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 いまさら

 確かに年齢=彼女居ない暦の僕としては、好意なのか美人局なのかは判別することはできないだろう。でも……


「それだと僕がまんまと誘惑に乗っているという前提じゃないか」

「なに? それじゃあ女の子から誘いがあったとしても断るの?」

「僕はそんな軽い男じゃない。一途だからほいほい付いていったりしない」


 天王寺さんは怪訝な表情を浮かべた。


「○○(まるまる)く~ん、ラブホ行こうよって、甘く誘惑されても動じないの?」

「明らかに危険な誘惑じゃないか。それに○○君って」

「だって私、君の名前知らないもん」

「ええ! 自己紹介とかしなかったっけ!?」


 いまさらの展開にリアクション芸人並みに驚く。


「君の名前とか興味なかったもん、別に聞こうとも思わなかった。でも君のご両親に配慮して、名前くらい聞いておいてあげるわ」


 これだけ僕のこといじっておきながら名前も知らないなんて……少しショック。


「僕は大和都斗やまとみやと。改めてよろしくね」

天王寺てんのうじゆかりよ。よろしくされても困るわ。で、ストーカー君、何か私に用があるんじゃないの?」

「スケベからストーカーにランクアップしてる!! 全く身に覚えがないんですけど!」

「私が玄関を開けたと同時に君も出てきたから、てっきりタイミング合わせてきたのだと思ったわ」


 天王寺さんは少し後ずさりして、僕から視線を逸らせた。


「ほら、男の子って何か料理作ってあげるだけで惚れたりするじゃない? 私は借りを返すために君にお粥を作ってあげたつもりだったのだけれど……それ以上のこと期待されても困るわ……」


 天王寺さんは口に手を当て、更に一歩後ずさりする。


「そんなことない!」


 強い口調ではっきり言う。


「本当に? 違うの?」

「うん、誤解だよ」


 天王寺さんは一呼吸置いて「ふぅん、違うんだ。……最低ね」と、捨て台詞を吐いてアパートの階段を下りていった。僕の一体何が悪いんだろうか、気に食わないんだろうか。僕は用事を思い出した。そうだ、下に住んでいる人に引越しの挨拶をしようと思っていたんだ。僕もアパートの階段を下りていった。


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