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第41話:檻の中のパンダ…のような少女達

 眼前に広がる青い海。照りつける太陽。

 そう。俺達は、八月に入り丁度遊びに行くには良いシーズンを迎えたので、吉良発案で少し遠方の海へ一泊二日の旅行に出掛けたのだ。

 そしてその初日。早朝から出掛けた甲斐があり、つい先程、お昼前に現地へ到着したのだが―

「……帰っていいですか」

 海の家にある更衣室で、各自手渡された水着に着替え終えて、その間に荷物の管理を任せた男連中の元へと戻る途中。

 白の無地でリボンとパイピングが施されたワンピース水着を身に纏い、お疲れ顔の俺が溜め息交じりに言う。

「大丈夫大丈夫。まさかあの“YOU”が、こんな海に遊びに来ているなんて、誰も思わないって」

 上は青のワイヤー入りのプッシュアップブラ。そしてボクサーショーツの上にデニムショートパンツをオシャレに着飾っている翼が笑う。

 部活動で鍛えているからだろうか。そのプロポーションはこの中で一番良いように思える。

「うん。いいよね。人の目を気にしない翼って。ある意味カッコイイよ」

 そんな翼の慰めらしき言葉に、遠くを見つめつつ答える。

 この疲れの元凶である、あのファッション雑誌が発売されてすでに数日が経過した。

 もっとも。今回水着と宿泊施設等のお金は、すべてその時に秋月さんから薫経由でみんなに手渡されたものだったりするのだが…。

 どうもあのファッション雑誌は女性専門誌の中でも、なかなかの部数を売り上げているモノらしく、その効果は想像絶するものだった。

 街を歩けば、雑誌を見た女性にとにかく声を掛けられる。

 モデルの先輩である薫のアドバイス通り、知らぬ存ぜぬで誤魔化してはいるものの、ブロンドのセミロングの髪と言う少々違った容姿が災いして、誤魔化しきれない事も多々あった。

 ましてや、誰かがその場で俺の名前を呼ぼうものなら即バレである。

 “優”と“YOU”なんて所詮文字上の違いであって、発音上はなんら変わりが無いのだから。

 いっそ髪を黒く染めようかとも思ったが――


「髪を染めるという行為は、キャラの設定を変える行為に当たります。つまりは、それで固定されている貴女が、それを皆の面前で行なえば、色がまったく変わらないという有り得ない現象により今後の生活に支障をきたすでしょう」


 翔のこの言葉で、その確実な逃げ道は失われてしまった。

 当然、事情を知らない皆には染める事を薦められたりもしたが『髪を染める事はしたくない』と断った。

 そして、その結果出た結論が――


「でもみんなが忘れるまで我慢するしかないですよね…」


 人の噂もなんとやら。

 可愛らしい淡いピンク色のワンピースに、パレオを羽織っている綾奈が溜め息混じりに言う。

 しかし、今はまさに知名度の絶頂期である。

 さらに性質が悪いのが、俺と普段から行動を共にする全員の写真が載ってしまったということだ。これでみんながいるこの現状で、他人の空似なんていう言い逃れは出来ない。

 その結果、噂が噂を呼んでいるようで、本来その雑誌を見ていない男女までもが『雑誌に載ってる子がいる』という話を聞きつけて集まり始めた。

「でもさすがにこれはちょっと……」

 俺とは違った花柄のワンピース水着を着ている藍璃が困惑気味に言う。

「珍獣扱いですね」

 そしてその言葉に、ビキニの上にサンセットタンクを着た薫が続く。

「ま、水着姿だからっていうのもあるだろうけど」

 翼が快活に笑う。確かに、総じてここにいる皆は人の目を惹くぐらいの魅力はあるように思える。しかし、彼女はその視線の中に、自分も含まれている事を理解しているのだろうか。

 さすがに、ずっとこのまま放置しておく訳にはいかない。人ごみに紛れてナンパされる可能性だってあるはずだ。俺が男のままで偶然ここで会ったならナンパしたいと思うはずだ。

 翼はいざとなれば得意の蹴り技があるだろうし、藍璃もその拳と口の悪さで世界を狙えそうなので、大丈夫だろう。

 薫も……相手に再起不能レベルの精神的ダメージを与えるだろうから心配はないだろうが…。

 綾奈は万が一にでも一人になると、そのまま何処かへ連れ去られそうな気がする。

「薫。何かいい手段はないの?」

 こういった時には、ご意見番である薫の意見を聞くのが一番だ。

 薫はその問いかけに、指を口元へ添えて暫くの間黙考すると―


「ひとつ妙案があります」


 そう言って、翔と吉良が待つ場所へと向った。



いよいよ始まりました!第二部最後の海編です。

今回のお話は10話編成ですので、普段の二話分の量でお送りします(予定)

それとこの度、皆様のおかげで、二万というアクセス数に達しました。もう感激で、なんと言葉を尽くせばいいのか分からないぐらいに嬉しいです。読んで下さって、本当にありがとうございます!

何かリクエストが御座いましたらどうぞ仰ってくださいね。一万ヒットの分も考えながらも、誰の話をするべきか迷っている状態ですので…orz

しかし、微妙に何をどうリクすればいい分からない内容の小説打ってる気がするのはなぜでしょう(駄目作者/ぁ)読者様に謝罪。ゴメンナサイorz

お手紙、コメント、感想大歓迎です。文法的におかしな部分、読み難かった部分があればご指摘、もし宜しければお願いします。

それでは〜。如月コウでした(礼)

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