第43話 真実とは常に残酷なものである
海の藻屑と消えかけた吉良を仕方なく引き上げて、皆で少し遅いお昼ご飯を食べて浜辺を歩きながら、藍璃が言った。
「そういえば。さっきナンパしてきた人が言ってたんですけど、今日夜にここで花火大会もあるらしいですよ」
「へー…。花火大会か…」
辺りを見渡してみる。そう言われてみれば、やけに家族連れが多い気がする。俺自身、それほど海へ遊び来た経験が無いため人の混み具合なんてものは分からないが…。
「お?その前に夕方ぐらいからモデル事務所が開催する美人コンテストもあるんだってさ」
翼が視線の先にあるお祭りのチラシを指差す。そこには『浴衣美人コンテスト』と書かれてあった。こういった海で行なわれるコンテストだ。てっきり水着美女コンテストかと思ったが、どうやら違ったらしい。
「そうなんだよね…。水着じゃないんだよね。この企画を積極的だった事務所のモデルの奴が駄目だって言ったらしいよ。せっかく水着なら審査にかこつけて色々エロいポーズを要求すぶべらっ!?」
吉良が言い終わる前に、翼の上段回し蹴りが炸裂する。
いい加減、吉良もその欲望を素直に言葉にするのも、色々問題があるという事を理解しないのだろうか。まったくもって懲りない男だ。
そんな時―
「吉良さーん」
ふと見知らぬ少し年配の男達数人が、吉良の名前を呼んで近づいてきた。
誰か知っている人だろうかと、みんなに確認の視線を送ってみても、誰も知らないらしく全員が首を横に振る。
「あ、どうも。この度は宜しくお願いしますね」
「いえいえ。こちらこそ。地域活性化へのご協力感謝します」
そんな一同の疑問をそっちのけで、すぐさま復活した吉良が紳士的な対応でその人達を向い入れ、穏やかなムードでその人達と挨拶がてらに握手を交わす。
地域活性化という言葉から察するに、地元の人達だろうか。とりあえず、吉良が犯罪者として捕らえられる様子は無いので一安心だが。
「花火大会という新たな地域活性化への試みですが、どうやら無事成功したよう我々一同ほっと胸を撫で下ろしておりますよ。これもひとえに企画を持ちかけてくれた吉良君のおかげですよ」
「いえいえ、何を仰いますやら。すべては皆様の頑張りとご協力があっての賜物です」
驚いた事にこの花火大会は吉良発案らしい。どうやら、あの吉良が地域活性化へ一役買ったようである。
特別、金銭的な報酬はなく、吉良自身もまたそれを要求したりはしていないようだ。よほど盛況なのか『ほんの気持ち程度ですが…』と手渡された封筒も、吉良は紳士的に断っている。
「しかし、わざわざ時間を割いてまで来て頂いたわけですし…。その時間分の報酬はお渡ししない訳には…」
「いえ。地域活性化という素晴らしい目的の元、そのお手伝いを出来たのなら光栄ですよ」
そう言って、去りゆく地元の方々の背を吉良は爽やかに見送った。
ちなみに。その後ろでは、普段の馬鹿な吉良からでは考えられないような、その言動の数々を目の前にして茫然自失気味に全員が立ち尽くしていたりする。
「な、何今の?地球最後の日?」
「理解不能です」
全員が未だに信じられないモノでも見たかのような表情だ。
しかし当の本人の吉良は―
「ごめんごめん。別に自慢する気じゃないけどさ。当日は何が起こるか分からないから泊り込みの方が都合いいだろ?せっかく旅館も海に近い場所の準備してくれるって言うから、みんなどうかな、と思って誘ったんだよ」
爽やかだ。不気味なほど爽やかだ。今なら、俺が現翔に変化した時の家族の心境が分かる気がする。全員が輪になって『あれは偽者だろうか』や『頭打って記憶障害が…』といった、何処かで聞いた事があるような会話をしている。
確かに、今回ここへ遊びに行く事を提案したのは吉良だ。実は、旅館の宿泊代が格別に安かったので、また良からぬ事でもしたんじゃないかと少し疑っていたりもしていたのだが―
「でもタダっていうのは、さ。さすがに…良心の呵責って言うの?悪い気がしたから断った。ごめん。黙ってて」
それがどうだろうか?このどこまでも紳士的な態度は。
俺達は先程までの自分の行いを恥じた。ただ、遊ぶ事だけを考えていた俺達とは違って、吉良は吉良なりに見知らぬ人達のために精一杯頑張っていたのだ。
そして今。吉良はそれを咎める事無く、俺達へ頭を下げている。
「出来ればみんなには、そういうの抜きにして楽しんでもらいたかったんだけど…。ごめん。心配だし俺、様子見てくるよ」
「う、ううん!?全然構わないです!私に出来る事なら何でも言って下さいね!?」
「そうだよ!お前が頑張ってるのに、私達だけで遊ぶなんて…。何でも手伝うから!」
「…まだ許した訳じゃないですけど。今回は立派な事されてると思いますから、何かあれば手伝いますよ」
綾奈と翼。そして藍璃が、吉良に手伝いを申し出る。勿論、残る俺を含むメンバーも同じ思いだ。賛同するように頷く。
「みんな…ありがとう。それじゃ。また後で」
そう言って手を振り、吉良は先程の人達の後を追うようにその場から姿を消した。
「…なんだよ。普段はふざけ過ぎてるだけで、ホントはいい奴なんだな。吉良って」
「そうだね…私も知らなかったけど」
翼の呟きに、俺が苦笑いしつつ答える。
吉良本人は知らないが。俺は一年の頃からの付き合いだが、ああいった一面があるというのは今日始めて知った。
意外と言えば今でも信じられないぐらい意外だ。
「吉良君を探して、私達も何か手伝いませんか?」
「綾奈の意見に同意します」
「こうなったらとことん手伝ってやろう!」
(吉良…。馬鹿の汚名返上だな)
心の中でそう呟く。
そして、全員が吉良を探すため走り出そうとした――まさにその時。
それまで黙っていた翔が、張られてある花火大会のチラシを凝視しつつ、そこに書かれた文面を口にした。
「しかしそうなると、この『ファッション雑誌のモデルで有名な“YOU”達も参加!』というのは貴女方の事ですよね。間違いなく」
そして俺達は走り出す。
………吉良をとことん蹴り倒すために。
誰か助けてください(挨拶)
後書きのネタすらも捻り出せない作者は駄目ですか。そうですかorz
最近、話の内容に節操が無くなってきているような気がして、危機感を抱いております。少しでも多くの読者様に楽しんで貰えるためにもっと頑張りたいものです。
お手紙、コメント、感想大歓迎です。文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。
それでは〜。如月コウでした(礼)
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