでしまう。ハイタッチみたいに一瞬触るだけなら問題ない。握手も、短時間なら大丈夫だ。

 しかし、短時間の接触では、洗脳の原因になっている魔力を奪えたかどうか分からない。


「ほっ……ほっ……どうだ?」


 俺のロープで縛り上げた研究員を、アローがつつくようにちょんちょんと触って、少しずつ魔力を吸い取っていく。

 奪い取る魔力の量が少なすぎると洗脳状態が残ってしまうが、多すぎると死んでしまう。吸い取るべき魔力をしっかり感知していれば、ある程度のふるい分けができるのだが……。

 アローは魔法を使えないが、魔力を操れないわけではない。発動する前に魔力を吸い取ってしまうから使えないだけだ。電気回路を構築することはできるのに、いざ電気を流そうとすると電気を吸い取ってしまって使えない、みたいな感じである。だから吸い取る魔力のふるい分けはできるのだ。相手の魔力に干渉して、吸い取るべき魔力が自分の近くに来るように位置を変えれば、優先的にその魔力を吸い取れる。

 感情攻撃の時は俺がやられて、アローに治してもらった。つまり俺が「吸い取るべき魔力」を感知するための実験台になっていたわけだ。今回は俺がやられてないから、じっくり調べられる実験台がいない。

 しかも「染める者」と感情攻撃の4人とは、魔力の質が違って、感情攻撃の魔力が参考にならないらしい。それは感情攻撃の4人が悪人だったのに対して、「染める者」がより進化した種族だったからだろう。液体になる肉体という共通点から考えると、「変わる者」と同じ「魔人」だったのではないかと思うが、そうだとしても「魔人」の魔力を吸収したことがないアローには、参考にならない情報だ。


「うっ……こ、ここは……?」

「お? うまくいったか。」


 そんな感じで、アローはちょっとずつ治療していき、だんだんと吸い取るべき魔力を感知して、ふるい分けができるようになっていった。

 結果、全員を治療するのに1週間ほどかかってしまった。


 洗脳されていた人たちは、自分たちが何をしていたのか覚えていなかった。

 すなわち、洗脳されていた間の行動は、別の人格といっていい。別の人格なのだから、元の人格に責任を取れと言っても「それは他人がやったこと」という感覚である。罰を与えることはできても、反省などするわけがない。反省のしようがない。ならば罰を与えるのは無意味だ。

 与えるとしたら、更生の余地なしとして死刑にするしかない。だが、それはそれでおかしな事になる。そもそも元の人格は犯罪に手を染めようとしていないのだから、更生の余地どころか、更生する必要がない。となると、死刑にするべき理由がなくなる。


「まあ、洗脳状態が本当に解除されたのか確認する意味も含めて、監視下に置くといったところが妥当だろう。」


 領主はそういって、刑罰を決める書類にサインした。

 では、洗脳されている間に自殺してしまった人たちは、どうなるのだろうか。

 彼らの元の人格は、いわれのない死に巻き込まれた犠牲者だ。しかし領主いわく、自殺した瞬間の、洗脳されていた人格は、反省を知らない更生の余地なき犯罪者である。生きていても、その人格は死刑に処すのが相当だろう。


「人格だけを死刑に――つまりは、洗脳状態を解除して、洗脳人格を消去するということか。」

「そういう事です。

 ただ、物理的に肉体ごと死んでしまったものは、どうしようもない。元の人格の冥福を祈るだけですね。」


 さて、と領主は居住まいを直した。


「改めてお礼を。

 大使殿のおかげで、ザンドリフは救われました。

 お礼として、当地ザンドリフから希望者を募り、大使殿の領地アイルへ移住させましょう。聞けばアイルは復旧を遂げて復興の途中だとか。すでにかなりの時間がたって、だいぶ復興も進んでいるでしょうから、娯楽をもたらす人材を中心に送りましょう。アイルがさらに発展するはずです。」

「いいのですか?」


 ノウハウを持った人材を送ってくれるというのは、とても助かる。

 ましてやザンドリフほどの都会で経験を積んだ者となれば、値千金というやつだ。


「もちろんです。

 移住に必要な費用は、こちらで負担しましょう。」


 遠慮するべきかとも思ったが、相手は男爵の俺なんかよりはるか格上の大貴族だ。首都のすぐ隣を任されているという事から考えても、たぶん爵位の一番上――公爵だろう。

 ならば、下っ端貴族の俺がつまらない遠慮なんかしても、厚意を無駄にする無礼になるだけだ。


「そこまで……ありがとうございます。」


 ありがたく受け取ることにした。

16章 完結!


明日はキャラクター紹介、明後日から17章を始めます。

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