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過去を置いて

 目が覚めたらそこは俺の部屋だった。

「夢、か……」

 やけにリアルな夢だった。景色も、衝撃も、音も全て鮮明に覚えている。夢とは思えない夢だった。

「兄さん、早く起きてってお母さんが……って、起きてるならさっさと布団から出て準備してね」

 部屋の扉が開き、少しクールで透明感のある声が耳に届く。声の方に目をやると、俺が知ってるより少し幼い妹の姿がそこにはあった。

(りん)、もしかして髪切った?」

「は?ずっとこれですけど」

 俺の記憶の凛はもっと髪が長かったはずだ。身長も少し低く見える。というより、全体的に幼い。

 そこで俺はようやく違和感を覚え、部屋を見回した。そして、あることに気づく。

 俺の部屋だけど直前と少し違う。本棚が一つ減っている。パソコンの位置も違う。部屋中にあったダンボールも消えていた。

 まるで、中学時代かのように全てが戻っている。

 ――そんなわけない、そう思った。

 しかし、目に映る情報がそこは数年前の俺の部屋だと伝えていた。

 わけがわからない。悪い夢かなにかだろうか。中学時代に、戻った……?

「凛、今って2020何年だっけ」

「えっと、2022年だけど……どうしたの急に?」

 違う、今は2026年だ。俺は去年大学に入学した。今は大学2年生のはずだったはずだ。

「現実逃避ってやつ?1週間後には高校受験だもんね」

「……え、受験?」

 机の上のカレンダーに目を向ける。

『2022年2月15日』

 中学時代に戻ったのなら、今は確かに受験1週間前だった

「もういいってそのノリ、いいから早くリビング来てね。それじゃ」

 呆れたように扉を閉め、凛は俺の部屋から出ていった。信じたくはないが、状況を見るに今は2022年らしい。そして、高校受験が1週間後。

 え、やばくね?

 1度冷静になるために、身支度をする。歯を磨き、顔を洗った後に髪をセットしてリビングに向かう。

 洗面台で見た自分の顔は、どう見ても昔の自分だった。顔を洗ってもこの夢から覚めることはなかった。

「おはよう、英士……ってどうしたのその髪!?」

 驚いた母さんの声に反応するかのようにリビングのソファに座っていた妹がこちらを見る。すると、妹は口を開けたまま数秒固まった。

「に、兄さん。どうしたの急に髪なんかセットして」

 少し考えてから自分がやらかしたことに気づく。

 俺が髪をセットし始めたのは高校から。いわゆる高校デビューと言うやつである。

 中学時代の俺は千円カットで切って、寝癖を直すだけだった。 2人からするとどう考えたっておかしい。

「いやまぁ、俺ももうすぐ高校生だし、身だしなみには気をつけようかなって」

「それ今気にすること?受験勉強は大丈夫なの?大してしてるようには見えないけど」

 妹の容赦ない正論が俺を滅多刺しにする。そういや、中学時代の俺、受験勉強ほとんどしてなかったっけ。

「はいはい、英士も大人になったって事で。早くしないと2人とも遅刻するよ」

「やばっ、行ってきますお母さん」

 時計を見た妹が鞄をもって慌てながら家を出たのを目で追う。

 まだ信じきれないな。本当に過去に戻ってきたのか……?やっぱ夢なんじゃないのか。

 1人ボーッとしていると母さんに背中を叩かれた。その痛みがこれは夢では無いと証明した。

「英士も朝ごはんを食べて早く行きなさい」

「う、うん」

「それにしてもあんた、髪のセット上手いね。もしかして練習してた」

「ま、まあそれなりに」

 練習と言っていいのか分からないが高校3年間と、時間が戻るまでの大学2年間。髪のセットは毎日欠かさずにやっていた。

 髪にくせがついてない分少しやりにくかったから満足いく出来にはなってないけど。

「そっか、大人になったね」

 母が少しの喜びと切なさを織り交ぜるような笑みを浮かべた。その光景を見て、自分が初めて髪をセットした時のことを思い出した。


 ◇ ◇ ◇


「本当に……過去に戻ってきたのか」

 朝ごはんを食べて家を出た俺は、久しぶりの通学路を歩きながら1人そう呟いた。景色を眺めてもやはりそこは中学時代のものだった。

 高校と大学では電車通学だったけど、中学校は歩いて数分の位置にある。思えば、高校大学では電車の遅延以外で遅刻がなかったのに対して、中学ではいつもギリギリだった気がする。家から近いことでの慢心だろう。

「おはよう英士、いつもより早いじゃん」

 通学路を歩いていると後ろから声をかけられた。懐かしい声だった。中学卒業以来聞いてなかった友達の声。

「おはよう、智久」

 山田智久やまだともひさ。幼稚園の頃からの腐れ縁だ。……そして中学卒業を最後に、一度も会わなくなる。

 忘れてたはずなんだけどな。改めて顔を見ると、胸の奥が少し痛んだ。

「って何その髪!めっちゃセットしてんじゃん!」

「朝早く起きて時間があったからな。気まぐれだよ」

「へえ、お前結構顔いいな。前髪ちゃんと切ればいいのに」

 嘘はついていないのだろう。こいつはそういう奴だ。人を褒めるのがとことん上手い。そのためか学校でも女子からの人気はすごい。

「どうした英士元気ないじゃん」

「寝不足なんだよ、ほっといてくれ」

「勉強か?いや英士に限ってそんなことないか」

「失礼だなお前。間違ってないけど」

 智久は昔のように明るく話しかけてくる。懐かしさと喜びと不快感。いま俺は笑えているのだろうか。


 ◇ ◇ ◇


 智久と話しているとすぐに中学校についた、懐かしい教室に、懐かしい顔ぶれ。記憶の奥底に隠していたものを無理やりひとつずつ取り出すかのように昔の記憶が蘇ってくる。

 懐かしさよりも息苦しさが勝った。

「おはよう2人とも」

 智久と俺が教室に入ると、廊下側の席に集まった4人が一斉にこちらを向いた。そのうちの1人。椅子に座って4人の中心にいる人物が手を挙げて挨拶をしてくる。

 北条夕牙(ほくじょうゆうが)、グループの中心。言うならばリーダー的存在だ。いい方向にも悪い方向にも人を巻き込むのが上手い。

 隣にはいつも南川。少し後ろには鈴木と佐野。当時はいつもの顔ぶれだった。

「みんなおはよ」

「なんだ英士。元気ないな。珍しくおしゃれしてるし」

「こいつ寝不足らしくてさ、朝から元気ないんだよね」

「ふーん。それとオシャレになんの関係が?まあいいけど」

 夕牙がこちらを見つめてくる。何を考えているのか、今なら何となく察しがつく。 あの頃は気づけなかった、ほんの僅かな違和感。まあ今は考えないでおこう。

「えっと、俺の席どこだっけ」

「英士は俺の後ろだろ」

 当たり前だが、席を覚えていなかったので智久というわかりやすい対象がいてくれて助かった。

 グループを離れて席に着くと、数分後に先生が教室に入ってきて出席確認を始めた。

 懐かしい担任の声、それに反応して手を挙げて返事をする同級生達、懐かしくて思い返せば後悔だらけの中学生活を少しずつ思い出す。

「……日高」

 なぜ神様は俺を過去に戻したのか、それは分からない。もしこれがやり直しのチャンスとでも言うのなら遅すぎる。

「おーい、日高」

 俺は高校生活にはそれなりに満足していた。後悔が残っているのはどちらかといえば中学だけ。なのに今はもう卒業直前だ。

「おい、日高英士!」

「は、はい!」

 ボーッと考え込んでいると、担任の大きな声が俺を現実に引き戻す。

「何を考えてたかは知らんが返事はちゃんとしなさい」

「すいません……」

 クラス全体から笑いが起きたのが分かった。しかしそれどころじゃなかった。このわけのわからない現象をどう受けとっていいのかまだ理解できていないから。


 ◇ ◇ ◇


 授業は全く頭に入らなかった。

 まあ受験直前でほとんど自習だったんだけど。思い返してみれば空席も目立っていた。

 そこで自分の状況を思い出す。1週間後には受験。落ちたら一回目と同じ高校には行けない。改めて自分の状況を思い返し、背筋を冷たい何かが伝い落ちる。

 考えてる暇はない、勉強をしよう。部屋を少し漁り、数年ぶりに高校の過去問を眺める。

 意外にも最初に感じたことは焦りでも不安でもなかった。

 簡単すぎる。特に数学と英語が。

 冷静に考えてみれば当たり前のことだ。こちとら高校3年間と大学での1年と少しを経験しているのだ。自慢では無いが、高校ではコース内トップ3はずっと維持していた

「こうなってくるとどれくらい正解するかの問題か……」

 問題が解けるからいいという訳では無い。解けすぎると受験方式的に問題がある。

 俺の受ける高校は特別進学コース、Aコース、Bコースに別れていて、成績順に上から振り分けられる仕組みだ。一回目はAコースだった。つまり解けすぎたら特進、解けなすぎたらBコース、最悪の場合落ちるということになる。

「どうしたものかね……」

 できることなら一回目とクラスは変えたくない。高校生活を思いだす。仲のいいあいつらともう一度、くだらないことで笑い合えるのならば、それ以上のことはないだろう。

「ヒントになるのは過去問を解いたノートくらいか」

 ノートを開いてみればだいたい自分の得意と苦手の傾向がわかった。ここから、1、2個改善した解答をすれば一回目と大きく変わらない得点になるだろう。……なってくれ、頼むから。


 ◇ ◇ ◇


 過去の自分のデータを分析して、得点を調整という普通ならありえない勉強方法をしているとあっという間に受験当日になった。

 高校までは片道1時間半。母さんは朝からそわそわしていたけど落ちることはまずないだろう。数年分のアドバンテージはあまりにもでかかった。

 気楽な気持ちで最寄り駅に着くのを待っていると、少しずつ受験生と思わしき学生が車内に増えてきた。改めて見ると、知っている顔もちらほらいる。

 これからの高校生活を考えると2回目にも関わらず高揚感を覚えた。味わえるはずのなかった2度目の青春。放課後に教室へ残ってくだらない話で笑って、テスト前はみんなで集まって勉強をした。

 今思えば、そんな何気ない毎日が一番楽しかったのかもしれない。それが俺を待っているのだ。

 最寄り駅につき扉が開く。この駅に来るのも1年ぶりである。

 駅から学校まで少し遠いんだよな。初めは道が分からずに人の流れについていっていたことを覚えている。

 そしてそれは他の受験生も例外ではない。迷わずに駅を出た俺の後ろについてくるかのように 1人またひとりと人の気配が増えていく。少し落ち着かないが、気にするほどでもない。数十分歩けば済む話だ。

 懐かしい街並みを眺めながら歩くと案外早く高校についた。受験票を確認して教室に向かうと、何人かが先に席について単語帳や参考書などを眺めている。空気を乱さないように俺も着席をすると、少しずつ席が埋まっていった。

 一回目の俺より何倍も冷静だ。まわりがよく見えてる気がする。本来自分に集中した方がいいんだけどね。

 しかし、まわりが見えてしまうと気づく必要のないことにも気づいてしまうこともある。

 例えばそう、今俺の隣に座った女の子。明らかに様子がおかしい。必要以上に鞄の中を物色している。

 関わらないのが吉。受験は自分との闘いだ。他人にさくリソースはない。それに、今回に限っては未来が変わってしまう可能性だってある。

 しかし、俺にはすぐ隣にいる彼女をほっとくことはできなかった。

「大丈夫?なんか慌ただしいけど」

「ふぇっ!?あっ、私?」

 声をかけて見ると彼女は甲高い声を上げながらこちらを見た。声をかけない方が良かっただろうか。

「うん。君。困ってそうに見えたから」

「その、消しゴムが見つからなくて……」

「貸そうか?2つあるから」

「いいの?ありがとう!」

 念の為予備を持っておいてよかった。消しゴムを差し出すと、彼女はさっきまでの様子が嘘だったかのように、花が咲いたように笑った。

 少し、顔が熱くなった。光に透ける赤髪が妙に目に入る。教室の蛍光灯に照らされて、やけに目立っていた。一回目の俺はなぜこんな目立つ子に気づかなかったのだろう。

「ここにいるってことはこの高校受験するんだよね。第1志望?」

「うん。受かったらここ」

「そっか、私も!お互い頑張ろうね」

「うん。頑張ろ」

 そう言って、彼女は自分の机に目を向けた。

 少し、関わりすぎたかな。まあ1回目でも何とかなっていただろうし消しゴムくらいで未来が変わることもないか。

 ひとりで考えていると試験官の先生が教室にやってきて、試験の始まりを告げた。


 ◇ ◇ ◇


 試験は何事もなく終わった。結果も上々。おそらくAコースになれるだろう。

 鞄に筆記用具をしまい席を立つ。さっさと帰って休憩したい。この一週間はあまりにも急すぎた。

「ちょっと待って!」

 帰ろうとすると横から声をかけられた。さっきの女の子だ。

「えっ、何?」

「消しゴム。貸してくれてありがとう」

「あー、そういや貸してたっけ」

「いや忘れないで!なんか悲しいよ!?」

 なんか元気な子だなと感じた。1回目ではあまり関わることのなかったタイプだ。

「ねぇ、ここであったのもなんかの縁だしさ。LIME、交換しない?」

「LIME?」

「嫌とかならいいんだよ!私がしたいだけだから……はは」

 花開くような笑顔から一転。彼女のまわりの雰囲気がドンヨリとするのが何故か見える。なんかすごいなこの子。

 まあ断る理由もない。試験は終わったしここから先の動きで1年のクラスが変わることは無い。それに断ったらこの子のテンションがどうなるか分からない。少し興味あるけど。

「いいね。交換しよ」

「いいの!ありがとう!」

 スマホを差し出すと、彼女は慣れた手つきでQRコードを読み取った。

 しばらくするとハリネズミのスタンプとともに『よろしく!』というメッセージが届いたので同じように返した。

 水瀬緋莉。それが彼女の名前らしい。

「今日はありがとう!えっと、名前聞いてなかったね」

日高英士(ひだかえいじ)。よろしく」

「私、水瀬緋莉みなせひまり。よろしく英士!お互い受かって同じクラスになれたらいいね。それじゃ!」

 満足そうに手を振って彼女は教室を後にした。

 同じクラスか。

 一瞬だけ、そんな未来を想像してしまった。

 ……残念ながら、それは起こりえない。未来から来た俺が言うのだから間違えない。

 クラスの多少のズレは起こるだろうがそこに彼女が来ることはないだろう。だって俺は一回目で同じコースにあんな可愛い子の名前を聞いたこともなければ、見たこともないのだから。


 ◇ ◇ ◇


 後日高校受験の結果が発表された。俺は望み通りのAコース。まず1つ目の壁を超えたと言っていいだろう。それと同時にLIMEの通知がスマホの画面上部に表示された。

 水瀬緋莉。受験当日に出会った女の子だ。

 水瀬緋莉『受かったよ!Aコース!英士は?』

 日高英士『俺も受かった。同じAコース』

 水瀬緋莉『一緒!同じクラスになれたらいいね!』

 日高英士『そうだね』

 嬉しくないといえば嘘になる。しかし、それ以上に俺の行動で未来が変わってしまったかもしれないことに今は恐れてしまう。

 確信は無い。しかし、俺の記憶が正しいのなら1回目の世界にあの子はいなかった。

 俺の気持ちなんてもちろん知らないし、知る術もない水瀬からLIMEは続く。

 水瀬緋莉『私中学の友達全然同じ高校にいかないから英士と会えてラッキーだった!』

 日高英士『俺もあんまいない。少し遠めの高校選んだから』

 水瀬緋莉『そうなんだ。余計同じクラスならないとね』

 すごい。本当に陽キャすごい。俺なんかとは全然次元が違う。普通そんなこと言います?同じクラスにならないと、とか言われたらふつうに勘違いするんですけど。

 日高英士『俺もそうなったら安心するよ』

 正直自分の気持ちが分からない。水瀬と同じクラスになれたら毎日楽しいのは間違いないだろう。しかしだ、それは一回目からの大きな変化を意味することになる。

 水瀬緋莉『クラス発表までに徳積んでおかないとね』

 日高英士『そうだね』

 それからもしばらく水瀬と連絡をして我に返る。

 合格発表されたってことは中学卒業まであと1ヶ月もないのか。そろそろかな……智久たちと距離が開き始めるのは。

 思い出したかのようにパソコンの正面に座り、よくグループでやっていたゲームを起動する。フレンド欄を見ると智久たちで遊んでいるらしい。

 試しに招待をしてみる。しかしそれが返ってくることはない。

「一回目と変わらないか」

 まあこの短期間で都合よく未来を変えれるほど俺は器用じゃない。一回目の世界では時間が解決してくれたことだ。気にする必要は無い。

 その日から薄々感じていた智久たちと俺との距離が少しずつ開き始める。一回目と同じシナリオだ。


 ◇ ◇ ◇


 卒業式当日。特に何も感じることはなかった。泣いたり、笑ったり、惜しんだり。色んな感情が渦巻くここで俺だけが置いてかれている。仕方の無いことだ。この短い期間じゃ、懐かしさも実感も中途半端だった。それに俺は、この後みんなとどうなるか知ってしまっている。ただただこの時間が早く終わってくれる事を祈った。誰にも話しかけられず、ひとりで静かに帰りたい。家に帰って自分のベッドでゆっくりしたい。

 しかし、神様は残酷だ。そんな願い聞いてくれない。

「英士、この後夕牙たちと打ち上げ行くんだけどどう?」

 智久は今何を考えて俺を誘っているのか。同情か罪悪感かそれとも素なのか。ほっといてくれた方が楽なのに。

「俺はいいや、少し疲れちゃった」

「そっか。まあそうだよな」

「それじゃ。ありがとな智久。幼稚園も含めるなら11年。楽しかった」

 それだけ言って智久に背を向ける。これは俺からしたら過去の話。俺にこいつらはもう関係ない。そう言い聞かせた。

「ごめんな。英士」

 僅かな声だった。

 ……でも、聞こえなかったことにした。

 本当は、聞こえていたのに。


 ◇ ◇ ◇


 卒業式を終え家に着いた。

 家に家族は誰もいない、母さんは卒業式の後、保護者間で話していた。父さんは仕事に向かい、妹は卒業式の片付け中だろう。

 そういや過去に戻ってから完全に家で1人になるのはこれが初めてか。

 過去に戻ってから約1ヶ月。ここまでは漫画で言うプロローグのようなもの。それなのにやけに疲れた。

「暇だな……」

 一回目の卒業式では、少し疎外感はあったが打ち上げに行ってた。ただ、1回目なら打ち上げを断っていても暇になることはなかっただろう。

 当たり前だが、2回目では好きなアニメや漫画。それにスポーツまでありとあらゆるものが俺からしたら過去だった。

 新しいものに抵抗がある性格な俺にとって、それは案外きつい。みたいアニメや漫画は僅かに残っているかも分からない好みの作品を探さなければいけない。スポーツも応援しているチーム以外は見る気になれなかった。どうせ結果を知っている。結末を知っているものほど、面白くないものはない。リアルタイムは正義なのである。

 タイムリープ。漫画やアニメなら夢のような能力だと思っていた。

 ……でも実際なってみると案外不便だ。

 ただ手に入らなかった2次元のグッズを手に入れることができるというメリットもあった。

「今日も走るか……」

 そんな中で受験後から始めたのがランニングだ。

 走ってる間は何も考えなくてすむ。過去のことも未来のことも。

 ランニングシューズを履いて、扉を開く。

 すると、玄関にまだ冷たい春の風が吹き抜けた。

 それは、2度目の青春がすぐそこまで来ていることを告げていた。


この内容書くために過去問とやらを引っ張り出したのですが、これがまあ簡単で。図形の証明みたいなやつ以外はほとんど覚えてた。

高校時代の俺をほめてあげたい。

二話です。タイムリープ、高校受験、卒業式。プロローグが終わりました。

次から二度目の青春の始まりです

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