046話 正しい裏切り方
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凛がボールへ一直線に走った。
他の一切を気にせず、ボールの行方だけを追うように彼女には伝えてある。
英理奈との連携が出来ないのは、強みの1つを潰してしまうことになるけれど、それでも有り余るくらいに彼女は強い。
付け加えて言うならば、凛自信もこの案に強く賛同してくれた。
「アタシ、結構イライラしてきてるのよ。頼りにならない味方にも、舐めプしたアンタらにも。……ちょっと荒々しくいかせてもらうわ」
凛の気迫に押されて、相手は1度キーパーに戻した。
あの状況で考えられる最も安全な選択。
咄嗟の判断でもその行動が出来る胆力がある。
最後の砦にボールが渡った。
転じて攻撃に動き出す。
凛が前にいる以上、下手にディフェンス陣にパスは出せない。
そういう時、俺が立海山なら迷わず秋風を探す。
予測通り、秋風に向けて直接的なロングパス。
ここで焦って詰め寄ることも出来る。
だけど、必要なのはパスを繋げないことではない。
秋風がパスを受け取って、次の動作に移行する僅かな隙。
思考よりもプレーに集中している時間。
「ここしかないっ!」
「成程! よく考えられてるみたいですねッ!」
トラップせずに距離を詰める秋風。
背後にボールが隠れて、軌道が見えない。
しかし、それは秋風だって同じ事。
音を頼りにボールの行方を細心の注意を払って探る。
ボールが地面に当たって跳ねる音。
これで確信する。
彼女はミスを犯したのだと。
何か仕掛けようとしたけど、パスを出された位置と合わなかったのだろう。
「あぁ、その判断はダメですよ。期待してたのに」
俺がボールを奪うために前に出た。
すれ違い様に秋風の放った小言がやけに冷たく感じる。
試合中はハイテンションで、ポジティブな事ばかり口していたのに。
ハーフタイムを挟んで、いつもの状態に戻り始めているのか。
「私を忘れて貰ったら困るね」
背後からボールを持った毒島が姿を現す。
秋風の背中に隠れて見えていなかったが、近くに毒島もいたらしい。
毒島の位置も把握しておくべきだった。
この失敗は……味方にフォローしてもらうしかないよな。
「さっきやられたけど、今度は抜かさないよ?」
前半終了前と同じマッチアップ。
毒島と英理奈の攻防戦。
「おっと、加勢は行かせないよ?」
秋風が不穏な動きを見せたので、自由にさせない徹底的なマークを付ける。
英理奈がまずは毒島に勝つ。
それで前半終了前から続く、最悪な流れを断つ。
俺からではなく、英理奈自身が言い出したことだ。
まだ全然活躍出来てないからって。
11人対5人、途中から4人の試合で活躍もクソもない。
だけど、その悔しさを糧にパフォーマンスが上がるなら、俺はそれでも良いと思う。
だから、提案に乗った。任せたいと決めた。
「ふーん、鷹津さんが相手じゃないのか。さっき負けたの覚えてないところが、見た目通りって感じだね」
「あはは、……そんな言葉言われ慣れてる」
英里奈が仕掛けた。
毒島はお構いなしに前進。
フィジカルだけで乗り切るつもりだ。
その判断……甘いと言わざるを得ない。
フィジカル勝負には全く付き合わない。
ボールへすぐにアクションを起こせる間合いのまま、毒島を走らせる。
どんどんと誘われるように右サイドへと押し込まれていた。
毒島もそのことに気付いていて、中へ切り込もうとするが、カットインの動作を見せた途端に英里奈の守備が牙を剥く。
振り切るために大きくボールを出す。
2人とボールの間合いがズレるタイミング。
英里奈はちゃんと見ていた。待っていた。
「強いよ、ぶっさん。本当強い。だから、ありがとう。ウチの特技は合わせること。その強さに合わせて、ウチも更に強くなるッ!」
英里奈が過集中状態の毒島に勝った。
これは快挙だ。
勿論、過集中が無敵とは言わない。
それでも圧倒的な強さがある。
英里奈はその強さに打ち勝った。
今、俺は無性に叫びたい。
あれが俺の仲間なんだと。
俺はあんなに強い仲間に恵まれているんだと。
我慢だ、我慢。作戦はここから。
その始まりを英里奈が作ったんだ。
無駄になんか出来ないよな。
絶対にここから取るんだよ、1点を。
「英里奈、あれを始めよう!」
「了解!」
英里奈が何の種も仕掛けもなくパスを回す。
「えっ? なんで自分なん!?」
英里奈のパスは、獅子王先輩に加勢していた3年の堂免先輩へと向かっていく。
当然、彼女は困惑していたが、反射的にパスを受けてしまった。
この試合でボールに触れることは1回もないと思っていただろう。
なのに、ボールが来てしまった。
迷っているはずだ。
どうやって処理するかを。
ただ茫然と立ち尽くすのか、それとも誰かにパスを出すのか。
あるいは……、
「ええい、自分は知らん!」
ボールを切ろうとサイドラインへ蹴る。
「まぁ、そうですよね。雅野さんの上級生方ならそうすると思って──」
「奇遇ね、アタシもなの」
秋風が反応して取りに行ったボールを、凛が横から掻っ攫う。
堂免先輩を経由することで、イレギュラーな行動を生み出す。
めちゃくちゃな事象に対しての読み合いなら、完璧な予測は難しい。
そして、味方の行動を逆手に取って、秋風を自由にさせない。
「よく考えましたね! これまた随分と面白い!」
まずは1点。
同点にしてから話が始まる。
「こっち! 凛!」
凛に向かってパスを呼ぶ。
その時、目が合った。
何かを語ろうとする目。
俺には凛の考えが分からない。
(春陽がボールを呼んでる。分かってる、試合中は自分の因縁を切り離して。プライド、ライバル、勝利。プライド、ライバル、勝利……)
「だぁーー!! もう! ……これで外したら許さないから」
許さないからというのは、……どういった意味でなんですか?
怖い、怖すぎる。
ほぼ殺害予告と変わらないだろ。
殺されるのを免れる方法はただ1つ。
「あいよ、ツンデレガール」
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