032話 涼しさを求める休憩時間
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当初の予定では、皆んなで杏向けのメニューとして、立海山でもやったいたロンドをやろうとしていた。
彼女は今、スポンジのみたいに何でも吸収出来る時期なので、優先して育成を進めるべきだ。
自主的に勉強したところを、守備の上手い英理奈から実践形式で教われば、より強固な補完が出来る。
だけど、世の中予定通りに行かないのが常。
犬飼の登場によって、大幅な変更が強いられる。
参加してくれたのは嬉しいことなので、贅沢な悩みと言えるだろう。
最終的には、俺が犬飼と一緒に体力作りをすることになった。
スタミナは攻守共に影響するパラメータ。
この数値の高さが試合には大きく影響を及ぼす。
犬飼はスタミナが明らかに低い。
ストライカーとして一流の才能を活かす為には、頻繁に体力作りに取り組むことが重要だ。
「はぁ……、はぁ……。も、もう無理。ま、待って」
「本当に体力ないんだね、犬飼さん。まだ3キロくらいしか走ってないよ」
「……朝花、いじわる」
青空が良く映える校庭の真っ白な地面にぺたりの座り込み、音を上げている犬飼。
ここで手を差し伸べて甘やかすのは簡単だけど、育てるとなると甘さだけでは意味を成さない。
弱音を吐いたところから、更に1歩でも先に進ませなければ。
心を鬼にして、犬飼の息が整うのを待つ。
浅い呼吸。どれだけ待っても息遣いは一向に戻らない。
これはサッカー云々の話。生活に支障をきたすレベル。
俺が想像しているよりも遥かに、彼女のスタミナ問題は深刻そうだ。
考えを変えて、少し早いけど休息の時間を設ける。
杏達とも合流。犬飼についてまだよく知らないので雑談にでも充てよう。
校舎によって日陰の出来た涼しい場所に、みんなで一列に座る。
各々が飲み物を浴びる様に飲む。
4月に入ってから寒暖差が激しく、今日は比較的暑い。
火照った体に沁みる微風も、吹いては止んでを繰り返している。
「今日は思ってたより暑いねー」
先陣を切って会話を始めるのは、コミュニケーションお化けの特攻隊長・英里奈。
Tシャツを摘んでパタパタと空気を送り込みながら、気温の話をさりげなくあげる。
「わ、私……、こんなに疲れたの久しぶりですよ」
「……仲間がいて安心した。私もきつい」
「情けないなー。今から夏になっていくんだから、もっと暑くなるよ?」
本音を言えば俺も多少疲れてはいるけど、もっと疲れている2人の前で弱音を吐く訳にはいかない。
何でもないような顔をして、さっと立ち上がりいつでも動けるぞとアピールして見せる。
「夏かー、ちょうどヴァルキリーカップの時期だね」
「うぅ……。そう考えるとあっという間に予選始まりそうですね。私、大丈夫ですかね? 全然素人ですよ?」
「確かに基礎はまだまだって感じかなぁー」
英理奈にしては辛口の評価に驚く。
「でも、飲み込みの速さと向上心はピカイチだよ! ウチも見習いとなって思ったもん!」
「本当ですか!? お世辞だって分かってても嬉しいですねー」
「本当だよ! お世辞じゃないって!」
なんか知らない間に、2人の関係性が進展しているんだけど。
手を握って褒める英理奈と、赤面する杏。
顔の良い2人が目の前でイチャイチャ。
うーん……、ありがとうございます。
そんな状況を眺めていると、犬飼が横でずっと俺をガン見してくる。
イチャイチャしたいのか?と思ったけど、どちらかと言えば褒めて欲しいのかもな。
見えない尻尾をブンブンと振りながら、俺の言葉を待っている。
「どうしたの犬飼さん?」
言いたいことは分かっている癖に知らないフリをしてみる。
「私も褒めて」
「犬飼さんはFWとして優れてるよね」
「……続けて」
「ボールタッチが繊細で、コントロールも鮮やか。体幹も意外としっかりしてて、シュートの時の軸は全くブレない」
「……うんうん」
褒め言葉に気持ちを良くした犬飼。
僅かに表情を変化させて、頷きながら自己肯定感を高める。
ダウナー系って、勝手にネガティブなイメージをしてたんだけど人それぞれみたいだ。
謙遜せずにきちんと受け止めている。
このまま褒め続けると天狗になりそうなので、ダメ出しも混ぜておくか。
「体力がないのは改善した方が良いね。あれだと、ワンプレーも持つかわからないし」
「……朝花、いじわる」
「でもさ、ここにいるみんな、犬飼さんに期待してるから」
これは本心だ。
彼女の得点力はかなり秀でている。
瞬間的な場面を切り取れば、ゲーム内で見て来た1年の中でも最強格。
99年プレイして来た俺が言うんだ、間違いはない。
次回の立海山戦。プレッシャー掛けるつもりがないから口には出さないけど、犬飼が点を取れるかどうかで状況は180度変わる。
既に組み立てられてたいくつかのプラン。
そのどれもが犬飼の得点を前提に進めている。
「はいはい! ウチもいぬいぬに期待してるよ!」
「私もです。金曜日の勝負、感動しましたもん」
「……みんな。……これ以上、言われると泣いちゃう」
言葉と表情が乖離しすぎだろ。
目からはからっといていて、口角は上がりも下がりもしていない。
これで泣きそうだと言われて誰が分かる。
「いぬいぬはさ、何でサッカー始めたの? 運動苦手そうじゃない?」
「サッカー以外は苦手。……でも、サッカーだけは頑張りたかった。その理由は、まだみんなに話せない」
「内緒かぁー! ミステリアスな女の子方がモテるから良し!」
「今の話題、モテるかどうか関係ありますか!!?」
真面目ムードになりかけた空気が一気に消えていく。
あまりの温度差に、杏も目を見開いて驚いている。
英理奈は犬飼の話し方で何となく、重い話だと察したのだろう。
茶化しているようにも見えるけど、彼女なりの優しさ。
犬飼に引け目を感じさせないよう明るく振舞って見せた。
「……私、モテる? 将来はお嫁さんになりたいけど、……なれる?」
「なれる! なれる! てか、ウチが貰ってあげる!」
「家事はして欲しい。朝は起こして。休みは家から出たくない。電話とか出れないから出て。年収は1000万が良い───」
とんでもないワガママちゃんだな。
これだけ挙げても、止まらないくらい条件が出てくる。
夢が結婚することの人間とは思えないな。
条件縛り過ぎて、最終的に存在しない人物像が完成しそう。
まぁ、でも、心配することはない。
そこに1人貰ってくれるって言ってるギャルがいる訳だし。
「さぁ、練習、練習。がんばってこぉー!」
珍しく英理奈が逃げ出した。
その光景が面白くて、飲んでいたスポーツドリンクが気管に入り吹き出す。
ゴホゴホと咳き込む俺を無視して、止まらない犬飼、
逃げる英理奈、慌てる杏。
今日のサッカー部は、今までで1番賑やかだな。
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