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第48 誤算×2

 いつの間にか、二人とも歩く事を止めて話し込んでいた。

 どうやら霧島は、俺がコンテストで優勝したいがために、わざとらしく蹴躓いたと勘違いしていたらしい。

 確かに、モデル事務所が主催したコンテストならば、それらの業界で活躍を夢見る者からしてみれば是が非でも手にしたいチャンスだ。そのため、わざとらしい動きを見せる、あざとい女性もいた気がする。

 そう考えてみれば、霧島の見解も尤もである。

 だが、そういったもので優勝を勝ち取れるほど甘くない世界ではある。そういった女性に対しての評価は相当厳しかったらしい。それは勿論、俺―神凪優に対しても、だ。

 故意ではないと評価が高かった審査員もいれば、故意だと評価が低かった審査員もいる。そこで結局、今回のコンテストを強く押した霧島の発言が鶴の一声となった。

 結論を言ってしまえば、霧島は俺の行動を故意的だと判断したのだ。そうする事で、評価が高かった審査員も下げ、優勝候補から消えた。

「色々考えてたんだね」

 そういった理由さえも審査の対象だと言うならば、優勝した女性…たしか七瀬汐さんだったかな。取り繕う事無く、自分を素直に表現していた彼女以外の優勝は考えられなかったように思える。

 俺は、合点がいったと言わんばかりに両手を合わせる。

 その俺の姿に、霧島は困ったように眉を顰めながら小さく笑う。

「だから天然って言われるんだろうな……」

「ん?なにか言った?」

 潮風に掻き消された霧島の独白は、俺の耳には届かなかった。

 首を傾げる俺に対して、霧島は苦笑いを浮かべて、『なんでもない』と答える。

「でも、結果オーライ。私はモデルなんて興味が無かったから。感謝してるよ」

 そう答えて破顔する。

 心地良い海の香りを運ぶ風が頬を撫でた瞬間。ふと、空へと打ち上げられる花火の間隔が早まる。花火大会も終焉を迎えようとしているようだ。

「さて。それじゃ私はみんなに合流しないと」

 花火を見上げながら背伸びをして、再び歩みを始める。

 ただでさえ、霧島と会うから一緒にいけないと説明した時には散々な追求にあったのだ。これで合流出来ずに旅館に戻ろうものなら、夜長一日延々と何をしていたのか再び追求されることは目に見えてる。

「ちょっと待っ――」

「止めて下さい!」

 立ち去ろうとした俺の手首を握り締めた霧島。驚いて振り向いた瞬間に、辺り一面に響き渡った女性の甲高い声に、俺は目を丸くする。

「今の声……」

 どうやら霧島も、その切迫した声に聞き覚えがあったらしい。だが、名前や姿を思い出せるほど鮮明に思い出せない。

 しかし、声色から察するに、見知らぬ顔をしておけるような状況でも無さそうだ。とりあえず今もなお聞こえてくる声の方向へと、二人で歩を進めると――

「七瀬さん!?」

 小高い崖の上。三名の男性に囲まれ逃げ場を失い、言い寄られている七瀬汐の姿があった。

「あん?んだ、てめぇ」

 するとすぐさま嫌悪を露わにして、にじり寄る男達。その立ち振る舞いをなんと表現すべきか。

「まさに、やられ不良キャラの王道」

 そんな言葉が脳裏を掠める。

「んだと!?このアマ!」

 どうやら思わず本音が洩れ出でたようだ。その言葉にさらに激昂する男達。

 それでもその飄々とした表情を崩さない俺を、その場にいる七瀬汐と霧島が、半ば呆然と見つめている。

 それはそうだろう。男達の体は、それなりに鍛えられているように見える。数的には同等でも、女二人に男一人のこちらの状況は極めて危険である事は明白だ。それなのに、まるで勝利を確信したかのような凛然とした態度で居続ける俺は不思議で仕方ないのだろう。

 ここまでは上等である。後は――

「合図と同時に彼女の救出。花火大会の人ごみに紛れる」

「え?」 

「Go!」

 用件のみを霧島に告げて、七瀬汐との間を塞ぐ、相手を当身で転がせる。最悪、今の自分ではよろめかせる程度かも知れないと、タカを括っていただけに、相手が転んでくれたのはありがたい。

 一方の霧島は、突然の囁きに多少の驚きがあるあったらしいが、すぐさま我へと戻ると駆け出し、七瀬汐の腕を掴み、こちらへと引き寄せる。

 男達もその行動に完全に虚を突かれたのだろう。反応し切れず、その動作を易々と見逃す。

「走って!」

 すぐさま振り返り反転すると、大声で指示を飛ばす。その声に弾かれるような形で、二人が人が集まっている花火大会の会場の方向へと駆け出した。

 しかし上手くいったのはここまでだった。

「てめぇ!」

 攻撃を加えられ、いち早くその状況に反応出来た、当身をして転がっていた男が、立ち上がりざま反動までつけて思いっきり俺の腕を引っ張る。

 コンテストの時もそうだったが、ただでさえ不慣れな下駄だ。体勢を崩した俺は、足場が悪い事もあって、前のめりに前方へと大きく吸い寄せられる。

「―――え?」

「優!」

 そこで問題があったとすれば。そこは崖であったということ。

 転ばないように、踏ん張ろうとしたのが間違いであったのか。行き場を失った体は、軽々と虚空へと投げ出された。


第二部は動きが激しいなぁ…と思ってみたり。

色々な歯車が揃いつつあります。これからどうなっていくか。どうぞお楽しみを〜。

お手紙、コメント、感想大歓迎です。文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

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