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第57話 もう一つのSな関係

 はてさて。突然現れた転校生から、『今日から自分の姉だ』という素晴らしく突拍子の無い申し出に、呆然と立ち尽くす現神凪優こと前神凪翔。つまりは俺の事なのだが……。

 どうにも最近…と言ってもこの不思議な生活が始まってからだが。常に呆然としている間に、事態が淡々と悪化の一途を辿るという妙な結果が先行するようになってしまっているように感じる。

 今回もそれに違う事無く、現状は極めて最悪な方向へと傾きつつある。

 なぜなら―

「いつでも遊びに来ていいのよ」

「……はあ」 

 玄関前。

 綺麗に整理されてしまった荷物が詰められた鞄を片手に呆然と立ち尽くす俺に、ハンカチを添えて、涙ながらに語りかける母親。

「私はいつでも経っても君のお父さんだからね。いつでもパパと呼んでくれていいからね」

「お断りします」

 そして、いつもながら微妙に人間として間違えているような言葉を携えて見送る父親。

 本来、ここに藍璃がいれば更に面倒な騒ぎになりかねないのだが、どうやら藍璃はお出掛け中だったらしく、この珍妙かつ突然の出来事に遭遇する事は免れたらしい。

「今まで優お譲様がお世話になりました。それでは失礼致します」

 そんな俺の心中は何処吹く風か。気にする様子が無いまま、七瀬衣緒に遣わされた七瀬汐は丁重にお辞儀をすると、有無も言わさず俺をだだっ広い黒塗りの車の後部座席へと押し込める。

 示し合わせたかのように動き出す車。こうして素晴らしく手際よく、俺は長年住み慣れた家から、ほんの数時間までいたはずの見知らぬ豪邸へと連行されていったのだ。

 こうして見事に、俺は不本意ながらも“神凪翔”から“神凪優”という変化だけでは飽き足らず、“神凪優”から“七瀬優”という変化にまで至ってしまったという事になる。

 勿論、そのような最悪な結果になるまでには、それなりの理由と俺が知らない理不尽な思惑がある訳で。

 今回はそれについて、ここに至るまでの経緯と現状についての説明が必要だろう。

 まずは現実的な問題から。俺の現在の社会的地位から述べるとしよう。“神凪翔”が存在している以上、俺、つまりは“神凪優”は有り得ない存在であって、戸籍上、実在に存在しない状態にあった事は明白だ。

 しかしながら今は違う。ちゃんと“七瀬優”として実在しているのだ。

 法律上などといった小難しい事はよく分からないが、今回の諸悪の根源である七瀬衣緒曰く、『居る筈の人間を違う存在にするよりも、居ないはずの人間を実在する存在に仕立て上げる方が断然楽』らしい。

 そう言って、コロコロと笑う衣緒のドス黒い微笑みを見て、少しばかり世の中の不条理を感じさせた。

 少々男の子じみた口調に違和感を抱かせる事なく、その腹黒さも微かに匂わせている。そして、そのアンバランスな魅力を感じさせるその容姿も充分な不条理ではあるのだが……どうにも猫かぶりは十八番らしい。普段は、完全無欠なお嬢様ではある―

『お前。またボクの身体的問題に関して失礼な事考えてたろ?』

(訂正。無欠ではないな)

 そこまで考え至って、ふと思い出した、こちらを見上げる衣緒の姿を思い出して苦笑いを浮かべる。

 話す内容から察するに、衣緒が被験者であり、汐がSウィルスによって生み出された人物という事だろう。

 実際、その物腰からは想像できないが、屋敷に通された時に出会った使用人達の衣緒と汐に対する反応や接し方の違いは如実に現れていた。

 それを体現するかのように、衣緒も汐もお互いの立場を理解した上での付き合い方をしているようにも感じられたのは、たぶん間違いではないはずである。


『なんだ。それなりに友好的な関係を築けてるようだね?』


 つい数時間前に投げ掛けられた言葉が脳裏を霞める。その言葉は、つまりはそういう事だろう。彼女達の関係とは違った、俺達の関係に多少の驚きと疑問があってこその言葉だったのではないかと思う。

「……翔様と離れて良かったのですか?」

 そんな事を考えながら、車窓から流れる景色を見つめ終始無言のまま座っていた俺に、前に座る汐がほんの少しだけ不安げに瞳を揺らして問いかけてくる。

「ん。まあ学校でも会えるからね」

 そう言って汐の頭を撫で、俺は苦笑いを浮かべた。

 そんな俺の行動に、少しばかり驚いた表情を浮かべながらもすぐさま照れたように笑う汐。

 そして―

「君。汐まで毒牙にかけるつもり?」

 そんな光景を鋭い眼光を目蓋で半分を隠し、面白くないと言わんばかりの視線を送る衣緒。

「“まで”ってなんだ」

 その物言いを非難するかのように声を上げる俺に対して、衣緒は―


「男女問わず人気が高いからね。YOUは」


 そう答えて、意地悪そうな笑みを浮かべて、静止した車の扉を開け放った。



明けましておめでとうございます。

本年度もどうぞぷらマイを宜しくお願い申し上げます。

と、まぁ硬い挨拶はここまでにして。

お待たせしました。なんとか再開です(苦笑)

更新スピードは…とにかく頑張りますorzすいません…(苦笑)

まだまだ謎の説明部分。気合を入れて頑張ります!

お手紙、コメント、感想大歓迎です。文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

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