第44話 冗談と上段との違いは歴然である
あれから数時間後。日もそろそろ暮れ始めた頃。
「第一回浴衣美人コンテストの始まりです!」
いつの間にか建てられたコンテスト会場で、高々に吉良の声が響き渡った。
「おかしい…。波打ち際に埋めた筈なのにどうしてアイツは生きてるんだ…?」
「吉良君、だからでしょうか…?」
「理解不能です」
特設ステージの脇で、仲良し三人組が項垂れている。
あの後。すぐさま吉良を見つけ出し蹴り倒した後、そのまま再び波打ち際に埋めて来たにも関わらず、舞台上で挨拶する吉良はなぜかいつにも増して元気だ。
「しかし残念ながら、旅館を激安で提供してもらう上での条件のようなものですからね」
まるで他人事のように…いや、実際他人事なのだろうが。舞台設置での手伝いを終えて、あとは見守るだけになった翔は余裕そうである。
「馬鹿兄は少し黙ってて」
そんな兄の姿を、藍璃がちょっと本気の殺意が篭った目で睨みつける。どうも藍璃も、最近ではこのメンバー内では、猫かぶる事をしないようになったようだ。言動に容赦が無い。
勿論、その一番の原因は吉良の存在なのだろう。
「……絶対殺す」
しかしながら、それには触れない方が良さそうな気がする。ぶつぶつと物騒な言葉を呟く藍璃から、さり気なく少し距離を取る。
それにしても、一番驚いたのはやはり――
「優ちゃん」
審査員席でにこやかに手を振る霧島の存在。
主催者であるモデル事務所が、霧島が所属している事務所であったため、今回、特別審査員として参加しているらしい。
何を隠そう、この浴衣美人コンテストは、事務所の稼ぎ頭である霧島が吉良の持ち掛けた提案を、会社側に押し通した事により実現したらしいのだから驚きだ。
夏休み前の剣道部での一件以来、あれほど熱心だった女遊びは控えて、真面目にモデル業を頑張っているとは薫から聞いていたが…。
もしやその時のお礼参りのつもりだろうか。しかし、今回のコンテストはモデルの新人発掘も兼ねているそうだが、俺は別にモデル業に興味は無いし、落選した所で痛くも痒くも無い。
さらにはこの場で貶されようものなら、“YOU”としての人気度も下がり、悩みの種は消えてなくなり万々歳。まさに願ったり叶ったりである。
「霧島君って以前より雰囲気良くなりましたね。不特定多数の女の子達と遊ぶのも止めたらしいですし」
怪訝そうな表情を浮かべる俺に、綾奈が声を掛けてきた。
「クラスも違うし、噂程度でしか知らないけど…。それならそれでいいんじゃないかな?」
元々仲が良かった訳ではないし、特別思い入れがある相手でもない。周りから見て、良い印象になっているならそれでいいだろう。そう思って、綾奈の言葉に適当に相槌を打つ。
綾奈も、そんな俺に対して一言だけ。『そうですね』とだけ笑って相槌を打ってくれた。
「エントリーナンバー九番!その赤い浴衣よりも、返り血で赤く染まった道着の方が似合ってる。敵はただただ殲滅あるのみ。空手部エースは伊達じゃない!悟技翼の登場だぶら!?」
進行を続けていた吉良の持つマイクを通して、鈍器で人の側頭部を叩きつけたかのような鈍い衝撃音が辺り一面に響き渡る。
ステージを覗き見ると、案の定、浴衣姿のまま器用に上段回し蹴りを決めた翼と、それを受けた吉良が昏倒していた。
「翼、お疲れ。どうだった?」
乱れた浴衣を直しつつ戻ってきた翼に、声をかける。
「吉良はいつもながらだけど、予想外にマトモかも。あんま変な質問とかも無かったし」
それを聞いてその場にいた全員が一安心した。あの吉良が企画したモノ。何が起こるか油断できない。
実際、コンテストの存在の事を話しているときに、水着美女を望んでいた言動もあった。しかし確かあの時――
『水着じゃないんだよね。この企画に積極的だった事務所のモデルの奴が駄目だって言ったらしいよ』
そう言ったはずだ。だとすると、その、反対した事務所のモデルの奴と言うのは、もしかして霧島なのだろうか。だが、そう考えると益々その理由が分からない。
悶々と黙考していると――
「優ちゃん?最後なんだから早く早く!」
「え?あ、うん!」
いつの間にか名前を呼ばれたらしい。なかなか出てこない俺に痺れを切らした吉良が、舞台袖まで様子を見に来ていた。
今回は後書きする事が何一つ無いorz
物凄く途中で終わっていますからね。少し更新するかどうか迷いましたが、同じ文字数ぐらいで綺麗に区切った方が読み易さも上がるでしょうしね。こうさせて頂きました。勿論、読者の皆様に不評な場合は、ちゃんと二話を完璧に書き上げてから同時にアップする方法もあるので、ご意見があれば是非(苦笑)
お手紙、コメント、感想大歓迎です。文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。
それでは〜。如月コウでした(礼)
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